文庫本上下巻で700ページを超えますが、読み始めると一気に読んでしまいます。夜はいつもおバカなテレビを見ていて、最初はコマーシャルの時だけ読んでいたのですが、たちまち小説の世界に引き込まれ没頭してしまいました。周りで家族が笑っている中、ひたすらページを送っていました。

物語の舞台は北京オリンピック前の中国。オリンピックの開会式に間に合うように世界最大級150kwhの改良加圧水型原子力発電所を完成させて、開会式にはそこから電気を送り中国の威信を高める。さすが中国、やることがすごい。
しかし、当時中国にそんな世界最大級の原子力発電所建設のノウハウは当然ない。主人公は技術顧問として日本から送り込まれた田島ですが、中国の現実と悪戦苦闘しながら道を切り開いていき何とか完成にこぎつけます。無事、発電所は運開(運転開始)でき開会式に電気は送れるのですが、そこから一波乱。
中国側の主人公は大連市党副書記で原発の運転開始責任者の学耕。実は密かに大連での腐敗摘発の使命を帯びているのですが、その大連はまさに伏魔殿、腐敗の温床です。
当然ながら原発の工事に関しても入札とは名ばかりで有力者の関連企業がすべて契約しています。しかし大連の企業に原発建設の実績も能力もあるはずもなく、それ以上に中国の労働者の意識は低くて工事物品の盗難、横流し、手抜きはしょっちゅう。とても原子力発電所建設に携わるレベルではありません。
技術顧問の田島はそれにひとつづつ対処し、現場を教育し信頼を得ていくのですが、これって本当に中国の現実なんでしょうけど安全性とか信頼性はどうなってしまうんでしょう。普通新しい技術を使うときにはごく小規模のものから試運転を始めて、ノウハウを蓄積しながらそれなりの時間をかけて大規模展開していくものでしょう。追いつけ追い越せとばかりにいきなり世界最大級のものを作って、さあどうだといってもうまくいく訳ないのでは。そういえば中国の新幹線が衝突して橋から落ちたこともありました。
日本人が技術顧問として指導するのは中国人にとっては屈辱的な面もあって、田島をはじめとする日本人スタッフは本当に言い知れぬ苦労をするのですが、の協力もあっていろいろな抵抗を排除して完成にこぎつけます。しかし土壇場になって田島は問題だらけの原発内の状況を見て(非常用ディーゼル発電機は整備不良で、その軽油は盗まれていた、携帯ラジオは管理区域内に持ち込まれあちこちに置かれたままになっている、工事用送電線は盗まれていたなどなどこれが中国的現実?)運開を遅らそうとするのですが、当然ながらこれは政治的に許されません。
しかし、運開後に原発内で火災が発生。この小説は東日本大震災前に書かれているのですが、これからの記述はまさに福島第1原発のよう。火災による電源喪失、非常用ディーゼル発電も動かず、ベント弁を開けて蒸気を逃がし貯蔵用プールから水を送る…しかしいずれもバルブが開かない。消防車から注水を、タンクの水がなくなるなら海水をホースにつないで入れる。最悪の事態にも冷静に何ができるかを考えて最善のことを行う。なんとしてもメルトダウンを起こしてはいけない。原発内に残ったチームによる文字通り命をかけた戦い。福島第1を知っているだけに読み進めるのが怖くなるような描写です。この小説の舞台は中国ですが、中国人が読めばと日本の原発こそ現場に緊張感がなく弛緩していたから現実に起こったのだろう、何でも中国を貶めるように書くなとなるのでしょうか。福島の現実を見た目には日本だって全然大丈夫でなかったのは事実です。
最後は無事収束できたかはわからないまま事故に対処している最中で終わっているのですが、東京電力の人たちはこれを読んでいたのでしょうか(週刊東洋経済の連載小説なので企業人はかなり読んでいたはずです)。人間のやることには絶対はない・・電源喪失、ベント、海水注入、ここに書いてあることをどこまでシュミレーションしていたのでしょうか。中国ならともかくこの日本では絶対に起こりえないし、想像するだに縁起が悪いとスルーしたのでしょうか。
それにしてもこれからどんどん原発を建設して原発大国になろうとしている中国の現実は心配です。建設中のものも含めると50基を超え、今や世界一の原発大国なのですが人の命が軽い国ですし、あの国で安全管理の面は大丈夫と自信もって言えるのでしょうか。たぶん歴史的経緯がある日本が言っても一蹴されるだけでしょうけど、もし事故が起これば日本へも放射性物質は飛んできます。PM2・5程度の騒ぎではなくなりますけど、そういうことも含めて恐ろしくなる読後感です。

