昨年11月、ソウルで<グローバル社会的経済フォーラム>が行われ宣言文が日本語に翻訳されていますが、これに関して参考になる情報をいくつかまとめてみます。
まず、ご存知かもしれませんが、現在のパク・ウォンスン(朴元淳)ソウル市長の紹介からしましょう。弁護士であるパク・ウォンスン市長の略歴は次のようになっています。
”1975年ソウル大学に入学したが、民主化運動を行い除籍処分となる。80年に司法試験に合格したあと、83年に壇国大学歴史学科を卒業する。82年にテグ市検察庁で検事となるが、翌年弁護士になり、その後プチョン警察署性的拷問事件、アメリカ文化院占拠事件、ソウル大学助手セクハラ事件などを担当し有名になる。
91年8月からイギリスとアメリカに留学し、様々な市民参加、市民運動の実例を経験し、帰国後の95年に進歩的な傾向の市民団体「参与連帯」を結成、一株株主運動と総選挙での落選運動などを行い、2002年に「美しい財団」と「美しい店(リサイクル運動の店)」、2006年には「希望製作所」をつくり、各種の市民運動を展開した。「希望製作所」などでは‘組織の創意性を高め、意思疎通を円滑にするために年齢や職位が妨げになってはだめだ’として<常任理事>でなく、<ウォンスンさん>と名前で呼ぶことを望んだといわれている”(ネイバー知識百科)
このような経歴をもつ弁護士が2011年のソウル市長の再選挙で当選し、それ以前のオ・セフン市長のバカなバブル市政・新自由主義的市政が180度転換して、このような国際会議を行ったわけです。
パク・ウォンスン市長の略歴でもわかりますが、韓国での新自由主義に対抗する社会的経済運動の背景には80年代からの民主化運動の歴史と体験があります。とくにこの時期に学生だった人たち(60年代~70年代生まれ)にとっては共通体験となり、社会的な人的財産の基盤というか価値観の源泉になっています。「参与連帯」が活動を開始した90年代の半ばには、環境運動連合やグリーンコリアといった環境団体も本格的な活動を始めていますし、生協運動もこのあたりから日本の事例に学びつつ組織化が始まります。有機農業で有名なホンソンで<アイガモ農業>が始まるのが93年ですから、韓国社会での進歩的なさまざまな取り組みは、だいたい90年代の半ばから始まっています。
90年代の後半から経済的な成長も後押しとなり、韓国では自分たちの努力によって民主的な社会をかちとり、経済成長を成し遂げたという<自信>になっています。この過程で、宗教団体の役割も大きかったのですが、これについては、別の機会に紹介しましょう。
さて、ソウル市には<社会的経済支援センター>という組織があり、さまざまな支援活動をしているようです(このあたりも、今後チェックします)。似たような組織や部署が京畿道にもできましたが、まだ内実はともなっていないようで、自治体を含めブームになっているのは確かです。このブームの中心の一つが協同組合で、テレビやネットで様々な協同組合が紹介されるようになりました。ただ、日本に比べ行政に予算的な余裕があるためか、比較的補助金が豊富だなという感じがします。たとえば、社会的企業(利益を社会に還元する目的で作られる企業、法人形態は株式会社、福祉法人、協同組合などいくつか指定されています)を作った場合、社会的企業<候補>の間の3年間、正式にスタートし後の2年間、合計5年間は人件費などの補助金があり、補助金がなくなる5年間の後の経営が問題になっているようです。
というわけで、日本にいる方々にはなかなか実感がわかない部分もあると思います。韓国にいらして、直接現場を訪れ、関係者にインタビューをしたり、意見交換をするのが一番です。実は、20年近くに経済成長によって、社会的な矛盾や問題点もあちこちにころがっていて、日本が抱えている問題と余り違いがない部分もありますので、討論自体がかみ合う部分もあるはずです。3泊4日(時間がない場合は2泊3日でも可能です)ぐらいで現場を回るツアーを5月以降、行おうと考えています。日程や訪問先については、ブログやフェイスブックで今後紹介しますので、興味のある方は連絡をお願いします。(写真は南楊州でのマウル企業=村企業、野菜や山菜のしょうゆ漬けを作っています)