KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

『線で繋ぐ石鎚山~剣山』丸石分岐~三嶺

2022年10月27日 | 四国の山
色々と条件が重なってこのところ停滞していた『線で繋ぐ~』をやっと再開できた。

残す所は天狗峠から三嶺と三嶺から丸石分岐まで。丸石分岐から次郎笈・剣山は各々が

過去に歩いているのでトラックが取れている。問題は今日歩いた奥祖谷二重かずら橋から

丸石分岐まで登り、高ノ瀬・平和丸・カヤハゲを経て三嶺へのルート。一台を名頃駐車場に

デポして、奥祖谷二重かずら橋へ移動してスタートする計画。距離にして16km、

行動時間10時間近くなると予想していた。その距離と時間に少しビビっていたのが

ルリちゃんと私。あっちゃんはと云えば、登山の距離や時間ではなく、朝起きる時間が

今までの中で一番の早起きになるのにビビッていたらしい。停滞して1ヶ月が過ぎたが、

その間その早起きの事がずっと頭から張られず気がかりだったそうだ。


その心配も今日限りでなくなった。朝7時に名頃に集合して予定通りのコースで歩いて行く。

自宅から一字を過ぎ、小島峠から菅生への道を走ると次第に空が明るくなってきた。

峠に近づいてくると何度も道に鹿が飛び出してきた。鹿は好奇心が旺盛なのか、よく一旦

立ち止まってこちらの様子を伺ったりするのだが、カメラを取り出しもたもたしている内に

走り去っていくので、なかなか写真を撮る事が出来ない。







名頃の駐車場には既に数台停まっていて、その内の何組かがザックを背負ってスタートして

行った。するとあっちゃんから電話が入ってくる。途中でアクシデントが起き少し遅れるとの事。

気温は5度。少し肌寒いので車の中で待っているとほどなく二人を載せた車が到着した。

直ぐに車を乗り換え二重かずら橋に移動して、予定より30分遅れでスタートする。

朝露に濡れたかずら橋を、踏み外さないように注意しながら渡りきると、右手に折れて

丸石谷川に沿って右岸を歩いて行く。














夏場ならその水の流れの音に涼しさを感じるのだが、この季節になり、まして未だ陽の

当らない道では肌寒さをなお一層助長する。やはりもう手袋が必要な季節になってきた。










30分強でこのコースのランドマークの国体橋に着いた。丸石谷川の左岸へこの橋を渡って行く。










橋を渡ると次第に丸石谷川からは離れ、九十九折れの登坂になっていく。ここから丸石分岐までは

地形図を見ても右に左に何度も折れた破線の道になっている。地形図で破線がここまで折れている

道も珍しい。その地形図の通り道は何度も折り返して続いて行く。先ほどの遅刻を気にしているのか

先頭を歩くルリちゃんが、何かに取り付かれた様に黙々とそしてガンガン飛ばして行く。










登山道はまだだが、見上げた山並みには陽が当たり始めた。周りの紅葉もやはり日陰よりも

陽が当たった方が輝いて見えて綺麗だ。










国体橋を渡ってひたすら登り、少し飽きてきた頃に道は少し緩やかになってきた。

そして1時間40分で丸石分岐に着いた。











分岐から左に丸石避難小屋に取りあえず寄ってみる。7年前に剣山から歩いてきた時は

風が強くてとにかく寒くて、あまりいい印象のなかった丸石避難小屋だったが、

小屋の西側も南に開けていて明るく、以前に比べて印象が随分と違って見えた。







北側の祖谷渓から吹き上げてくる風がとても冷たい。小屋を背に風が当たらない場所で

一息入れる。その小屋から先ずは高ノ瀬に向かって歩き始めると、あっちゃんが『やっぱり

寒い!』と言いながら上着をもう一枚羽織っている。




分岐からしばらくは冷たい風を感じながらの樹林帯の中の道だが、すぐに開けた日差しの

中の明るい道になった。前方に笹原のピークとその横に三角のピークが見えた。

『高ノ瀬はどっちかな?』と三人で話しながら歩いて行く。














丸石分岐との鞍部からその笹原を目指して登って行く。山頂の手前までは樹林帯の中の道。

木々の間から右手に塔ノ丸、そして中東山が見える。













樹林帯の中、標高が上がってくると道には大岩が現れた。その岩の上で何やら物思いにふける?

