怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「下町ロケット2ガウディ計画」池井戸 潤

2017-09-15 07:30:10 | 
よく、読んでから見るか、見てから読むかと言われますが、原作を読んでから映画を見てどことなくちょっと違うかな~と違和感を感じてしまうことが多いのですが、今回はご存知大ヒットしたテレビドラマですけど見てから原作を読む。
もう1年以上前ですかね、テレビドラマで毎週見ていた「下町ロケット2ガウディ計画」です。

読み進めていってもだいたいの筋は分かっていて、佃社長の阿部寛の顔とかが浮かぶのですが、サヤマ製作所社長の小泉孝太郎は、ドラマではいけ好かない洋行帰りの切れ者という感じがよく出ていたのですが、小説では佃社長と同年代でもう少し重厚感がある役ですね。
あのドラマを見ていて、帝国重工の社長の出ている御前会議に呼ばれもしない財前部長が飛び込みで直訴する場面とか、やたらと帝国重工を仰々しく描いている場面はすごい違和感があったのですが、小説ではそんな仰々しい場面はなし。やっぱりテレビ映りを考えて誇張してあるんです。まあ、大企業の中の派閥争いとか小狡く動き回る輩はありそうなのですが、池井戸さんは「空飛ぶタイヤ」のモデルの三菱自動車と言い、この「下町ロケット」のモデルの三菱重工と言い、財閥系重厚長大大企業への反感はすごいものです。自分が三菱銀行に勤めていたので余計三菱の体質が分かっているということですか。役所より役所的な硬直した組織という面があるんでしょう。実際、造船の火災事故とかМRJの遅れとかは目を覆うばかりです。
テレビでは勧善懲悪がはっきりわかるようにしないといけないので、いかにも悪役は悪役然としているし、最後には劇的な形で報いを受けることになってしまうのですが、小説ではいたって穏やかに進み、これから先は分かっているよねという読者の想像力に委ねられています。その点はもっとコテンパンにやっつけてしまえという気もしますが、言わずもがなで、実際はあとでじわじわと責任をとらされるということが世の中普通なのですよね。
でも、悪の枢軸のようにアジア医科大学の貴船教授に攣るんでいたPMDAの滝沢とか日本クラインの久坂、藤堂、帝国重工の石坂部長に富山主任とかはもう少し落とし前をつけてもらわないと読者が許さない…
その点経理部長の殿村は立川談春の味のある演技もあって、断然ドラマの方がいい存在感と味を出しています。一村教授の今田耕司はそこそこでしたが、医師としてはちょっと軽かったのかな。財前部長のような格好いい部長はまずいないだろうし、あのファッションでは絶対に浮くでしょう。フリージャーナリストの活躍もドラマでは大きく取り上げていましたが、小説ではそれほどでもない。でもデータの解析を誰がどうやって偽造を確信したかという点はイマイチわからないんですけど。
ところで、人工心臓のバブルについて佃製作所の特許侵害があったとしたら、設計変更があった時になぜ指摘しなかったのか。その時点で指摘していればこうまでややこしい話にはならなかったのではとも思うのですが、それだと小説の展開として成り立たないのか?特許権を侵害しているのでバルブが製造できないとなるとあの人工心臓はどうなるのか。新しい医療機械を開発して人の命を救うためには佃製作所は使用料を吹っ掛けて特許の実施を認めるべきではと思うのですがどうなんでしょう。
どうも小説を読んでいるとちらちらと役者の顔が浮かんできて、それはそれで楽しめました。やっぱりドラマで違和感を感じた企業の描き方とかはちゃんと小説ではそれなりに書いてあったので、見た目の派手さが必要なドラマの演出部分がよくわかります。そうだよね~。
当代の人気作家の人気シリーズ、面白くない訳ないでした。読みだしたら350ページ余りが一気です。
コメント
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