【大阪市大理学部付属植物園、ラクウショウ(沼杉)の〝気根〟だった】
大阪府交野市私市にある「大阪市立大学理学部付属植物園」の園内を歩いていると、池の周りに膝こぶのようなものが林立していた。初めて目にする異様な光景。数えてみると、およそ100本もあった。この得体の知れないものの正体は? 説明書きなどで「ラクウショウ(落羽松)」というスギ科の針葉樹の気根(呼吸根)と分かった。
ラクウショウは北米原産で、沼地や水辺を好むことから和名では「ヌマスギ(沼杉)」とも呼ばれる。「生きた化石」といわれるメタセコイアの近縁で、恐竜時代の地層からしばしば化石が出土するという。この気根のそばには直径が1mほど、高さが20m前後とみられるラクウショウの大木が5本生えていた。「落羽松」の名は秋に葉を付けたまま側枝ごと落ちる形が鳥の羽根に似ていることによる。
気根の役目は根に酸素を送ること。湿地では根による呼吸が難しいため、水面や地上に気根を伸ばす。先端が膝こぶのように円錐状になっていることから「膝根(しっこん)」とも呼ばれる。ただ、ラクウショウは湿地のほか普通の土壌でも育ち、土壌の通気性さえ良ければ気根は出てこないそうだ。
気根は高さが10cm~60cmとさまざま。その形も1本ずつ違っていた。石仏のような形、人やウサギの顔に似た形、人の手のような形……。見ていて飽きない。気根を発達させることでその土地・土地に順応し、人類誕生前から今日まで生き抜いてきたラクウショウの生命力にはただ感服するしかない。
大阪の植物園で目にした直後、奈良の馬見丘陵公園の池のそばでも同じような気根を偶然に見つけた。植物園ほどの大木ではないが、ラクウショウに間違いない。小枝の先に直径2cmほどの球形の緑色の実を付けていた。これまでラクウショウの存在に気づかなかったのは単なる無知と無関心からだったのかもしれない。