風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

式年遷宮とスクラップアンドビルト 361号

2008年09月09日 18時34分12秒 | 随想
郊外に大規模なショッピングモールが出来る。昔の銀座は客足が遠のき、シャッター街と化し、廃墟同然である。程無く鉄骨とコンクリートとガラスの斬新なデザインのビルを建設する為に解体されるだろう。西洋文化のスクラップアンドビルトである。

伊勢神宮式年遷宮は、20年ごとに内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の正殿など正宮・別宮の全ての社殿と鳥居を建て替える。690年の持統天皇の御代に始まり、2013年には第62回式年遷宮が予定されている。

伊勢神宮の部材は木材である。樹齢数百年のヒノキ。山奥の村民が累代に渡り丹精込めて手入れをする。その材木を職人が熟練の技で加工する。棟梁の采配で組上げに数年の歳月を費やす総合芸術である。通算20年の建築である。

太陽光の恩恵と悠久の歳月を経て、多くの人間の働きと知恵を集約する伝統建築。林業の知恵と労働、田舎の伝統と質素倹約の庶民の心。累代の以心伝心の匠の熟練の技が伝承される。

大量消費と大量廃棄のアメリカ文化。経済と効率の科学的追求。時間と勝負の建築競争と解体競争。スクラップアンドビルトは石灰岩の山をジーゼルエンジンのパワーシャベルで崩しコンクリートに変え、鉄鉱石を巨大船で石油燃料を燃やして運び、ケイ砂を高温でガラスに加工する工場の助けがいる。

従事する人間は極めて少なく、資本家と科学技術者とロボットである。建築現場では巨大クレーンが工場のロボットで製造した部材を吊り上げ組み立てていく。

そして奇抜なデザインで冷たいビルが飽きられると解体され、鉄骨は石炭や重油で溶かされ、再利用される。コンクリートとガラスは粉砕され、何処かの谷に埋められ、谷は無くなる。

山が無くなり、谷が無くなり、樹木は無くなり、原油供給が無くなり、平坦な不毛の地が日本砂漠である。オアシスは伊勢神宮であり、熱田神宮であり、比叡山延暦寺・高野山金剛峰寺・四国遍路道など、心を大切にする宗教の拠点にしか、望郷の日本が発見できない。

近代建築は砂漠の国である石油成金のブルジュ・ドバイに任せ、木造建築が復活することを祈っている。

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