「放牧推進」の浜中町農協組合長 いしばし・しげのりさん
低コストで環境に優しいと注目される「放牧酪 農」。その推進を本年度、浜中町農協(釧路管 内浜中町、198戸)が全国の農協で初めて事 業計画に明記した。「環境と経済の調和は今世 紀最大の課題。放牧は、地球上で酪農家が生きていくための取り 組みだ」ふん尿を自然に土壌還元して高栄養の牧草を育て、放牧 した牛に存分に食べさせて良質の牛乳を-。約10年前から同農協 の姿だ。その実現へ、放牧技術の研究と普及、牧道整備などをさら に進める。千葉工大で管理工学を専攻した異色の酪農家三代目。 旺盛な好奇心で配合飼料の大量給餌など新しい飼い方に挑んでき たが、オイルショック時の飼料高騰も経験。行き着いた結論は「牧草 という地域資源の活用こそ経営安定への道だ」。組合長在任18年。 地域の酪農の未来を語る言葉は明快だ。「浜中の牛乳を求める消 費者がいる限り、浜中の酪農は生き残れる。酪農家が『浜中の牛乳 は100%と安心』と言えることが大事」デ-タ分析に基づく乳質向上 に先駆的に取り組んだ同農協だが、近年は牧草地の森林再生など 環境保全に力を注ぐ。「生乳も産地間競争の時代が来る。環境は重 要な『差別化』のポイント」と。5月で任期七期目に。妻、息子一家と 6人暮らし。搾乳牛110頭は夏場、放牧する。68歳。