行き先、宿泊地を出発当日まで知らせないミステリーツアーは北朝鮮に拉致された人間の不安や苦痛や恐怖を再現する旅かと思った。
昔は小説や映画の情景から実際の舞台を推理想像し、現地現物に触れその差異に驚愕したり感動したり失望したり、各人各様、独自に企画立案する自前旅だった。
旅番組の映像が氾濫し異郷の情景を思い描く楽しみを奪われた今日この頃、疑似体験したどこの異郷に行くのか想像する楽しみにすり替えた推理募集型企画旅行が繁盛するのだろう。
目的地が定まらない旅は、フーテンの寅さんの専管事項で、堅気の人間は不安や苦痛や恐怖を感じる。
大穴的中になるか、外れるか、資本主義経済の博打、昭和の時代を生きた古風な老人には馴染まない。