物語の舞台は北京オリンピック前の中国。オリンピックの開会式に間に合うように世界最大級150kwhの改良加圧水型原子力発電所を完成させて、開会式にはそこから電気を送り中国の威信を高める。さすが中国、やることがすごい。
しかし、当時中国にそんな世界最大級の原子力発電所建設のノウハウは当然ない。主人公は技術顧問として日本から送り込まれた田島ですが、中国の現実と悪戦苦闘しながら道を切り開いていき何とか完成にこぎつけます。無事、発電所は運開(運転開始)でき開会式に電気は送れるのですが、そこから一波乱。
中国側の主人公は大連市党副書記で原発の運転開始責任者の学耕。実は密かに大連での腐敗摘発の使命を帯びているのですが、その大連はまさに伏魔殿、腐敗の温床です。
当然ながら原発の工事に関しても入札とは名ばかりで有力者の関連企業がすべて契約しています。しかし大連の企業に原発建設の実績も能力もあるはずもなく、それ以上に中国の労働者の意識は低くて工事物品の盗難、横流し、手抜きはしょっちゅう。とても原子力発電所建設に携わるレベルではありません。
技術顧問の田島はそれにひとつづつ対処し、現場を教育し信頼を得ていくのですが、これって本当に中国の現実なんでしょうけど安全性とか信頼性はどうなってしまうんでしょう。普通新しい技術を使うときにはごく小規模のものから試運転を始めて、ノウハウを蓄積しながらそれなりの時間をかけて大規模展開していくものでしょう。追いつけ追い越せとばかりにいきなり世界最大級のものを作って、さあどうだといってもうまくいく訳ないのでは。そういえば中国の新幹線が衝突して橋から落ちたこともありました。
日本人が技術顧問として指導するのは中国人にとっては屈辱的な面もあって、田島をはじめとする日本人スタッフは本当に言い知れぬ苦労をするのですが、の協力もあっていろいろな抵抗を排除して完成にこぎつけます。しかし土壇場になって田島は問題だらけの原発内の状況を見て(非常用ディーゼル発電機は整備不良で、その軽油は盗まれていた、携帯ラジオは管理区域内に持ち込まれあちこちに置かれたままになっている、工事用送電線は盗まれていたなどなどこれが中国的現実?)運開を遅らそうとするのですが、当然ながらこれは政治的に許されません。
しかし、運開後に原発内で火災が発生。この小説は東日本大震災前に書かれているのですが、これからの記述はまさに福島第1原発のよう。火災による電源喪失、非常用ディーゼル発電も動かず、ベント弁を開けて蒸気を逃がし貯蔵用プールから水を送る…しかしいずれもバルブが開かない。消防車から注水を、タンクの水がなくなるなら海水をホースにつないで入れる。最悪の事態にも冷静に何ができるかを考えて最善のことを行う。なんとしてもメルトダウンを起こしてはいけない。原発内に残ったチームによる文字通り命をかけた戦い。福島第1を知っているだけに読み進めるのが怖くなるような描写です。この小説の舞台は中国ですが、中国人が読めばと日本の原発こそ現場に緊張感がなく弛緩していたから現実に起こったのだろう、何でも中国を貶めるように書くなとなるのでしょうか。福島の現実を見た目には日本だって全然大丈夫でなかったのは事実です。
最後は無事収束できたかはわからないまま事故に対処している最中で終わっているのですが、東京電力の人たちはこれを読んでいたのでしょうか(週刊東洋経済の連載小説なので企業人はかなり読んでいたはずです)。人間のやることには絶対はない・・電源喪失、ベント、海水注入、ここに書いてあることをどこまでシュミレーションしていたのでしょうか。中国ならともかくこの日本では絶対に起こりえないし、想像するだに縁起が悪いとスルーしたのでしょうか。
それにしてもこれからどんどん原発を建設して原発大国になろうとしている中国の現実は心配です。建設中のものも含めると50基を超え、今や世界一の原発大国なのですが人の命が軽い国ですし、あの国で安全管理の面は大丈夫と自信もって言えるのでしょうか。たぶん歴史的経緯がある日本が言っても一蹴されるだけでしょうけど、もし事故が起これば日本へも放射性物質は飛んできます。PM2・5程度の騒ぎではなくなりますけど、そういうことも含めて恐ろしくなる読後感です。