あっちゃん。露岩が現れるとどこでもそうだが山頂が近づいて来た証。岩の陰には苔むした

岩の日本庭園もあった。












その樹林帯を抜け山頂近くになってくると一気に眺望が開けてきた。次郎笈と剣山の山頂

近くが少し白く見えるのは霧氷?。塔ノ丸の稜線の奥に丸笹山も見える。










笹原と白骨林を見ながら山頂へと登って行く。先ほど見えた手前の笹原が山頂だった。

三等三角点 高ノ瀬(こうのせ) 1740.7m














今まで西に続いていた稜線はここからは南西に振って北側に見える景色が変わってくる。

今まで見えなかった三嶺が姿を現し、今日最終下って行く麓の名頃も見える。

丸石から続く稜線と、その奥の次郎笈と剣山のフォルムが何とも言えずに美しい!











高ノ瀬からは笹と、葉の落ちた木々の間を緩やかに下って行く。三嶺のコメツツジが色付いて

いる様子も見て取れる。一旦下りきると鞍部から石立山分岐への登りになる。














ピークの手前に『オオヤマレンゲ群落』の説明版。その中で四国では最大規模の群落と

書かれている。ネットを張りニホンジカの食害から保護しているが、その個体数は

減少しているという。毎年シーズンにはこのオオヤマレンゲを一目見ようと、ここまで

登ってくる人も多いと言う。










その説明版から西に東祖谷側にはけっこうな距離をネットが張られていた。石立山分岐を過ぎると

三嶺がさらに近づいて来た。平和丸の笹原の左には白髪山。そして右にはカヤハゲから

三嶺への稜線が続いている。そのカヤハゲの奥には天狗塚が近眼の私にもはっきり見える。














道の脇の岩の上で、今から歩く稜線をバックに奥様たちの記念撮影。これぐらいの岩なら

高い所が苦手なルリちゃんでも平気なようだ。











この辺りからは稜線に沿ってではなく、少し南側下にトラバースする形で道は続いている。

下り坂の途中にある大岩にあっちゃんがまた登った。三嶺をバックに笑顔の一枚!

『ルリちゃんも!』と声を掛けるが、この高さになってくると『遠慮しとくわ!』とルリちゃん。











別府峡へと続く谷筋への支尾根の彩りも、もうそろそろ終盤かな?

