【赤・青・緑の鬼が大暴れ、巨大な松明に追われて退散!】
東大寺二月堂の「お水取り」と並ぶ古都奈良の2大火祭り、長谷寺(桜井市)の「だだおし」が14日、本尊の十一面観世音菩薩を祀った国宝の本堂で行われた。8日から7日間続いた「修二会」を締めくくる結願法要で1000年以上続く。太鼓や法螺貝が鳴り響く中、3匹の鬼が大暴れ。その鬼を追う巨大な松明から火の粉が舞うたびに、参拝客から歓声が湧き起こった。
「だだおし」の「だだ」については諸説あるが、有力なのが「閻浮壇金宝印(えんぶだごんほういん)=壇だ印」由来説。大導師のお話によると、長谷寺を開山した徳道上人が養老2年(717年)、病で仮死状態になって一時冥土に行った。そこで閻魔大王から「まだ死んではならぬ。西国三十三カ所観音霊場を開基せよ」と命じられ、〝お土産〟に「壇だ印」を頂いた。その宝印を参詣者の額に押し当てて悪魔退散・無病息災を加持祈祷したのが始まりという。
法要が始まったのは午後3時ごろ。本尊を前に護摩を焚いて悔過(けか)法要などが厳かに営まれた。声明、散華、鬼面の加持……。そして突然、太鼓や法螺貝が鳴り響くと、3匹の鬼たちが堂内で大暴れ。僧侶が牛玉札の威力で鬼たちを追い出す。この後、信者や参拝客が手にする牛玉札に宝印を授与した。この間、約2時間。クライマックスは本堂の外に追い出された鬼たちが回廊に登場するこの後だ。
まず緑の鬼が登場。それに燃え盛る大松明が続く。松明は長さが4.5m、重さは100kgを超えるという。火の粉が舞う。「もう一歩下がって」「服が焦げても自己責任ですよ」。マイクで繰り返すお坊さん。続いて青鬼。大声で観客を威嚇する。回廊を蛇行するように進む松明。近づいてくると熱い。後ずさりする観客たち。怖い鬼の姿に泣き叫ぶ女の子。最後に赤鬼が登場した。面の大きさが緑鬼・青鬼に比べると2倍ほどもあるビッグサイズだ。
鬼、松明の後にはバケツを持ったお坊さんが続き、水をまいて消していた。本堂の脇には消防車も待機。祭りの舞台、本堂はなにせ国宝だ。この本堂、落雷で何度か焼失したが、この火祭りで燃えたことはないという。松明の燃えかすは厄除けのお守りになるとか。赤鬼が退散すると、その燃えかすを手に入れようと一目散に駆け寄って、大切そうに持ち帰る参拝客の姿も目立った。