kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

木彫りのあたたかさ~シュテファン・バルケンホール

2005-05-01 | 美術
1957年生まれのドイツの現代彫刻家のことはもちろん知らなかった。昨年新築したばかりの国立国際美術館はオープニングの「マルセル・デュシャン展」から気合いが入っており、どの展覧会も充実していたから楽しみではあった。が、これほど満足させてくれるとは。
取り立てて造形が突飛なのではない。題材が不可思議極まりないのでもない。でも惹かれるのはなぜか? 例えば白いワイシャツに黒ズボンの男性立像。表情も西欧系白人の普通のそれでしかない。普通の人を象った何枚もの頭部のレリーフ。これも何の変哲もない。技術の高さは垣間見える。西洋木彫でもそう言うのだろうか、一木作りの魅力。大きな木を切り抜き、くり抜き、ノミの跡が生々しい作品群は、題材のあまりにもありふれた日常、無機質な表情、都会的な合理性とは裏腹に木の持つ独特のあたたかさにもあふれている。一体バルケンホールの仕事はどのように表現すればいいのだろう。木を使った具象彫刻とレリーフにこだわるバルケンホールは「1980年以降の欧米美術の主流の外に位置してると見なされることもある」(中西博之国立国際美術館学芸員)そうだが、それもわかるような気がすると同時に、「外に位置して」ほしいとも思う。それは、大規模なインスタレーションなど現代彫刻が置き去りにしていた手仕事の深みを具象彫刻は体現しているからだ。ノミの跡一つひとつ、ああ、バルケンホールさんが作ったのだなあと実感できるから。傾向は違うが、日本でも最近船越桂の作品の人気が高い。船越の作品も表情は冷たい、がやはり雰囲気はあたたかい。木、そして手彫りにはどこか安堵感を必然的に内包しているのかもしれない。バルケンホールを知らなかった人はぜひ触れてほしい。でも触ってはいけないのが日本の彫刻展の掟。少しさびしい。
コメント (2)
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