怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

中野信子「嫌い!の運用」

2022-10-05 10:12:44 | 
最近テレビのコメンテータとして出まくっている中野信子さん。
本も次から次へと出していて、どれも売れ行きはいいみたい。図書館で予約するとだいぶ待たされてしまいます。
それでもこの本はちょっと前(2020年12月)の出版なのでか、待つことなくすぐ借りることが出来ました。

幼い頃から食べ物の好き嫌いはなくすようにと言われ、人には好かれるよう、嫌われないようにしなさいと言われてきた気がします。
それでも偏食でよく無理やり食べさせられた記憶があります。まあ、歳をとってきて最近では出されたものは皆食べるようにしていますけど、それは年齢だけでなくて食物の品種改良が進んで、独特の臭みとかえぐみのあるものが出回らなくなったせいかもしれません。
仕事をしている時は、本人的には嫌われないようにとそれなりに気を使い、いろいろな人が何となく集まってくる人は、人望があり仕事ができる人なんだろうなと思っていて、自分も人が寄ってくるような人にならなくてはと思っていました。
それでもどうもケミストリーが合わないというか嫌いな人というのは厳然としてあり、そういう人が上司にいると顔を合わせるのも気が滅入ってしまうものでした。
でもどうやら「嫌い」という感情は、努力によってどうにかなるものではなく消し去ることのできないものであって、ちゃんと「嫌い」という感情には意味があり役割があるみたいです。
「嫌い」という感情の中には、脳が感じる自分にとっての不快、不安、不振、違和感があり、その先には危険、恐怖、不利益、有害がある。「嫌い」という感情は、根拠のないネガティブな感情ではなく、蓄積された情報から、脳が合理性を持って判断している結果としての心の声だというのです。それは自身の経験でなくても仲間や遠い先祖などの危険、恐怖の経験が、世代を重ねて記憶や機能として蓄積された結果(人が蛇に対する敏感反応は進化の過程で培われた生得的なシステム)と言われると警告としての「嫌い」という感情は大切にしなければいけないみたいです。
ただ、日本という国は同調圧力が強く、組織集団の利益を優先すべきとの社会通念が強い。自分の感情を露にすることは大人のふるまいでないと押さえつけられがち。
でも日本でも世界でも、成功している人の多くは「嫌い」という直感を大切にして、経営なりビジネスに生かしている。
この本では「嫌い」という感情がどういうふうに形成されるのかを脳科学的に明らかにしている。詳細は読んでみてください。
因みに思春期の女性が父親を避けたり臭いに敏感に反応して嫌悪感を露にするようになるのは「偏桃体」が反応して本能的に嫌いになっている為とか。これは遺伝子が近い男性を遠ざけるごく自然な生理的反応で、いわばセキュリティシステムの一つだそうです。
それでは「嫌い」という感情をどう運用すればいいのか。
第3章からは戦略的運用術とか嫌いな人との付き合い方、家族に対する嫌悪感、自己嫌悪への向き合い方とが縷々述べてあります。
「嫌い」という直感を大切にして無駄な努力を惜しみ、必要な努力に注力すべきというのはよく分かるのですが、組織の中で働いていると嫌な仕事でも嫌ということが出来るわけでもなく、逃げることも出来ないことはままあります。誰もが嫌がることからうまく逃げのびて立ち回る人はたくさん知っていて、上手く逃げのびて世渡りが上手い人もたくさん見てきましたが自分的には軽蔑の対象でしかなく、分かっていながら自らあえて嫌なことに突っ込んでしまう馬鹿さが自分にはあるんですが、それはそれで愛おしいので厄介なものです。
ケミストリーの合わない嫌いな人とはなるべくお近づきにならないようにしたいのですが、それも組織の中では否応なく一緒になる時がある。こちらが嫌いな時は往々にして向こうも嫌っているのですが、それが上司だったりするとじっと人事異動があるのを待って我慢するしかない…じっと我慢していればいいのですが、ぶつかったりしてどれだけ損をしたことか。
リスクを回避するためには何故嫌なのか冷静に分析して、上手く転化できればいいのですが、それは分かっちゃいるけど…
最後の第7章は嫌いなことの向き合い方として、具体的詳細に対処方法が書いてあります。それぞれいろいろ大人の事情があって、すべてうまくできるかは分かりませんが、自分に合った出来そうなことを一つでも出来れば、気持ちが少し軽くなるかもしれません。
もっとも今はリタイアして身ですので、あまり嫌なことは近づかないしやろうともしないので、現役時代にそれができればよかったのですがままならずに、いまだ嫌な記憶は思い出される時があって私はネガティブな性格なんでしょう。
コメント
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