川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

地方参政権獲得運動は誰のため?

2009-02-27 11:07:54 | 在日コリアン
シンポジウム「日本の移民政策と在日コリアンのスタンス」の続きです。

 坂中さんのほかに河・近江渡来人クラブ代表、鄭・大妻女子大教授、林・青年会OB会会長が討論に参加しました。

 坂中さんの移民政策論に対してはそれを肯定しつつも、移民の先達とも言うべき在日コリアンやブラジル系の人々に対する日本政府や日本社会の今までの対応を考えると実現は多難、という意見が多かったように思います。
 坂中さんは1月9日、内閣府に「定住外国人施策推進室」が設置され、日系ブラジル人の就職支援に取り組み始めたことは日本にとっては「革命的なこと」で、政策転換につながるかもしれないと強調していました。

 http://blog.livedoor.jp/jipi/

 韓国で在外国民に国政参加の道が開けたことについて。

 坂中さんは民団の運動が奏効したのだから民団は大統領選挙の立会演説会を実施するなど、若者を教育して、海外居住国民としての自覚を高めてほしいと述べました。これに対し、林さんなどからは積極的な施策は語られず、むしろ韓国内の政治的対立が在日コリアン社会に持ち込まれることを危惧する意見が聞かれました。

 討論になってコリア系日本国民のBさんから子どもたちに自分はよそ者だという思いをさせてはならないという印象的なお話がありました。前もって質問用紙を提出してあったのに司会者が無視して紹介しないので僕も手を上げて発言しました。
 
 青年会の皆さんとは1978年東京都歯科医師会付属歯科衛生士学院が在日コリアンの入学差別をしたとき、ともに手を携えて闘いました。79年、埼玉県上福岡3中の林賢一くんが集中的ないじめを受けて自殺に追い込まれたときにも、ともに全力を挙げて真相の解明と学校教育指針の確立を求めて闘いました。ですから僕にとっては『戦闘的友誼』で結ばれた友人たちです。林さんがその当時の青年会の会長だったのです。思っていることを率直に述べているうちに叫びに近い声になったのではないかと思います。
 僕の発言の趣旨。子供たちにいつまでも韓国人として生きろということは非現実的で、こどもたちの自然なアイデンティティ形成を妨げる。コリア系日本人として生きる選択肢を積極的に提示していくべきではないか。そのために特別永住者に国籍選択権を付与する法律の制定運動に協力してほしい。

 林さんの答えは苦渋に満ちているようでした。次世代以降の課題は理解しているが、自分にはどうしてもそれはできない。何ができるかと考えた末、外国人地方参政権獲得運動に力を注いでいる。僕らの運動はそれとして理解している。僕はそのように受け取りました。

 この問題はここまでで、間もなく閉会。

 何人かの方が近寄ってきて声をかけてくれました。「先生のいわれる通りです」と昔出会った生徒の兄だという方がいいます。
 懐かしい顔は陳さんです。30年前ともに闘った仲間です。同じ四国の出身で彼が松山で仕事をしているころ訪ねたことがあります。今は民団中央の仕事をしているそうです。
 古い友人たちも集っていることがわかったので夜の交流会にも急遽参加することにしました。

 久闊を叙しながら意見の交換をしましたが、外国人地方参政権運動は特別永住資格を持つ在日コリアンのためではなく、ニューカマーといわれる人々の権利の確立のためだという鄭さんの話が印象に残りました。新渡来外国人の中心は中国人と日系ブラジル人です。
 それならそれでわからないではないのですが、なぜ自分たちのための運動を中心に据えないのでしょうか。
 ぼくは在日2世が歩んできた道をいくらか知っています。日本国籍を一方的に剥奪され、社会的差別のただ中で自己形成を余儀なくされたのです。帰化申請をしても生活の細部まで調べられたあげくに不許可になった人も少なくありません。そんな仕打ちをしてきた日本国家の一員に今更なれるものか、と思うのはむしろ当然のことかも知れません。国籍選択権確立運動に消極的な原因はここらにあると思っています。
 しかし、時は流れ、世代は交代し、日本社会にも変化がありました。自分はコリアンの生き方を貫いても子孫には別の道を選ぶ自由を確立するのが賢明な指導者のとるべき態度ではないか、と、ぼくは言っているのです。
 オバマ大統領の誕生は人類史にのこる出来事かも知れないと坂中さんは言います。在日コリアンの指導者たちが運動方針を転換し、コリア系の子どもたちも首相や裁判官になる夢を持てるようにすべきだと思います。
 闘いに立ち上がらなければ権利を獲得することは出来ません。青年会OBたちと再び手を組んで最後の闘いが出来ることをぼくは期待しているのです。その思いを伝えることが出来たのでしょうか。