KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

9年越し念願の塔丸北面を登る

2023年11月02日 | 四国の山


以前からこの季節になるとずっと気になっていたコースがあった。むらくもさんと当時

坊主さん(現在はシマチマおいちゃんに改名)の二人が歩いた塔丸北面小島峠から

菅生方面へ下る途中で祖谷川の支流になる赤滝川を渡渉して塔丸の尾根へと這い上がっ

ていた。そのコース上には色とりどりの原生林と、その林を抜けるとそこには広大な笹

原が広がっていた。その笹原の中で、百戦錬磨のむらくもさんが『なんという景色で

しょうか!』
と仰っていた。そして原生林は紅葉のオンパレードとも書いてあった。

その後三嶺や天狗塚に出かけるときに、いつも通っていた県道からその塔丸北面を眺め

ながら車を走らせ、『いつか歩いてみたいな~』と漠然と考えていたところ、先日YA

MAPに佐々連さんが同じように赤滝川から塔丸へ登っている活動日記が目に入った。

そして佐々連さんも『素晴らしい、来て良かった!』と書いていた・・・・・・。


と言う事で意を決して今週は念願の塔丸北面へ出かけてきた。紅葉も今週は1400m

以下に下がってきているだろうし丁度いい時期だ。このルート当然登山道など無く、頼

りになるのは佐々連さんが歩いたルートをダウンロードしたYAMAP。

前々回、前回に続いてまともな道は歩かずバリエーションルートとなる。というか今回

はほぼ歩いている人もいないのでバリエーションルートでもないような・・・・。





佐々連さんは小島峠をスタートして徒歩で赤滝川まで歩いていた。その間3km以上、

時間にして1時間近くかかっているので、我々は小島峠に一台をデポして車で県道を下

って行くことにした。佐々連さんが県道から赤滝川の川底へと下って行った場所は少し

路肩が広がっていたのでそこに車を停めてスタートする。




車を停めた場所の奥から赤滝川に向かって下って行く。初っ端からなかなかの急坂を奥

様たちも上手に下っている。







急坂を下りきると砂防ダムの脇に飛び出した。そのダムの下は川幅が広がっていたので

右岸を少し下って渡渉できそうな場所を探す。水の流れのある川べりは気温も少し低い

のか、木々の色付きも丁度ピークを迎えようとしていた。

















難なく無事渡渉し赤滝川の左岸から杉林の中を登って行く。伐採跡の切株がそこら中に

残る斜面。急登だけれどいつもの様に枝打ちされた枯れ枝も邪魔にならず、踏ん張りが

きいて意外と登りやすい。木々の間から右上に空が見え、尾根らしきラインが見えたの

でそちらに向かって登って行く。最後灌木を掻き分けると作業道に飛び出した。



















作業道は1035mの標高点に向かって続いていたが、そのまま尾根に向かって登って

行く。杉の木と自然林の混在する尾根を登って行くとまた作業道に飛び出した。








ここからはこの作業道を佐々連さんも歩いているようなので、しばらく同じようにして

歩いて行く。すると道の左側に高木の間から『阿波のマッターホルン』の黒笠山が顔を

覗かせていた。ここから見るとマッターホルンに見えなくもないかな?











