ごっとさんのブログ

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結核の薬が認知症の予防薬に

2016-04-29 10:40:28 | 
大阪市立大学などの共同研究グループが、結核やハンセン病の治療薬であるリファンピシンに認知症の予防効果があることを発見しました。

この記事自身はかなり前に出たのですが、認知症に関しては色々な予防効果の話が出ており、あまり注目していませんでした。しかし読み直してみるとなかなか面白い部分もあり、リファンピシンは私にも若干の思い出がありますので、取り上げてみました。

認知症にはアルツハイマー型や前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などがあり、アミロイドベータなど複数の原因タンパク質が特定されています。これらのタンパク質が脳内で「オリゴマー」と呼ばれる集合体を形成して神経細胞を死滅させて発症するとされていますが、詳しい仕組みはよく分かっていないようです。

研究グループは、認知症の予防薬候補を見つけるため、オリゴマーを蓄積しやすいサルの細胞に5種類の薬剤を個別に加えたところ、リファンピシンがオリゴマー蓄積を最も強く抑えることを見出しました。さらにリファンピシンを、アルツハイマー病のモデルマウスに1日1回、1カ月間投与すると、脳内のオリゴマーが目立って減少したようです。位置や空間の記憶実験では、通常のマウスとほぼ同程度の記憶力を持つまでに改善したとされています。

厚生労働省研究班によると、認知症患者は2012年に約462万人。64歳以下の若年性認知症も約3万8千人に上るとされています。我々団塊の世代が75歳以上となる25年には認知症患者は約700万人を上回るとの推計も出ているようです。

このリファンピシンがハンセン病治療薬として使用されていますが、ハンセン病患者は認知症の発症が少ないことから、この薬に注目したようです。こういった流れの研究は昔からあり、結核患者にがんが少ないといった知見から、丸山ワクチンが開発されています。

リファンピシンは、マクロライド系抗生物質の仲間で、放線菌が作るリファマイシンという化合物から変換されたものです。リファマイシンはある種の菌に対してはよく効くのですが、腸管の吸収性が悪く、作用時間が短いという欠点を持っていました。そこでリファマイシンを化学的に修飾して、この欠点をなくそうとしてできたものがリファンピシンです。

当時の第一製薬の私の知人がこの研究をしており、私もリファマイシンをもらって少し研究したりしていました。今回の研究ではリファンピシンは認知症予防にも効果があるとしていますが、こういった抗生物質を予防薬として健康な人に投与するのは、やや問題があるような気がします。