今週は週間予報では雨マーク。線で繋ぐは綱附森を矢筈峠から歩く予定だったが、
早々に奥様たちに中止を連絡して自主トレのつもりでいたが、直前になって天気予報は
回復傾向に。それなら計画通りにとも思ったが、前日の雨で綱附森の笹原は恐らく
まだ濡れているだろうからと思いとどまり、足元のしっかりしたどこかの山を歩こうと
考えた。『そういえばWOC登山部が剣山を計画していた』と思い、久しぶりにメンバーの
お顔を拝顔するのもいいかなと、剣山に目的地を変更。ただ見ノ越からは5月に
奥様たちと登ったばかりだったので、昨年初めて歩いた富士の池から登って、山頂で
皆さんにお会いするという計画にした。その内容を奥様たちに前日に連絡すると、
ルリちゃんが歩いた事が無いので歩きたいと返事が返って来た。
穴吹町でルリちゃんと待ち合わせ、そこから乗り合せて国道492号線を登山口となる
垢離取(コリトリ)を目指す。木屋平の川井までは道幅が狭くなった場所があるが、
対向車もなくスムーズに走れた。川井からは道幅も広く二車線道路が続いている。
途中、穴吹川の川向でピョンピョンと跳ねる姿が見えた。こちらが車を止めると
その二匹も立ち止まってこちらを見ている。親子だろうか、兄弟だろうか?
穴吹からはおおよそ1時間でコリトリ橋に着いた。ここから国道を離れて、登山口
となる富士の池剣山本宮への道を走って行く。路面は確かにコンクリート道だが、
整備されなくなった道は荒れていて、小さな落石が至る所であり、その石を避け
ながら走って行く。樹林帯の中から視界が開け明るい場所に出ると、見覚えのある
赤錆びた鉄門に着いた。
空は薄曇り。昨年も同じような空模様だったが、一ノ森を過ぎた辺りから雨になった。
今日は回復するという天気予報を信じよう。
鉄門を潜り龍光寺富士の池本坊への石段を登って行く。石段は苔むしていて、
杉の落ち葉が降り積もっていた。住職のいなくなった?境内は荒れて久しい。
かつて剣山への表参道として賑わい、前泊の宿坊として大勢の信者が泊まったと
いう面影は今はもうない。
本堂の脇を抜け左に出ると、昭和51年に豪雨災害をもたらした切り立った急峻な
富士の池谷が見える。本堂の裏手から斜面を登って行くと、富士の池剣山本宮。
この剣山本宮も災害で壊れて今は仮宮があるだけになっている。
その仮宮の後ろの注連縄を張られた場所が登山口となる。九十九折れの急登をを登って行くと
直ぐに林道に出る。そして向かいの取付きからまた登山道へと登って行く。
自然林の中、カラッとした心地よい風が吹き抜けていく。但し額の汗は途切れることなく
流れて行く。禁煙をして約半年また体重が1kg増えた。息切れは随分とマシになったが
4kgも体重が増えた分体が重い。左の谷側は杉林、右手は自然林の道が続いて行く。
いつもは先行して歩くルリちゃんが、今日は後ろから付いてきている。ルリちゃんが
前を歩くとどんどん離されていくが、今日は私が前でスピードが上がらず、まるで
ノロノロ運転をする老人の後ろで閊えてクラクションを鳴らしている状態だろうか?
龍光寺と書かれた小さな札が木の幹に掛けられている辺りから、右手にロープが
張られている。道はそれほど急登でもないので、植生保護のためだろうか?
スタートから45分ほどで追分に着いた。行場への道は相変わらず通行止めに
なっている。木の枝の間から山頂ヒュッテが見える。
ここまでも立派な大木が道の途中のあちこちに見られたが、この辺りもブナを
はじめとする巨木が目につく。
ダケカンバの林を抜けると右手に開けた見晴らしの良い場所に出た。正面には
赤帽子山、その少し左には丸笹山も見える。
足元に笹が現れると稜線に近づいて来たのが判る。倒木を潜り、大岩の横を過ぎると
朽ちかけた肉渕峠の道標。ここからが一の森から東の山々への
入り口となる。『線で繋ぐ石鎚山~剣山』が完歩出来れば、次の課題となるのは、
石鎚山から西の皿ケ嶺へのルートと、ここから東の紀伊水道までのルートとなる。
ただしここから東は日帰りではなかなか難しい区間になるので、じっくりと研究
していかなくては・・・・。
肉渕峠への分岐を過ぎると樹林帯から笹原の道になってくる。スタート時点では
ガスがかかっていたが、目の前には青空が広がっていた。先ほど追分で見えた
山頂ヒュッテもはっきりと見える。
道が遮るもののない笹原になると白骨樹が目立ち始める。その白骨樹の横に
槍戸山への稜線が続いている。振り返ると穴吹川に沿って木屋平の民家が
点在しているのが見える。そしてこの周辺では一番同定しやすい、山頂の雨量観測所の
レーダーが建つ高城山も見えた。
この季節になると笹の緑も濃く、葉のない白い白骨樹とのコントラストが美しい。
少し前から足が攣り始めたので、先頭をルリちゃんに代わってもらって、さらに
ペースを落として歩いて行く。ここまで来ると一の森ヒュッテはもう目の前。
スタートから1時間50分で一の森ヒュッテに着いた。着いてすぐにベンチに腰かけ
水分補給。途中から攣り始めた足は前回と同じように太腿そして臀部。水分が
足らなくなってなのか、疲労からなのか、何だが毎回癖になってきたように思う。
ルリちゃんからコムレケアとお菓子のお裾分け。
一息ついたら剣山めざして出発。一の森山頂からの尾根を下って行くと、行場への
分岐。一つ目のピークの二の森の横から次郎笈が顔を出す。
笈とは山伏が背負う箱の事。しかし以前は太郎笈と呼ばれていた剣山も、次郎笈も
山容は箱の形には見えない。太郎と次郎という名前の二人の修験者が「笈(おいずる)」
と呼ばれる背負子を担ぎ、それぞれの山へ分かれて登ったことに由来するという説があるそうだ。
シコクシラベの林を抜け石灰岩の白い大岩の横を登ると二の森。
二の森を過ぎると剣山山頂手前のピークの経塚森への道。道の脇には白骨樹。
今回も是非尋ねてみたいと思っている次郎笈の肩にある鬼人の岩屋を見当を
つけてズームアップしてみる。果たしてどの辺りに鬼人の岩屋はあるのだろうか?
