【提灯の旋回や空中投げ…自由に操る妙技に喝采!】
奈良県御所市の鴨都波(かもつば)神社(通称「鴨の宮」)で16日、県の無形民俗文化財に指定されている「ススキ提灯献灯行事」が繰り広げられた。起源は明らかではないが、江戸時代中期にはほぼ現在に近い形態で行われていたといわれる伝統の行事。この日は26本のススキ提灯が出て、太鼓が小気味よく打ち鳴らされる中、次々に勇壮な〝お練り〟を披露した。
ススキ提灯は高さ4.5mほどで重さは約10キロ。竹製の支柱に上から2・4・4の合計10個の高張提灯を3段に取り付け、支柱先端に御幣を飾る。奈良県内では稲積みの形をススキまたはスズキと称し、葛城山麓では五穀豊穣・無病息災を願ってススキ提灯を奉納する神社が多い。その中でも鴨の宮の献灯は県内最大規模。秋田の「竿灯」や富山県魚津市の「たてもん」など大型の提灯献灯行事も、ススキ提灯が〝進化〟したものではないかともいわれる。
各氏子地域に飾られていたススキ提灯は午後6時半頃から市役所そばの葛城公園に集まってきた(上の写真㊧)。7時20分、「ススキ提灯献灯行事」の幟を先頭に神社に向けて出発。花火が夜空を彩り、巡行が進むにつれ提灯のろうそくの灯も明るさを増した(同㊨)。参道両側には多くの夜店。祭り見物客や屋台目当ての若者でごった返し、提灯がそこを抜けるのもひと苦労だった。
宮入り後、名乗りを受けた地区から順番にお練りを披露した。提灯をぐるぐる回しながら、観客すれすれに反時計回りに駆け回る。提灯の支柱を額や顎にうまく乗せると、いっせいに大きな拍手。中にはバランスを崩して提灯が倒れそうになることもあった。お練りが終わるたびに地区の関係者は拝殿に進んでお祓いを受けた。鈴を打ち振って舞う巫女役は地元の女の子たちだった。拝殿の脇では冷えたビールやお茶の無料接待が行われていた。
各地区のお練りの間には男子小学生による子供提灯の披露もあった。伝統継承の狙いもあるのだろう、今年初めての試みという。トリに行われた鴨の宮若衆会の〝妙技〟は見ごたえ十分だった。ススキ提灯を肘で支えたり、横倒しにして早いスピードで旋回させたり、さらには4人が並んで提灯を宙に放り投げて受け止めたり……。まるで提灯の3段跳び! 若衆会のメンバーは今年2月、東京であった「NHK地域伝統芸能まつり」にも出演したそうだ。大太鼓・小太鼓を終始打ち続けた囃し方も見事だった。女性中心だったが、力強く息のあったリズミカルな演奏で祭りの雰囲気を盛り上げた。