一国の生産性とは、何か、どうやって求められるのか。
著者の定義では「国内で生み出された付加価値総額=GDP」を国民数で割ったもの。いたってシンプルです。でも個々の企業ではなくて国でみるとしたこういうことでしょう。個々の企業なら企業の付加価値総額を従業員で割ったものでしょうね。
ところでその日本の生産性を購買力調整したうえで国際比較してみると、何と28位。台湾より下位で、マルタとか赤道ギニアがすぐ下に来ています。労働者一人当たりでいえばスペインとかイタリアより下で29位になってしまいます。日本の労働者はまじめで一生懸命働いているのにどうして?
これから日本はさらに高齢化が進み、人口が減少していくのは必然の中で、社会保障制度を維持していくためにも生産性を上げることが急務です。そして上げていくポテンシャルは十分持っているはずです。
実はOECD諸国の「人材の質」ランキングでは、日本人労働者は4位で有能であることは国際的にも認められている。ではなぜこんなに生産性が低いのか?
著者のこの論に対しては「日本の生産性が低いのは、品質は高いのに低価格で提供しているのが理由だ」というたくさんの反論が来たそうです。でも著者は、この「低価格・高品質」は決していいことではなく、生産の低さをごまかすためのものと断じています。そもそも低価格・高品質は伝統的価値観などではなくて1990年代以前は海外との生産性の差が広がっていないのです。
日本の生産性の低いのはサービス業の生産性が低いからなのですが、勝手に高品質だと思い込んでいるものが多く、余計なおせっかいを押し付けているので低価格にせざるを得ない。低価格のものには価格を引き上げられない品質のものが多く、高付加価値ではない。高品質妄想商品だというのです。
求める人が消滅したものとか、誰も求めていないのに無駄なスペックをつけて高品質と自負している。ここではホテルのサービスについて述べてありますが、客が価値を認めていないところに勝手に高品質を付加して海外のホテルではどこもやっていないと自負しているのです。また宅配便のサービスについて書いてありますが適切な価格にすればやらなくてもいいと言われるような過剰サービスをしています。何回でも不在再配達を無料でするとか、過剰な時間指定とか市場のニーズを冷静に分析してニーズに合わせた形にすれば割増料金をいただくなど高品質・高価格の適正な価格を請求できるはずです。ところで今週の週刊ダイアモンドにクレーマー対策が特集されているのですが、過剰スペックを当たり前にしてしまったので、そこにつけ込むクレーマーが増えているし、強いては生産性を下げていると書いてあったのですが、高品質低価格はクレームも増やす!
観光戦略でも外国人旅行者を十把一からげにして「外国人にとって日本の魅力はこれだ」とばかりに日本のおもてなしを売り込むのはニーズをきちんと分析せずに、勝手な決めつけと思いこみサービスの押し売り。これでは正当な価値を主張できずに生産性は低いままです。
これから高齢化が進み、人口が減ってくる中で社会保障制度を守っていくためにも高品質・相応価格で生産性を高めていかなくてはいけないのです。
ところで人口が減ってくる中で女性の社会進出を勧めないといけないという議論がよくされますが、日本は女性の生産性が低いまま。これは女性の生産性がどんどん上がっている諸外国と比べると明確です。日本女性の生産性は男性の半分強という実態です。因みにその機会損失を計算すると130兆円とか!企業の人材活用の問題にとどまらず、結婚するだけで優遇する税制とか社会保障制度は早急に変えていく必要があります。人口減社会で社会保障制度を維持していこうとするならば子どものいない夫婦は優遇されずに子供の数に応じた優遇が「世界の常識」・・・というと夫婦・家族の在り方とか結婚の意味とかいろいろ論争を呼び込みそうですけどね。釈迦保証制度の導入というのは伝統的家族観がもはや難しくなったことへの対応という面もあるので、大きな軋轢を呼びそうですが、意識面の変更も待ったなしかもしれません。
日本がこれまで高度成長の成功体験でうまくいっていたのですが、それは人口ボーナス効果があって経営者の能力のなさを覆い隠してきたから。時代が人口減少社会へう中でその備えはほとんどされてこなかったし、生産性を上げるのではなくて賃金を下げるというコストカットばかりに注力してきたのは経営判断の大きなミス。低金利政策も超金融緩和も効果がないのは、人口減少社会における需要構造への認識(藻谷さんのデフレの正体!)が不十分ですし、企業経営者の能力の過大評価と言えます。ちょっと日本人では言いにくいことかもしれませんがズバズバ斬ってきます。人口減を補うために移民セ策を取ればいいという議論もありますが、もし生産性を上げることなく移民で対応するとなると必要数は3400万人。これだけの数の外国人が働く日本車委はどうなっているのか想像すると恐ろしいことです。現政権は人手不足という企業の要望を聞いて定見なく移民政策へのかじを切りましたが、今がよければいいというその場しのぎとしか思えません。
それではどうすればいいのか?