手前の少し低いピークには白いオベリスクの様な岩が数本直立しているように見える。

道はその尾根の下を横切る様にして続いている。その岩は近づいて見ると尖ったようには

見えず、普通に大きな岩だった。













道は相変わらず稜線をトラバースしながら徐々に標高をあげて行く。小ピーク直下の

石灰岩の岩の間を抜け稜線に近づくと、北側は樹林帯、南側は笹原の歩いてきた尾根から

石立山分岐のピークの奥に次郎笈が見え隠れしている。













1732mの標高点のあるピークは比較的平らなピーク。笹の草原の向こうで三嶺が手招き

している。また一段と近づいて来た感じがするが、まだ距離的にも時間的にも予定の半分に

届いていない。その三嶺と反対に次郎笈と剣山は次第に遠のいて行く。




















1732mの標高点からは急な下り坂が現れた。『勘弁してよ~』と口に出るくらい下って行く。











一旦鞍部まで下り樹林帯の中を登って行く。何だか滑稽な枝ぶりの白骨樹を横目にみながら

樹林帯の中から視界が開けると平和丸に着いた。三等三角点 菅生 1700.7m













時間は12時前。当然ここでお昼ご飯となる。三嶺をバックに贅沢な時間。

さすがに今日は温かいインスタントラーメンが体を暖めてくれた。








昼食は20分ほどで済ませて次のポイントとなる白髪避難小屋を目指す。ここからも

一旦下り坂となる。避難小屋のピークとカヤハゲとの鞍部の向こうに天狗塚。

少し視線を左に移すと白髪山。以前は山麓から4時間近くも掛かるベテラン向けの山だったが

峰越林道が開通してから登山口から40分ほどで登れる気軽な山になった。その登山口に

続く峰越林道もよく見える。











平和丸との鞍部から樹林帯の中を登り返して行くと白髪山への稜線と、正面に白髪避難小屋が

見え始めた。この小屋は丸石避難小屋とほぼ同じような形をしている。











三嶺の小屋泊もいいけれど、ここから三嶺を眺めながら泊まってみるのもよさそうだ。

周りには下草を刈ったテント場もある。外で星空を眺めながらの一杯もいいだろう。










避難小屋から白髪山への分岐までは登りになる。その斜面ではススキが風に揺られ、陽が当たり

眩しいくらいに銀色に輝いている。










分岐の手前まで来ると、振り返ると避難小屋の奥に今日歩いてきた稜線が続いている。

剣山と丸笹との鞍部には見ノ越の建物が見える。







白髪山への分岐からはこの尾根の西側、綱附森が姿を現した。この間緑の濃い時期の

当然勢いのある笹の中を歩いて苦労した山だ。北に視線を向けると三嶺の手前に、少し

山肌の色が違うカヤハゲ。ここから見るとこの場所とほぼ変わらない高さに見える。











このまま水平に道が続いてくれればいいのだが、そうは問屋がおろさない。今日一番の

急坂が待ち構えていた。樹林帯の中から一旦出ると、道はザレてさらに滑りやすくなった。

終盤に差し掛かってここでも『も~お勘弁してよ!』というくらい下って行く。
















鞍部まで降りてくると、先程の分岐からはほぼ同じ高さに見えたカヤハゲが、随分と高く

そびえて見える。まだこれから始まる登りに『ハア~』とため息ひとつ。




カヤハゲへの登りで2組のご夫婦とすれ違った。今日は名古屋から飛行機で来て、白髪山から

三嶺を往復しているそうだ。そういえば石立分岐ですれ違った男性も愛知から来たと言っていた。

その男性もこの四国のゴールデンルートがとても気に入ったと笑顔で話をしていた。

登りの途中にあるにろう越えの鐘を三人がそれぞれ鳴らして、その音の出来不出来を

言い合いながら暫し戯れる。途中からは高知の市街地と太平洋がくっきりと見えた。

















カヤハゲへの登りの山肌も、ススキの穂が輝いていた。高い所が大好きなあっちゃんが

また大岩に登っている。カヤハゲのピークで三嶺をバックにいよいよラストスパートだ!














ここから三嶺まではコースタイムで1時間15分。目の前に迫ってはいるがまだ時間はかかる。

15時を目途にがんばりましょう!(とは言っても足を引っ張っているのは私だが)













ただ無情にもまた下り坂になる。先ほどの分岐からの下りは下草が笹だったが、この斜面は

苔が一面に張り付いている。日陰でもなく日当たりのいいこの場所に、不思議な感じがした。











思っていたより鞍部には直ぐ降りた。さあ~ここからは最後の登り、もうひと踏ん張り!











それでも少しづつ足を踏み出し続けると、山頂との中間部に見えた天狗岩が近づいて来た。

遠目ではそうでもないが、近づくとかなり大きな岩だ。











その天狗岩の右手から鎖を使って登って行く。鎖の苦手なルリちゃんも仕方なく登って行く。

天狗岩を登りきると岩肌のコメツツジとカエデの赤が目に飛び込んできた。

その天狗岩に登って戯れる二人を、決して近づかないルリちゃんが写真を撮ってくれた。














天狗岩の上部からは山頂にかけての絶景が広がっていた。山頂近くに点在する白い巨岩に

赤茶けたコメツツジの色、そしてその裾に萌黄色の笹の山肌が広がっている。

以前にセニョさんと歩いた時は9月だったのでまだ山頂付近は緑一色だった。これだけの

景色は初めてで感動すら覚える。

テキサスゲートではカップルが腰を降ろして休んでいた。

今日は白髪小屋から来て三嶺の小屋泊だそうだ。この時間に白髪の小屋から?と思ったが、

これだけの景色。急いで登り下りする事もない、ゆっくりのんびりと楽しむのも良い。

















山頂に続く景色もいいが、右も左も素晴らしい景気が広がっていた。最後に急登が待ち構えて

いたが、この景色を見ながらなら苦にならない。山頂から西の青ザレと東に見える太郎と次郎。

そしてまた一段と高知の市街地がクッキリと見える。

















最後の岩場は鎖を使わずに登って行ける。その岩場を乗っ越すと最終地点の三嶺到着!














