③ のどにもある味細胞 ビ-ルのそう快さ感知
味は、主に味細胞で受容される。「主に」という のは、唐辛子やワサビなどの薬味は、味細胞で は受容されないからである。味細胞が五十から 百個集まると、味らい(蕾)と呼ばれる構造を形 作る。食べ物の中には、ラ-メンや鍋物のように 非常に熱いものや、せんべいのように非常に硬 いものがある。このため、においを受容する嗅細胞は化学的な損傷を 受けるまみだが、味細胞は化学的な損傷に加えて熱や物理的な損 傷の危険の下で働いている。そこで、未らいの中にある味細胞の基 となる基底細胞が、新しい味細胞になり、一定の期間を経て古い細 胞と置き換わる。鏡で自分の口の中をのぞくと、舌の表面は茸のよう な形をした茸状乳頭があるためにざらざらとして見える。また、奥のほ うにあって自分では見ることができないが、有郭乳頭と呼ばれる構造 もある。味らいは主にこれらの乳頭に存在するが、上あご(軟口蓋“な んこうがい”)やのど(咽頭部)にもある。これにより、舌がんの患者が 舌を取り去った後も、完全ではないが味を感じることができる。また、 のどにある味細胞は普通の味だけではなく、二酸化炭素によく応答 する性質を持っている。われわれがビ-ルや、コ-ラなどの炭酸飲料 を飲んだとき、さわやかなのどごしを感じることができるのは、のどに も味らいがあるためだ。味情報は、舌の表面にある味細胞から、舌の 内部を走る舌咽神経や鼓策神経などの味神経を伝わって弧束核と呼 ばれる脳の領域に伝えられる。この情報は、さらに上位の中枢に伝 えられ、おいしさを味わうことができる。 (柏柳 誠・旭川医大医学部教授)