具体的に3つの政策を提言しています。
(1)企業数の削減;企業規模が大きいほど生産性は高いですし、今後人手確保が難しくなるので企業数は減らざるを得ません。それもかなり大幅(著者は今の半分でいいと言っています)にです。ここで生産性の低いゾンビ中小企業を救えなどという変な延命措置を政策に入れないようにしなければいけません。
(2)最低賃金の段階的な引き上げ;諸外国で実証済ですが、生産性と最低賃金は強い相関関係があります。目標値は2020年で1225円!英国の例では最低賃金を上げても失業は増えなかったとか。う~ん、そうなるとこれに連動して医療とか介護とか保育の分野の単価も大きく上げないと…社会保障費も大きく跳ね上がる?
(3)女性の活躍
人口減少に真正面から向き合い生産性向上を明確に目標ととらえて、日本特殊性などと逃げ口上を許さずに無能だった経営者に改革を強いる!
論理は明快で目からウロコ。文章も小気味いいのですいすい読めます。ご一読お勧めです。
著者の定義では「国内で生み出された付加価値総額=GDP」を国民数で割ったもの。いたってシンプルです。でも個々の企業ではなくて国でみるとしたこういうことでしょう。個々の企業なら企業の付加価値総額を従業員で割ったものでしょうね。
ところでその日本の生産性を購買力調整したうえで国際比較してみると、何と28位。台湾より下位で、マルタとか赤道ギニアがすぐ下に来ています。労働者一人当たりでいえばスペインとかイタリアより下で29位になってしまいます。日本の労働者はまじめで一生懸命働いているのにどうして?
これから日本はさらに高齢化が進み、人口が減少していくのは必然の中で、社会保障制度を維持していくためにも生産性を上げることが急務です。そして上げていくポテンシャルは十分持っているはずです。
実はOECD諸国の「人材の質」ランキングでは、日本人労働者は4位で有能であることは国際的にも認められている。ではなぜこんなに生産性が低いのか?
著者のこの論に対しては「日本の生産性が低いのは、品質は高いのに低価格で提供しているのが理由だ」というたくさんの反論が来たそうです。でも著者は、この「低価格・高品質」は決していいことではなく、生産の低さをごまかすためのものと断じています。そもそも低価格・高品質は伝統的価値観などではなくて1990年代以前は海外との生産性の差が広がっていないのです。
日本の生産性の低いのはサービス業の生産性が低いからなのですが、勝手に高品質だと思い込んでいるものが多く、余計なおせっかいを押し付けているので低価格にせざるを得ない。低価格のものには価格を引き上げられない品質のものが多く、高付加価値ではない。高品質妄想商品だというのです。
求める人が消滅したものとか、誰も求めていないのに無駄なスペックをつけて高品質と自負している。ここではホテルのサービスについて述べてありますが、客が価値を認めていないところに勝手に高品質を付加して海外のホテルではどこもやっていないと自負しているのです。また宅配便のサービスについて書いてありますが適切な価格にすればやらなくてもいいと言われるような過剰サービスをしています。何回でも不在再配達を無料でするとか、過剰な時間指定とか市場のニーズを冷静に分析してニーズに合わせた形にすれば割増料金をいただくなど高品質・高価格の適正な価格を請求できるはずです。ところで今週の週刊ダイアモンドにクレーマー対策が特集されているのですが、過剰スペックを当たり前にしてしまったので、そこにつけ込むクレーマーが増えているし、強いては生産性を下げていると書いてあったのですが、高品質低価格はクレームも増やす!