剣山から次郎笈への稜線歩きも素晴らしいが、一の森から剣山へのこの間の
稜線歩きも決してひけ劣らない。緩やかな道を笹原と白い白骨樹に濃い緑の
シコクシラベ、そして近づいてくる剣山や次郎笈を眺めながらの道は申し分ない。
山頂の東のテラスへの最後の登り。階段状になっている道だが、考えることは皆
同じなようで、道の脇の笹の中に踏み跡が出来ている。いつもながらこの登りは
しんどい。大きく呼吸をしながら一歩一歩登って行く。前を行くルリちゃんが
空に向かって登っていっているように見える。
珍しく東のテラスには一人もいなかった。山頂トイレの向こうに見える山頂にも
人影はほとんど見えない。今日はいつになく人が少ないようだ。WOC登山部の
メンバーは今日は8人。山頂近くにその人数の団体は見えないので、まだ到着
していないようだ。
東のテラスから山頂に向かう。途中でトイレをお借りして山頂まで歩いて行くと
剣山本宮山頂大祭を前に注連縄が新しく掛け替えられていた。その横のベンチで
お昼ご飯を食べている三人。どこかで見た事があると思ったらWOC登山部の
メンバーだった。『どうしたん三人だけで?』『他の人たちは?』と聞くと
『リフトで先に上がって来た』と言う。『え~ズル組やんか~!』と。
ただWOC登山部も当初は登山道の存在を知らずに、往復リフトで使っていた
そうなので、片道だけならまだかわいいほうか~!
その三人とルリちゃんが話し込んでいる内に、私もベンチに腰掛けお昼にする。
ゆったりと横たわる次郎笈をおかずに、ぶっけけうどんをすすっていると
後続のメンバーも到着した。
西は晴天の下、三嶺をはじめ本来なら今日歩いていただろう綱附森も見えるが
東の一の森への稜線にはガスが登ってきていた。
全員がお昼ご飯を食べ終わるのを待って次郎笈をバックに記念撮影。
今日のメンバーは実は第一班で、第二班は次郎笈へ登って奥槍戸の家にランチを
食べに行っている。なのでルリちゃんと私は第三班。そして仕事終わりに単独で
もう一人が遅れて登ってきているという。そうすると総勢で16名が四つに分かれて
この剣山周辺に今日は集合したことになる。
写真を撮った後は第一班は二度見展望所・大劔神社経由で下山するのでここでお別れ。
一の森への道はやはり稜線の北側から次々とガスが登ってきていた。展望はガスで
見えなくなるが、逆に日差しを遮ってくれて涼しくて丁度いい。
劔山本宮ニの森神社の横を通り一の森ヒュッテへと歩いて行く。
笹原の斜面に並んだシコクシラベの濃い緑が映える。ヒュッテ手前の今日最後の登り。
ヒュッテからの笹原は真っ白な世界。山の主に向かって見上げて何やら話し込んで
いるように見えるルリちゃん。
あとは龍光寺の鉄門まで下り一辺倒。登りに弱い私にとっては楽な下りだが、
下りぱなしになるとさすがに靴の中の足の裏とか指先が痛んでくる。
後ろに反っているように見える巨木。まるで体の硬い私の様だ。
道は明瞭だが、大小の石がゴロゴロしている道は疲れる。先を行くルリちゃんは
脇目もふらずに快調に飛ばして行く。昨日あっちゃんと伊予富士に出かけてきたのに
本当に元気な奥様だ。
右手が杉林になると登山口は近いのでホッとする。しばらくするとその杉林の
下に林道が見え始め、さらにホッとする。
林道からは九十九折れの急坂を下って行くと、直ぐに剣山本宮に着いた。崩れた石段を
降り、崩れた斜面の脇を抜けると龍光寺に着いた。
山頂でWOCのメンバーと別れてから約2時間。けっこう早いペースで到着した。
登山者で賑わう見ノ越からの道に比べて、ほとんど人と会う事のない富士の池からの
かつての表参道。時代の流れで見ノ越への道が出き、リフトができると人の流れは、
もう戻ることはなかった。修験者や信者、そして登山者で賑わった参道は、今は鹿の
鳴き声と鳥の囀りだけが聞こえる、巨木と豊かな自然の残る道となった。
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