【神戸市立博物館で開幕、中国歴代王朝の一級品168点を展示】
特別展「中国 王朝の至宝」展が神戸市立博物館で始まった(4月7日まで)。中国最古の王朝といわれる「夏」から「殷」、戦国時代、初めての統一王朝「秦」と「漢」、北朝と南朝、再び全土を平定した「唐」、そして「遼」「宋」まで、歴代の文化財168点を時代の変遷を辿りながら一堂に展示している。うちほぼ6割の101点は国宝級の「中国一級文物」。中でも高さが1mを超える巨大仏塔「阿育王塔」(写真㊧)は2008年に南京市の寺院跡から出土したばかりで、日本初公開の超一級品。
阿育王塔の名前は古代インドのアショカ王(阿育王)が8万4000の仏塔を造立した故事にちなむ。これまでに見つかった塔は高さが20cm程度の小型のものばかりだったが、南京にあった古刹長干寺跡から発掘されたこの塔は119cmもある巨大なもの。銀板に金メッキし水晶や瑠璃、めのうなどの宝石で飾り立てており、まばゆいばかりの輝きを放つ。
方形の塔身の上部には五輪と宝珠。4面には「尸毘王(しびおう)救鳩変」(写真㊨)など釈迦による4つの説話が浮き彫りで刻まれている。塔が納められていた石函の銘から約1000年前の北宋時代の1011年に制作されたものと判明。また長干寺に伝わった真身舎利(釈迦の本物の舎利)を納めていたものといわれる。
中国では紀元前2000年ごろから中原(黄河中流域の平原)に初期的な王朝(夏・殷)が誕生。同時期、「蜀」と呼ばれた長江上流域の四川盆地には別の勢力が台頭した。蜀では人の姿をした神や動物を崇め金を多用した。金製の仮面を着けた「人頭像」(上段の写真㊧)は高さ41cmで、四川省広漢市にある紀元前12~10世紀ごろの遺跡の祭祀坑から出土した。突出した巨大な目玉が印象的な「突目仮面」も祭祀用の器物とみられる。
一方、中原地域ではこうした人の形の造形化は見られないそうだ。殷時代の「ト甲(ぼっこう)」は亀の甲羅を加熱し亀裂の形から吉凶を占ったもので、甲羅の周囲に占いの結果などが漢字の祖形に当たる甲骨文字で刻まれていた。紀元前3世紀の戦国時代の「猿形帯鉤(たいこう)」は長さ20cmほどの銀製でベルトのバックルとして使われたとみられる。猿が体をひねって跳ぶ形で、伸ばした左手がベルト穴に通る仕組み。当時の日本はまだ弥生時代が始まったばかり。それだけにその高度な金工技術と意匠の巧みさにはただ驚くばかり。
紀元前4~3世紀の「編鐘(へんしょう)」は11個の青銅製の鐘が大きい順に漆塗りの木枠に掛けられたまま出土した。鐘はたたく場所によって、それぞれ2つの高さの音が出るようになっていたという。8世紀の「供手男女図」は唐王朝の名門貴族の墓から出土した壁画。流れるような線で男女が描かれ、装束の鮮やかな橙や緑の色がそのまま残っていた。