観光戦略でも外国人旅行者を十把一からげにして「外国人にとって日本の魅力はこれだ」とばかりに日本のおもてなしを売り込むのはニーズをきちんと分析せずに、勝手な決めつけと思いこみサービスの押し売り。これでは正当な価値を主張できずに生産性は低いままです。
これから高齢化が進み、人口が減ってくる中で社会保障制度を守っていくためにも高品質・相応価格で生産性を高めていかなくてはいけないのです。
ところで人口が減ってくる中で女性の社会進出を勧めないといけないという議論がよくされますが、日本は女性の生産性が低いまま。これは女性の生産性がどんどん上がっている諸外国と比べると明確です。日本女性の生産性は男性の半分強という実態です。因みにその機会損失を計算すると130兆円とか!企業の人材活用の問題にとどまらず、結婚するだけで優遇する税制とか社会保障制度は早急に変えていく必要があります。人口減社会で社会保障制度を維持していこうとするならば子どものいない夫婦は優遇されずに子供の数に応じた優遇が「世界の常識」・・・というと夫婦・家族の在り方とか結婚の意味とかいろいろ論争を呼び込みそうですけどね。釈迦保証制度の導入というのは伝統的家族観がもはや難しくなったことへの対応という面もあるので、大きな軋轢を呼びそうですが、意識面の変更も待ったなしかもしれません。
日本がこれまで高度成長の成功体験でうまくいっていたのですが、それは人口ボーナス効果があって経営者の能力のなさを覆い隠してきたから。時代が人口減少社会へう中でその備えはほとんどされてこなかったし、生産性を上げるのではなくて賃金を下げるというコストカットばかりに注力してきたのは経営判断の大きなミス。低金利政策も超金融緩和も効果がないのは、人口減少社会における需要構造への認識(藻谷さんのデフレの正体!)が不十分ですし、企業経営者の能力の過大評価と言えます。ちょっと日本人では言いにくいことかもしれませんがズバズバ斬ってきます。人口減を補うために移民セ策を取ればいいという議論もありますが、もし生産性を上げることなく移民で対応するとなると必要数は3400万人。これだけの数の外国人が働く日本車委はどうなっているのか想像すると恐ろしいことです。現政権は人手不足という企業の要望を聞いて定見なく移民政策へのかじを切りましたが、今がよければいいというその場しのぎとしか思えません。
それではどうすればいいのか?
具体的に3つの政策を提言しています。
(1)企業数の削減;企業規模が大きいほど生産性は高いですし、今後人手確保が難しくなるので企業数は減らざるを得ません。それもかなり大幅(著者は今の半分でいいと言っています)にです。ここで生産性の低いゾンビ中小企業を救えなどという変な延命措置を政策に入れないようにしなければいけません。
(2)最低賃金の段階的な引き上げ;諸外国で実証済ですが、生産性と最低賃金は強い相関関係があります。目標値は2020年で1225円!英国の例では最低賃金を上げても失業は増えなかったとか。う~ん、そうなるとこれに連動して医療とか介護とか保育の分野の単価も大きく上げないと…社会保障費も大きく跳ね上がる?
(3)女性の活躍
人口減少に真正面から向き合い生産性向上を明確に目標ととらえて、日本特殊性などと逃げ口上を許さずに無能だった経営者に改革を強いる!
論理は明快で目からウロコ。文章も小気味いいのですいすい読めます。ご一読お勧めです。