【「子象ババールの物語」とDUO YKEDA共演のピアノ協奏曲2曲】
6月14日から17日間にわたって繰り広げられた「ムジークフェストなら2013」最終日の30日、奈良県文化会館で大阪フィルハーモニー管弦楽団(大友直人指揮)とピアノデュオ「DUO YKEDA(デュオ・イケダ)」によるコンサートが開かれた。今年が没後50年に当たるフランスの作曲家プーランクの特集で、題して「プーランク 躍動のソワレ」。掉尾を飾るにふさわしい華やかで感動的な名演奏だった。
1曲目はプーランクが1945年に作曲したピアノと語りのための「子象のババール物語」。親戚の子どもたちのために、友人ブリュノフ作の絵本にメロディーを付けたもの。ただ、この日はピアノ版ではなく、ジャン・フランセが編曲した管弦楽版を演奏した。語りはカラヤンや小澤征爾に教えを受け、フランス音楽にも造詣が深い中田昌樹が担当した。
子守唄を歌ってあやす母象、その母を撃ち殺され必死に逃げるババール、親切なおばあさんとの出会い、森に帰って新しい象の王様になるババール、結婚式と戴冠式、そしてパーティー……。時に緊迫感たっぷりに、時にユーモラスに、時に華やかに、その時々の情景が目に浮かぶ愉快な演奏だった。
休憩を挟んで2曲目は「ピアノと18の楽器のための舞踏協奏曲『オーバード』」。プーランクは鍵盤楽器のために5つの協奏曲を書いているが、その2番目(1929年作曲)に当たる。ピアノの演奏はデュオ・イケダの男性ピアニスト、パトリック・ジグマノフスキー。オケ18人中11人を管楽器が占めることもあって、小編成を感じさせない迫力のある演奏で、ジグマノフスキーとの呼吸もぴったりだった。
3曲目は「2台のピアノのためのコンチェルト」(1932年作曲)。舞台中央に2台のグランドピアノ。客席から見て右手にデュオ・イケダの池田珠代、左手にジグマノフスキー。「ダン! ドン!」2音の強打に続くピアノの速くリズミカルな演奏で、一気にプーランクの世界に引き込まれていく。美しくなじみやすい旋律もちりばめられ、リズムに合わせてつい体も動く。2台のピアノとフルオーケストラの熱のこもった演奏は圧巻そのものだった。
アンコール1曲目はプーランクの「シテール島への船出」、2曲目はデュオ・イケダの4手連弾、ハチャトリアンの「剣の舞」だった。「剣の舞」は3日前のデュオ・イケダのコンサートでも披露したが、その速い曲を力強く難なく弾きこなす2人の息の合った演奏には改めて驚かされた。真後ろで聴いていた男性も「すごい!」と感嘆の声を上げていた。今年の「ムジークフェストなら」では奈良市内を中心に200を超えるステージで演奏が行われたが、今から来年が楽しみになってきた。