日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

立会いとヘルマート変換

2013年01月28日 | インポート
旧諫早干拓には、2筆で5反(5000平方メートル)の農地を所有しているが、それらの農地の片側は道路に面していて、片側は水路に面している。

その水路の拡幅工事に先立ち、所有している農地の境界を確認するための立会いの依頼が、長崎県県央振興局から業務委託を受けている測量業者からあっていた。

1月26日の午前9時に現場で待ち合わせて、説明を聞いた。

法務局備え付けの登記図面から座標化された筆界点の位置が、現地に復元されてマーキングがしてあった。

実際の現地の現況構造物の位置からは、微妙にズレていた。

色々な要因で、当然そうなる事は分かっている。

過去において、最初に筆界点の位置を決定するために行なった時の基準点に関する測量誤差、その筆界点を測図して図面化した時の誤差、その図面化された縮尺1000分の1の図面から筆界点の座標値を読み取り、座標化する時に生じた誤差、その座標化された筆界点の位置を現地に復元する時の測量誤差などの累積などが考えられる。

ただ、復元されて現地に表示されている筆界点の位置を見て、系統的にズレている事が私には分かった。

要するに、不動と見做せる現地に対して、復元された筆界点の位置に、平行移動と若干の回転がかかっている事が見て取れた。

系統的な誤差は、測量においては規正(補正)や調整が可能である。

結果的に、系統的な誤差は、測量成果の中には残してはならないというのが大前提となっている。

それらの土地の区画は、3方向がきちんとしたコンクリート構造物である道路に囲まれていて、1方向が水路になっている。

ゆえに、以下の方法にて、同時平均的な筆界点の座標値の調整が可能であり、現況の固定された構造物との整合性を保つ事が可能である。

1.その区画の中で表示されている各筆の土地の土地登記簿の登記面積を集計する。

2.座標化された、その区画の外側で囲まれる筆界点の座標値による座標面積計算を実施する。

3. 1.ならびに2.によって計算されたその区画の土地面積の比率を計算しておく。
 最終的には土地登記簿に記載されている土地の面積に合致するように調整しなければならない。

4.現況の構造物で、畦畔(ケイハン)と道路の交点や、道路の隅切り(スミキリ)位置などを実測する。

5.その実測された現況座標値と、登記図面上の筆界座標値とを対応させて、最小二乗法を適用したヘルマート変換式の変換係数を求める。

6.ヘルマート変換式の変換係数が得られたら、登記図面から座標化された筆界点の座標値を、そのヘルマート変換式に代入して、座標変換後の筆界座標値を計算する。

7.最初に計算した区域全体の土地登記簿の合計面積と、筆界点の座標値から座標面積計算した面積との比率を、ヘルマート変換によって求めた重心座標系における座標値に掛けて、調整後の確定座標値を計算しておく。

7.そのようにして得られた筆界点の座標値を、現地に測設すれば、現況の境界との整合が保たれた筆界点を復元する事ができる。

※最小二乗法を適用したヘルマート変換式とは、それぞれの対応する現況の土地の境界座標値と、登記図面上での筆界点の座標値の残差の2乗和が最小となるように調整する座標変換式である。

要するに、同じ位置を測量したと見做される2回の測量位置座標値の隔たりを、同時平均的に調整して、2つの測量結果の座標値相互の整合が取れるように、等角写像性を保持したままで座標変換する方式である。

通常の算数的な数学と違って、対応する基準点の数はいくつあってもよく、それらの基準点における等角写像性を保持したままで、変換後の座標値を求める事ができる。

要するに古い測量成果(今回の場合においては筆界点の登記図面から座標化された座標値)と、それに対応する現況の明確な現地の土地の境界を、なるべく整合させるように、登記図面からの筆界点座標相互の等角写像性は保持したままで、それらの座標値を現地の現況になるべく合致するように、以下の手順にて計算する事ができる。

現況の現地で明確な構造物の実測座標値から、その測量座標系における重心座標値を計算する。
X座標値を合計して、その点数で割れば、X座標値の重心座標値は計算できる。
同様に、Y座標値を合計して、その点数で割れば、Y座標値の重心座標値は計算できる。

次に、登記図面から座標化された筆界点の座標値に関しても同様に、X座標値ならびにY座標値の重心座標値を計算しておく。

それぞれの重心の位置の座標値を、X=0.000,Y=0.000として、それらの重心座標系における座標値を計算しておく。

ヘルマート変換式の本質は、それぞれの座標系における重心座標位置を、X方向ならびにY方向に平行移動させてから合致させ、さらに回転と縮尺の調整をして、座標変換前と座標変換後の座標値相互の等角写像性は保持したままで、座標変換による残差の二乗和を最少に収めるということになる。

昔のヨーロッパの人だとは思うが、ヘルマートさんという人の発想による、優れものの座標変換式で、航空写真測量の空中三角測量の調整式としてはよく知られていて、写真測量の関係者にはなじみのある座標変換式ではあるが、一般的な測量屋さんの中には、あまりなじみがないのかもしれない。

最少二乗法を適用したヘルマート変換式は、非常に便利で、合理的な方法ではあるが、筆界点を復元した相手は、プロのプライドがある現職の測量屋さんなので、あえて強い事は言わなかったが、気になったので1つの処理方式の考え方として記録に残しておく。



豊田一喜


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