血管の老化進行に拍車=當瀬 則嗣解説
「メタボ」が注目されていますね。メタボとは「メタポリック症候群」の 略称です。単に肥満のことを指すわけではありません。メタボは動脈 硬化を進行させ、心筋梗塞、脳卒中、腎不全などの命にかかわる病 気を引き起こします。では、動脈硬化とは、いったいどうゆうものなの でしょうか?それは文字通り、動脈の壁が硬くなり弾力性を失うこと です。実は、動脈硬化にはいくつかの種類があります。一番よく見ら れるは、粥状(じゅくじょう)硬化という種類のものです。これは、動脈 の壁の一番内側の内膜と、その外側にある平滑筋層の間に脂肪か゛ 蓄積することで起ります。蓄積により反応が起って内幕が厚くなると ともに、表面がデコボコしてくるのです。これを粥腫といいます。文字 通り粥状(かゆじょう)のかたまりで、まるで水道管の内側がさびてデ コボコに盛り上がるような感じです。これを放っておくと内膜が厚くなっ て動脈のスペ-スか゛狭くなり、血液が流れにくくなってしまいます。 こうすると高血圧症を招きます。高血圧は内膜を傷めて動脈硬化をさ らに進めます。また、血液の流れが悪くなると血液が固まりやすくなり ます。さらに進むと血液の固まった塊が動脈を詰まらせたり、塊の一 部がちぎれて奥の血管を詰まらせたりします。こうしたトラブルか゛心 臓に起れば心筋梗塞、脳ならば脳卒中になってしまうのです。粥状硬 化の原因は血液中の脂肪です。肥満、高脂血症、高血圧が含まれる メタポリック症候群は動脈硬化の最大の原因と言えます。ただ動脈硬 化は、一種の老化現象で避けられないと考えられています。つまりメタ ボは血管の老化を異常に進めるものなのです。自分の動脈をいたわる ことが、大切なわけですね。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)