風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

無駄は無駄でない 

2009年03月24日 04時14分33秒 | 随想

アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」は飛行機の無い時代の豪華寝台列車を舞台にした推理小説だった。灰色の脳細胞の名探偵エルキュール・ポアロが多くの容疑者のアリバイを崩す。

日本の寝台特急はブルートレイン「あさかぜ」が前座で、東京から各方面に増殖した。高速鉄道や航空機に駆逐され、最近、東海道から消えた。ブルートレインは裏日本縦貫特急「日本海」として残り、オリエント急行を真似たトワイライト・エクスプレスや北斗星に進化した。

目的地に向かう様々な路線、多くの駅で停車し、様々に分岐する鉄道網、特急・急行・準急・普通の多様な所要時間は、旅人に移動の過程で、様々な人間模様を描かせる。松本清張は鉄道の盲点をトリックに使った推理小説を創作した。連続したアナログ旅はロマンチックだった。

空港からエアポートの点と点のデジタル移動は小説の脇役である。清張小説の題名は「点と線」だった。

四国遍路の歩き旅、88ヶ寺は時々の道標である。その道中の喜怒哀楽の人間の触れ合いが貴重なので、豪華観光バスで道中は昼寝、山登りはタクシーで、寺の墨蹟朱印を集めるスタンプラリーの掛け軸は感動が薄いのである。

金勘定の結果万能の善・悪のデジタル判断は深みがなく、無駄を省く効率主義になれば、自然相手の無駄の多い農林水産の田舎は消滅し、都市が繁栄する。そして食料が無くなる。

禅僧も無駄を省くことを奨励するが、結果は問わない。その過程を大切にするアナログ判断である。違いはモノの無駄に向かうか、心の無駄に向かうかである。ご縁とかお陰とか申し述べ大切にするのが、多神教の仏教である。

モノを無駄にし、心豊かにする、教育。

文部科学省や総務省文化庁は、教育の視点からブルートレイン「はやぶさ・富士」、夜行快速「ムーンライトながら」の存続活動をするべきだったのである。経済効率の視点で無駄な列車の体験で、価値ある人生を発見する人がきっと出る。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。