芽室農協の挑戦 「販路拡大」 希少性が武器全国へ
十勝管内芽室町のジャ゛ガイモ農家早苗学さん(53)は2月上旬、大手ハンバ-グチェ-ン・ロッテリア(東京)の帯広市内の店舗を訪れ、フライドポテト「産直まるごとポテト」を手に感激した。「自分の作ったイモが大手で芽室産と表示されて売られるなんて初めての経験だった」
「マチルダ」使用
産直まるごとポテトは、各地の特産ジャガイモを皮付きのまま油で揚げた商品。全国でも芽室でしか栽培していない「マチルダ」を使った商品は2月から4月下旬まで、全国のロッテリア524店で販売された。マチルダは収穫後、でんぷん質が大きい。甘みの増す冬場が旬だ。ロッテリアの広報担当者は「マチルダの珍しさを売りにして好評だった」と話す。芽室町農協は1998年、ジャガイモの冷凍食品工場開設に合わせ、加工向きのマチルダの栽培を始めた。ただ直径7㌢程度の網目からこぼれて畑に残る「野良イモ」が多く、ピ-ク時に100㌶を超えた作付け面積が5年前には67㌶にまで減少。道内の他の数ヵ所の産地は加工工場がないこともあって次々と作付けを中止し、芽室だけが残った。
作付け100㌶超へ
輸入に押される国産ジャガイモの生き残りには、栽培技術だけでなく、販路の開拓も重要だ。農協はマチルダの希少価値に着目。2006年、キャラクタ-「まちるだいすけ」作製し、販路拡大に乗り出した。ロッテリアによる商品化はその成果の一つだ。さらに、年間約160万人を動員する札幌・JRタワ-内の複合映画施設(シネコン)「札幌シネマフロンティア」は3年前から、マチルダを使ったフライドポテト「だいすけフライ」と、ゆでてバタ-を載せる「バタ-だいすけ」を販売。だいすけフライは昨年、5万食を売り切り、輸入食品が主力の映画館業界に風穴をあけた。売店では昨夏から、「まちるだいすけ」が登場するCMも放映。伊豫田広行常務(60)は「映画館はお子さんも多い。地元の安全でおいしい食材を食べてほしかった」と喜ぶ。同館の取り組みは全国的に注目され、マチルダを使ったフライドポテトは今春から道外の大手シネコンでも試験販売が始まった。マチルダの本年度の作付けは再び100㌶を超える見込みだ。芽室町農協の矢野征男組合長は「菓子などイモの用途は拡大する一方。芽室から、消費拡大の取り組みや栽培技術を広め、全道の産地と一緒に頑張りたい」と力強く語った。