時間は15時10分前。予定より少し早く着いたが、さすがに山頂には男性が二人だけ、

いつもは登山者で賑わう山頂は閑散としていた。その二人も今日は山頂小屋に泊りだそうだ。

大阪から来た初老の男性二人も、四国の山は良いねと褒めてくれた。それにしても今日

すれ違ったほとんどの人が四国外から来た人たちだった。それだけに今日のコースと

この三嶺は、四国外から高い交通費を払ってでも来てみたい魅力のあるコース、そして

山なんだと一日歩いて来て感じた。

それでは最後、名頃まで日が暮れないうちに下って行こう。山頂から小屋への道は今まで

何度も見た景色だったが、急峻な岩肌とコメツツジの山肌が今まで見てきた中では一番の

景色に見えた。それは同じ景色を何度も見てはいるが、今日は奥祖谷のかずら橋をスタート

して7時間以上歩いてきた達成感が、そう感じさせてくれたのだろう。山頂池からの下りは

段差もあり急な坂。最後に転倒しないように慎重に下って行く。
















ザレ場を過ぎると足元も比較的歩きやすくなる。南側の今日歩いた稜線には、そろそろ

低くなってきた陽が当たって、山肌の陰影がクッキリしてきた。最後の大岩を過ぎると

タヌキのかんざし(マユミの木)。以前に比べると緑の苔がまとわりついて、何だか随分と

年を取ってきたように見える。








タヌキのかんざしを過ぎると広尾根を右に左に振りながら下って行く。足元には随分と

落ち葉が降り積もり、頭上の紅葉と同じくらい斜面を染めている。

周りの木々の紅葉も陽が当たらないがそれでもきれいに見える。これだと陽が当たった

状態なら、それはそれは見応えのある素晴らしい景色だっただろう。














奥様たちは山頂から『2時間で下るわよ!』と言って、超特急で下って行っている。

逆に私はと言えば、その周りの紅葉が目移りして度々立ち止まり、なかなか前に進まない鈍行。














すると左手の斜面を駆け下りる動物が見えた。一瞬その音にビビったが、立ち止まったその

動物は可愛い目をした鹿だった。














木に首を挟まれた鹿のように見える倒木。可笑しいなと眺めていると、目の前を横切った

本物がじっとこちらを見ている。










山頂から1時間40分ほどで林道に出た。その間超特急で下りながらもずっとお喋りを続けて

いた奥様たち。今更ながら感心するばかりだが、このペースだと本当に2時間を切りそうだ。











ここ最近ずっと膝の調子が悪く病院にも通っていたあっちゃんが、ジム通いをし始めて

筋肉が付いてきたので、下りでも痛みが出なくなったという。ルリちゃんと二人で

週に何度か出かけているようだが、膝痛がなくなるのは良いが、これ以上鍛えてどんどん

歩くのが早くなってしまわないかと考えてしまうへっぽこリーダー。もう禁煙したぐらいでは

二人には追いつけそうにもない。ト・ホ・ホ~~!!














奥様たちの宣言通りに山頂から2時間を切って駐車場に到着した。陽が当たらなくなった

駐車場からは、夕陽に輝く塔ノ丸の肩が見えた。16,4km、9時間30分の行動時間。

今年に入っては最長の距離と時間になったが、沢沿いの道に始まり、九十九折れの急登。

そして樹林帯の尾根を抜けると笹原の絶景。急坂下りにプチ鎖の岩場と、今日一日で

一般的な登山のほぼ全てのバリエーションを歩く事が出来たと同時に、縦走路ではピークに

登る度にどんどん近づいてくる堂々とした三嶺の姿。しばらく停滞をして歩けずモヤモヤして

時間が長かった線で繋ぐだったが、とにかく天気も味方をしてくれて最高の一日となった。

残す所天狗峠から三嶺。達成に向けて楽しみと同時に終わりが近づく寂しさも・・・・。

何はともあれ最後のフィナーレをまたこの三嶺で迎えようとしている。







今日のトラック