西部戦線異状なし １１６号

史上最初の地球規模で起こった第一次世界大戦の原因は欧州諸国の帝国主義拡張政策の対立と、バルカン半島での民族問題の衝突にあるといわれる。産業革命と植民地獲得競争に後れたドイツは、オーストリア、トルコとの関係を結び、一方イギリス、フランス、ロシアは協力関係を築いていた。

１９１４年６月２８日、セルビアを訪れていたオーストリア・ハンガリー帝国皇太子夫妻は、セルビア人テロリストに暗殺されたことが、トリガーとなり戦争が暴発した。

第一次世界大戦中、ドイツ軍が連合軍と対峙したドイツ西部国境(フランス東北国境)が西部戦線である。

１９１６年、エリッヒ・マリア・レマルクは友人とともにドイツ軍の一兵卒として第一次世界大戦に参戦し、西部戦線に配属された。その後、戦場での体験を通じて戦場の悲惨さを書いた小説が『西部戦線異状なし(All Quiet on the Western Front)』である。

第一次世界大戦中のドイツ。ポールと友人たちは、愛国精神を説く体制派の先生に美化された戦場に出征志願した。しかし、実際の戦場は、想像以上の悲劇に満ちていた。「西部戦線異状なし」と報告された休戦直前のある日の主人公の死をもって終る、戦争の悲惨さを描いた反戦文学である。

百年前の話が平成の世に再現されている。経済世界戦争中の日本。学業優秀な生徒は、物質主義を説く国の先生に扇動され産業界に応募就職した。しかし、実際の産業界は、想像以上の金の亡者で満ちていた。「史上空前の利益です」と報告されたある日の主人公は、僅かな退職金を持たされ排除された。

反産業思想ではない。偏りが有る事を指摘している。格差社会で問題が無いのか。弱肉強食が人間的な行為なのか。一人勝ちのマージャンが面白いのか。「他人の不幸は蜜の味」と言って高笑いできる人は人間でない。悪魔である。他人の苦しみを共有できる人は人間でない。仏様である。その両方がバランスよく存在するのが、人間である。

企業存続の為の必要最小限の金を残し、余剰金を自発的に納税する企業は、エクセレント・カンパニィである。その税は友人の糖尿病患者の医療費低減や老齢年金の割り増し支給に分配することなど、弱者救済に配慮するのが「美しい国・日本」である。

目覚時計の音で目覚めた。夢だった。人生は夢幻である。洗顔し、老体に鞭打ち、仕事に出かけることにする。「我人生異常なし」