作業道は右に左に折れながら続いていたが、途中から奥様たちは飽きてきたのかショー

トカットで直登を始めた。『やれやれ~』。











この辺りからあっちゃんが『お腹が空いた~~』と言い始めた。ただ小島峠までの道で

車酔いしてから回復していなくて胃がムカつくとも言う。それでもやはり背に腹は代え

られないらしくて迷っていたので、『ここで休憩しましょう』と言って行動食を摂る様

に勧める。







1217mの標高点の東側を登って行くと同じ高さの少し平らなピークに出た。そこか

らは南西から北西にかけての眺望が広がっていた。この方向この高さから見る三嶺は、

いつもと違った山容に見えた。さらにその奥に見える比較的平らな笹原はやはり牛の背

だろうか?北西に見えるラクダのこぶの様なピークは滝下の天狗塚














ここからは南の田之内谷川と赤谷川の間に地形図では破線が載っていて峠の様になって

いる。その鞍部に向かって一旦下って行く。下り坂は2段、3段にもなっていて『え~

まだ下っているよ!』と先頭を行くあっちゃん。痩せ尾根の東側は人工林。西側の自然

林の彩りが朝の光が当たって眩しい。














尾根を隔てて日陰になる東側から陽の当たる尾根を見ると、なお一層輝くその色彩にた

め息が出る。





鞍部からはまた急登が始まった。小さな樹脂製の境界杭を目印に登って行く。







すると今度は立派な林道に飛び出した。林道の東にはゲートの奥に大規模な伐採地が広

がっている。ここが県道からも見える伐採地の様だ。白い苗木の食害防止材が数多く立

っているが、それがムーミン谷のニュロニョロのように見える。








ネットに囲まれた伐採地には入らずにネットと尾根に沿って登って行く。少し登った所

であっちゃんがネットは潜れないかと持ち上げてみるが、ゲートがあるくらいの伐採地

はさすがに管理が行き届いていてビクともしなかった。








尾根は次第に広尾根となり最後は全く分からなくなってきた。周りの木々も杉の木から

自然林が混在し、薄暗くなった場所では光が当たったクロモジの黄葉にハッとさせられる。

















佐々連さんのYAMAPのトラックを見ながら適当に斜面を登って行くと。1416m

の標高点の手前1380m辺りから大岩の露岩。その大岩の岩と岩の間を通って登ると、

目の前に突然城壁の様な大岩が現れる。5mの程の垂直の壁になった大岩はこの山中に

あって何とも不思議な雰囲気がした。城壁の足元でフリークライミングの真似をしてみ

るが、太った身体では二歩目の足が上がらない。その大岩の横には本来のマッターホル

ンの様な尖峰な形をした岩もあった。













すると後ろから来たあっちゃんが『これ歯が付いてるわよ!』と言っている。その指さ

す方を見て見ると鹿らしき白骨。周りには足の骨が散乱していた。何かに襲われたのか

それともケガか病気でこの場所で衰弱して死んでいったのか。自然の摂理とはいえ周り

を大岩に囲まれ寂しげな場所に、なお一層寂しさを感じずにはいられなかった。















大岩で遊んでいたらこの岩を巻いて先に行っていたルリちゃんがしびれを切らして待っ

ていた。そのルリちゃんの横には『千と千尋の神隠し』のカオナシが立っていた。

そしてこの辺りからは自然林の中の彩のオンパレードだった。ブナやシロモジの黄葉が

目立つ林の中を、高木の色付きを見上げながら歩いて行く。














先日香川でも夕方頃になって恐ろしいくらいの音をたてて強風が吹きアラレも降った。

そんな天気にせっかくの紅葉が散ってないか心配だった。やはりその風で結構葉が落ち

たようで足元には落ち葉の絨毯。それでも青空の下の紅葉は見応えがある。

丁度、1416mの標高点の辺りがこの北面の紅葉の境界線の様だった。そこを過ぎる

とほぼ葉の落ちた林となる。














この辺りも佐々連さんのトラックを参考にしながらも、ある程度適当に登って行くと、

1500m辺りから笹原に飛び出した。モミの木とアセビの低木の庭を抜けると、どん

どんと視界が広がってきた。振り返ると黒笠山から矢筈山の稜線が見える。













そのモミの木も次第に疎らになってきた。目の前に三本の白骨樹が仲良く並んで、まる

で国旗掲揚台のようだ。








モミの木がなくなると最後は遮るもののない広大な笹の斜面となった。むらくもさんも

佐々連さんもこの景色に感嘆の声をあげていた。今回はその声を聞いてここまでやって

きた。そしてその感動の声は期待を全く裏切らず、我々三人も同じように声をあげた。

『すご~い!!』

山頂からは大きなうねりを造りながら緩やかな笹原の斜面になっていて、背の低い笹原

に幾筋もの獣が通った痕を追って登って行く。決して急いで山頂に向かって直登はせず

に、その獣道の緩い斜度の方向へとのんびりと登って行く。














西には三嶺、振り返ると黒笠山から寒峰への稜線。本当になんて贅沢な景色だろうか!


















