パリに行った際にゴシックの大聖堂ばかり回って、シャルトルの美しさに驚嘆したが、ストラスブール大聖堂は違う意味で圧倒された。とてつもなく高いのだ。142メートル。中世建造の大聖堂では最高である。
アルザス=ロレーヌ地方というと歴史教科書の必須地名だが、ストラスブールはその中心、国境の町として300数十年間にフランス領、ドイツ領ところころ国が変わり、フランス領に落ち着いたのは第2次大戦後という。文化的にはもちろんドイツが色濃く、シュークルートというソーセージとザワークラフトの煮込みや少し甘い白ワイン、プロテスタントの教会もあり、シェンゲン条約後は両国民が自由に行き来し、欧州評議会や欧州人権裁判所もあるEU統合の象徴のような町でもある。
さて、大聖堂はもともとロマネスク様式とされるが(建設が始まったのが13世紀初め)、ファサードなどどう見てもゴシック様式である。内部のつくりはかなりシンプルで、ステンドグラスも多くはない。また、有名なからくり時計は、映像でその仕組みを見ることは出来たが、実際に精巧に作動するところまでは見られない。いずれにしてもこの大聖堂は1874年まで最高だったというから、その高さこそ最大の特徴で、展望台まで上る予定だったが雨が降ってきたので断念したのは残念であった。高さがこの大聖堂の特徴と記したが、忘れてはならないのが色である。なんでもロレーヌの山の砂岩を使用しているため独特のピンク色、赤茶色をしており、ケルン大聖堂が経年により黒く変色したのを除いて、もともとの白灰色でない大聖堂は珍しいのではないか。入り組んだ町の中心に突然現れる様は、こちらの居住まいを正すほど強力で、近づけばファサードにやはりいる、微笑みの天使たち。大聖堂はやはり美しい。
ストラスブールからTGV(仏新幹線)で2時間半ほど。ロココ様式が残ることで有名な町ナンシーである。ナンシーを現在我々に惹かせるのはロココというより、アールヌーボー・アールデコが花開かせたエミール・ガレらのガラス細工がこの地で次々と生み出されたからに違いない。ガレの作品にあふれるナンシー派美術館は町の中心からははずれたところにあるが、訪れるべき価値のある閑静なたたずまい。ガレらのパトロンであったコルバンの邸宅を改造したらしい美術館は規模こそ小さいが、いたる所にガレの作品とそれらを並べるのに相応しいアールデコの調度品、バロックやロココの時代とは違う過剰さを排したセンスは同世紀の者をして親しみやすい。というのは、アールデコは日本では柳宗悦らの民芸運動にあたり、小さく、しかし確かな手仕事の妙がここかしこに垣間見えるからだ。庭に住んでいるおとなしい黒猫とともに、静かな美が私たちを迎え入れてくれる。
旧市街、観光客でどっと賑わうスタニスラス広場の一角にあるのがナンシー美術館。ルーベンスなど西洋絵画の蒐集もよいが、地下がガレと同じく活躍したガラス工芸作家ドーム兄弟のコーナーとなっており必見。様々な色、いろいろな形そして用途。暗い空間に林立する作品群に息をのむ。ガラス工芸に疎い筆者でもこのコレクションのすごさは理解できる。ガラスで何が表現できるか新世紀の技術で考えられる限りの挑戦をしたドーム兄弟と、その職工たちの熱意が偲ばれる。(ストラスブール大聖堂正面ファサード)
アルザス=ロレーヌ地方というと歴史教科書の必須地名だが、ストラスブールはその中心、国境の町として300数十年間にフランス領、ドイツ領ところころ国が変わり、フランス領に落ち着いたのは第2次大戦後という。文化的にはもちろんドイツが色濃く、シュークルートというソーセージとザワークラフトの煮込みや少し甘い白ワイン、プロテスタントの教会もあり、シェンゲン条約後は両国民が自由に行き来し、欧州評議会や欧州人権裁判所もあるEU統合の象徴のような町でもある。
さて、大聖堂はもともとロマネスク様式とされるが(建設が始まったのが13世紀初め)、ファサードなどどう見てもゴシック様式である。内部のつくりはかなりシンプルで、ステンドグラスも多くはない。また、有名なからくり時計は、映像でその仕組みを見ることは出来たが、実際に精巧に作動するところまでは見られない。いずれにしてもこの大聖堂は1874年まで最高だったというから、その高さこそ最大の特徴で、展望台まで上る予定だったが雨が降ってきたので断念したのは残念であった。高さがこの大聖堂の特徴と記したが、忘れてはならないのが色である。なんでもロレーヌの山の砂岩を使用しているため独特のピンク色、赤茶色をしており、ケルン大聖堂が経年により黒く変色したのを除いて、もともとの白灰色でない大聖堂は珍しいのではないか。入り組んだ町の中心に突然現れる様は、こちらの居住まいを正すほど強力で、近づけばファサードにやはりいる、微笑みの天使たち。大聖堂はやはり美しい。
ストラスブールからTGV(仏新幹線)で2時間半ほど。ロココ様式が残ることで有名な町ナンシーである。ナンシーを現在我々に惹かせるのはロココというより、アールヌーボー・アールデコが花開かせたエミール・ガレらのガラス細工がこの地で次々と生み出されたからに違いない。ガレの作品にあふれるナンシー派美術館は町の中心からははずれたところにあるが、訪れるべき価値のある閑静なたたずまい。ガレらのパトロンであったコルバンの邸宅を改造したらしい美術館は規模こそ小さいが、いたる所にガレの作品とそれらを並べるのに相応しいアールデコの調度品、バロックやロココの時代とは違う過剰さを排したセンスは同世紀の者をして親しみやすい。というのは、アールデコは日本では柳宗悦らの民芸運動にあたり、小さく、しかし確かな手仕事の妙がここかしこに垣間見えるからだ。庭に住んでいるおとなしい黒猫とともに、静かな美が私たちを迎え入れてくれる。
旧市街、観光客でどっと賑わうスタニスラス広場の一角にあるのがナンシー美術館。ルーベンスなど西洋絵画の蒐集もよいが、地下がガレと同じく活躍したガラス工芸作家ドーム兄弟のコーナーとなっており必見。様々な色、いろいろな形そして用途。暗い空間に林立する作品群に息をのむ。ガラス工芸に疎い筆者でもこのコレクションのすごさは理解できる。ガラスで何が表現できるか新世紀の技術で考えられる限りの挑戦をしたドーム兄弟と、その職工たちの熱意が偲ばれる。(ストラスブール大聖堂正面ファサード)
大聖堂の砂岩色、ヨーロッパ製のお洋服によくあるオールドピンクですが素敵ですね~
大聖堂の砂岩色、ヨーロッパ製のお洋服によくあるオールドピンクですが素敵ですね~