く~にゃん雑記帳

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<ACCU奈良 文化遺産国際セミナー> 国内随一の石工・左野勝司氏「石と対話して半世紀」

2013年02月03日 | メモ

【高松塚古墳の解体、イースター島・モアイ像の修復……】

 ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)文化遺産保護協力事務所(奈良事務所)主催の「文化遺産国際セミナー」が2日、奈良市のならまちセンターで開かれた。奈良文化財研究所(奈文研)保存修復科学研究室長の高妻洋成氏が「文化遺産を科学の目で診る」、石工・左野勝司氏が「石と対話して半世紀」の演題で講演、その後、奈文研都城発掘調査部副部長の杉山洋氏も加わって「文化遺産を伝える〝たくみ〟の技」をテーマに座談会(コーディネーター奈良県立大学特任教授・田辺征夫氏)を行った。

  

 左野氏(写真㊧)は1943年奈良生まれの世界的な石工。これまでにイースター島のモアイ像の修復(下の写真㊧)や高松塚古墳の解体などを手掛け、今もカンボジア・アンコール遺跡の西トップ寺院(下の写真㊨)の修復に携わっている。「モアイ像は大きなものは40トンもあり、滑車などで重量を半減させながら慎重に起こした」。それから約17年。その後は島の人たちが自力で保存・修復に取り組み多くのモアイ像が立ってきたという。「4月には久しぶりに現地を訪ねる予定」と楽しみな様子だ。

 高松塚古墳の解体については「漆喰が塗られ壁画が描かれていたので石の中の状況が分からず試行錯誤の連続。保存科学の力なども借りながら初めてできた。1人や2人の力では到底できなかった。ただ(石室から取り出した石が)これからどうなるか心配」と話す。現在取り組んでいる西トップ寺院はアンコール遺跡群の中のアンコール・トムの一角にある。石材の劣化に加え植物の侵食も激しい。「アンコールワットに比べると、石質が悪いうえ石組みも粗雑。長年の内戦で技術者が殺害されていない。職人養成のためにもお手伝いできればと思っている」。

  

 左野氏に先駆け講演した高妻氏によると、石は硬いというイメージがあるが、時間の経過とともに風化していく。その原因としては①凍結破砕②地震など応力の集中による破壊③塩類風化④生物被害――がある。そのうち凍結破砕は水が凍ると体積が9%膨張するため、石に染み込んだ水の凍結によって起こる。左野氏も「石にとって凍結が一番の致命傷。モアイ像やアンコール遺跡が何百年も1000年ももったのは気候が温暖で凍らなかったから」と話す。

 座談会では石のクセから木の文化との違い、人材の養成まで幅広いテーマが論じられた。西トップ寺院の修復に現地で携わっている杉山氏は「石材が割れやすく、それを解体してどう元通りに積み上げるかが大きな課題。新しい石材をどこまで使っていいのか」と率直に悩みを打ち明ける。世界遺産に指定されており、登録条件の「オーセンティシティ(真正性)」とも関わってくる問題だからだ。海外での文化財修復支援について、杉山氏は「結局『人』の問題に行き着く。造ったのが人なら、それを保存・修復するのも人。日本人とはものの考え方や仕事の進め方などが違うが、相互に歩み寄りながら進めるしかない」とも話していた。

【モアイ像修復事業】 イースター島は南米チリから西へ約3800kmにある南太平洋の孤島。小豆島ほどの島に10~17世紀に造られたモアイ像が950体近くあるが、その多くは地震、津波、部族間抗争などで倒れたままだった。知事の呼びかけに応じ日本の支援による修復事業が動き始めたのは1988年。修復場所は島最大の祭壇「アフ・トンガリキ」。左野さん率いる飛鳥建設や奈文研職員、クレーンメーカー・タダノ、島民らが協力して巨大なモアイ像15体が元の祭壇に収まった。

【アンコール遺跡群西トップ寺院の修復事業】 西トップ寺院があるアンコール・トムは一辺3kmほどの城壁に囲まれた都城遺跡。この寺院は密林に囲まれ、石材(砂岩)の劣化や植物による侵食などで倒壊の危険性があった。2002年から奈文研を中心とした修復事業が始動。解体修理に向けて三次元測量や石材の保存科学的調査などが行われ、石材を積むための高度な技術を要する作業は左野氏の指揮の下で進んでいる。

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