岩が転がる庭園の様な場所を少し下に見ながら登って行くと、名頃から塔丸の山頂への

登山道に出た。獣道とは異なる踏み跡を辿って行くと山頂からの尾根。その尾根から次は

南側の剣山系の山々。そして太郎さんと次郎さんが仲良く並んでいるのが見えた。










尾根に出てひとつニセピークを越えると塔丸山頂。山頂では女性が二人楽しそうに話を

しながら食事の準備をしていた。我々も適当に岩に腰掛けお昼ご飯を食べる。















山頂から見る南面の山肌の紅葉も、祖谷渓谷辺りまで下がっているように見える。











お昼ご飯を済ませたら、東の夫婦池の登山口方面へと歩いて行く。山頂から一旦下がっ

て次のピークへと登って行く。夫婦池からのこのルートの登りは、こうしていくつかの

同じようなニセピークがあり、ピークと間違えてしまう。
















次のピークは二つのピークからなり、その東側に少し下がった所から北に三好市とつる

ぎ町の境界線が地形図には載っている。佐々連さんはその境界線に沿って下っていたが、

ここは少し横着をして北に続く境界線に向かって斜めにトラバースをしてみる。ピーク

から北に笹原の斜面と白骨樹。その笹原には縦横無尽に獣道が付いている。といっても

硬い笹に踏み跡が出来ると言う事は何度も何度も同じところを通っていると言う事。動

物たちにも人と同じように、通勤・通学路?があるのだろうか。
















笹原のすぐ下まで樹林帯が迫ってきた。その樹林帯の奥には曲がりくねった林道が見え

る。奥様たちに『あの道を通って帰りますから!』と伝える。境界線まで来ると北に樹

林帯の中へと下って行く。








ここからは尾根でもなく広い斜面。GPS頼みかなと思っていたら所々で色褪せた古い

テープが残っていた。境界の石杭も目につくようになった。

















すると以前にコリトリから一ノ森に登った時に見かけた、ツキノワグマ生息調査のセン

サーカメラが立木に取り付けられていた。そのカメラの向かいにはハチミツの入ったボ

トルをぶら下げている。センサーカメラに向かってピースサインをしたり、ボトルから

ハチミツをなめる振りをしたり、馬鹿な事をするヘッポコリーダー。一ノ森のカメラに

向かってもピースサインしたことがあるので、そのカメラを回収した四国自然史科学研

究センターの人は『また同じバカな人が写るってるわ!』と思うかな?







それまで随分と散ってしまった木々の落ち葉で踏み出す足が埋もれそうになる。『もう

少し早かったら紅葉も見頃だったのに』とあっちゃんに言うと『うんう、そのお陰で明

るい林の中を歩けているよ』と。確かに足元まで日差しが届いた林の中は歩いていてと

ても気持ちが良くて雰囲気もいい。







そんな木々も1500m辺りまで下がってくると彩が冴え始めてきた。赤いモミジはあ

まり見当たらなかったが、黄色からオレンジ色の色彩が映える。


















『お~~い、変な人間が近づいて来てるぞ~!』と少し離れた場所で鹿が仲間に知らせ

ているのか、キューンと鳴いた。それ以外は風の音もなく、ただカサカサと落ち葉を踏

みしめる音がするだけだった。頭の上と西側の斜面の彩りを眺めながら下って行くと幅

の広い林道が見え、さらに下って行くとその林道に飛び出した。











降り立った林道の少し北側には第七ヘヤピンからの道との分岐になっていた。そして西に

更に林道は延びていた。








ここからは小島峠まで予定通りの林道歩きになる。いつものように奥様たちのお喋りが始

まった。その後ろを立ち止まっては最後の彩りを写真に残すヘッポコリーダー。

















途中1312mの三角点を過ぎた所で道は1266mの標高点に向かっていたが、三角

点の先で鋭角に曲がって分岐していた。道なりにだとどうしても標高点の方へ歩いてし

まうのだが、直ぐに気が付いて鋭角に曲がる道へと歩いて行く。曲がる手前では今しが

た登っていた塔丸の稜線が見えた。ここで塔丸を最後に見納めをする。










落ち葉が積もっている所を見ると、あまり作業には使われていない林道の様だったが、

1347mの標高点の手前で突然広い集木場が現れ、同じような長さに伐採された木が

綺麗に何段にも積み上げられていた。










集木場の先では北側が伐採地になっていて、稜線からちょこんと頭を出した津志岳から

東に続く稜線の1110mのピークが見えた。さらに歩いて行くと同じように稜線から

頭を出した津志岳も見え始めた。











道は未舗装路からコンクリートの道になる。標高も1300mほどになり、道の両側は

今まで以上の色彩になる。運転席だけが放置されたトラックを横目に少し歩くと県道へ

飛び出た。














行動時間7時間10分。沿面距離12.7km。15時には小島峠につく予定だったが、

20分ほど時間を過ぎた。途中何度も立ち止まり周りの眺望や周りの木々の色付きを眺

めながらだったので、思った以上に時間がかかったが、その分最高の天気と最高の景色

に恵まれ、奥様たちにも満足いただけた一日になった。



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