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記憶とは何か-脳のメカニズム

2019-03-26 10:16:09 | 自然
脳は誕生した瞬間から膨大な量の情報にさらされています。自分のことや周囲のこと、学んだことや体験した事すべてをとどめておくのが記憶です。

人が記憶を保持できる期間は、その種類によって異なり、「短期記憶」は数秒から数時間しか続きませんが、「長期記憶」は何年も覚えていられます。また何かをするときに、必要な情報を頭に留める「作業記憶」もあり、電話をかけようとして電話番号を口でくり返しているときなどです。

記憶する対象や、それを意識しているかどうかによっても記憶を分類できます。「宣言的記憶」は意識して経験したことで、ある国の首都はどこかとかトランプの札の枚数、子ども時代の誕生日の思い出など事実や一般的な知識です。

一方「非宣言的記憶」は無意識のうちに積みあがるもので、「手続き記憶」といって楽器を演奏したり自転車に乗ったりできるのはこの記憶のおかげです。好きな食べ物を見ると唾が出たり、怖いものを見たときに緊張するのも非宣言的記憶によります。

一般的に宣言的記憶のほうが非宣言的記憶よりも形成されやすいようです。しかし非宣言的記憶の方が長い間脳に留まりやすく、自転車の乗り方はまず忘れることはありません。

この記憶を理解するには、なぜものを忘れるのかという研究が参考になり、健忘症の研究が盛んになっています。健忘症は2種類あり、逆行性健忘では脳への外傷が起こる前の記憶を失い、前向性健忘では外相によって新しい記憶を形成する能力が失われてしまいます。

これは昔のてんかんの治療で脳の一部を切除したりすることで、研究が進展しました。例えば海馬を含む内側側頭葉を切除すると、子ども時代のことは覚えていても新しい宣言的記憶が形成できなくなります。

脳の中では、全ての記憶が1カ所に集まっているわけではなく、恐れなど感情的な反応は脳の偏桃体に保存され、習得した技術は線条体に保存され、海馬は宣言的記憶の形成保持に関わっています。

記憶は神経細胞(ニューロン)の集団に蓄えられているという考えがあり、これらの細胞は互いに結合し、特定の刺激に反応して集団で「発火」します。同時に発火する細胞が多ければ多いほど細胞同士のつながりが強くなります。

その後も刺激が与えられると、全体が発火するようになり、集団として経験したことを書きとめるようになります。この神経細胞の集団は「細胞集成体」と呼ばれますが、詳しいメカニズムはについてはまだ研究中のようです。

記憶については基本的なことはわかってきたようですが、まだまだ未知の部分が多く、これから面白いことが出てくることを期待しています。