゛まるかん人゛プラトーク

元気とキレイを追求すると、人生は楽しく過ごすことと・・・!?

企業が変える農<中>

2009-07-21 17:33:46 | 社会・経済

受け皿 畑違いの参入危うさも

ところと゜ころ実が色づくイチゴの苗がビニ-ルハウス内に整然と並ぶ。渡島管内八雲長の農業生産法人、ト-ヨ-ファ-ムの従業員が、余分な花や実を摘む作業に追われていた。「府県産が減る夏場は高値がつくんです」。収穫を間近に控え、茂木貴史社長の言葉に力がこもる。

100_7213 雇用維持が狙い

ト-ヨ-ファ-ムの母体は同町に本社を持つ東陽建設。公共事業の縮減が顕著となった2000年、事業多角化と従業員の雇用維持を目的に設立した。社員2人とアルバイト3人は同社出身で、パ-ト10人は新規採用した。大手洋菓子メ-カ-にも出荷されるイチゴや、スイ-トコ-ンの生産も軌道に乗って黒字化し、昨年の売り上げ高は2千万円。今後はイチゴジャムなどの加工事業にも乗り出す。かつて北海道の“主力産業”とも言われた公共事業だが、本年度の道開発予算は5855億円と10年前に比べて4割も減少した。仕事を失った建設業就業者の受け皿として注目されているのが農業だ。昨年9月現在、道内で農業に参入した企業の45%、64社を建設業関連が占めている。建設業以外にも、障害者の雇用確保を目指す社会福祉法人の参入が増えるなど、不況で雇用環境が悪化する中、農業への期待は強まるばかり。企業参入のハ-ドルを下げた改正農地法にも、地域の雇用を創出する狙いが込められている。

全国の6割赤字

だが、文字通り「畑違い」の企業による農業への挑戦には大きなリスクがつきまとう。道北の建設業者は昨年11月、葉物野菜サンチュのハウス栽培から撤退し、パ-トも解雇した。地元の市場に出荷していたが、安値に悩まされたうえ、「予想外の病気や暖房用の燃料高騰で、採算が合わなくなった」という。条件の悪い農地に苦労する企業も多い。農業に参入した全国の企業の6割強が赤字という調査結果もある。企業の参入が増えても失敗が相次ぐなら、地域の失業や農地荒廃はかえって増えてしまう。規制緩和はそうした負の側面を併せ持つ。03年に農業参入した橋場建設(名寄市)は、20棟以上のハウス栽培でトマトを大量生産し、高付加価値のトマトジュ-ス向けに出荷する事業モデルを確率し、ようやく、採算ラインが見えてきた。だが、参入当初はナガイモやブロッコリ-の生産が頓挫するなど試行錯誤を繰り返した。橋場利夫会長は「安価な輸入品など、食材があふれる時代に、どこでもやっているような方法では成功できない」と言い、地域の農業関係者らの助言に感謝する。改正農地法は企業や地域に「ばら色の未来」を保証するものではない。企業の粘り強い努力と周囲の協力があってこそ、果実がもたらされる。

メモ日本の農業構造 農林水産省によると、2008年の全国の農家戸数は30年前のほぼ半数の252万1千戸、耕地面積(耕作放棄地は含まない)も16%減の462万8千㌶と縮小し続けている。ただ、道内は農家戸数が30年前に比べ、6割減の5万2千戸となったが、高地面積は116万㌶と逆に4%増えており、大規模農家への農地の集約が進む。専業農家が多い道内は、優良農地が起業に回りにくく、参入が失敗する一因となっている。

コメント

企業が変える農<上>

2009-07-21 16:03:33 | 社会・経済

流通競争 農場直営JAに危機感

100_7212 東京都心から東へ60㌔。千葉県富里市のなだらかな広陵に広がる4・5㌶の畑が「野菜は市場や農家から仕入れるもの」というス-パ-の常識を変えるかもしれない。「セブンファ-ム富里」。大手ス-パ-、イト-ヨ-カ堂(東京)が野菜を自ら生産する目的で昨年8月に設立した農業生産法人だ。今年は県内9店鋪にトウモロコシ、ブロッコリ-など320㌧の出荷を見込む。「小売りと農業生産が連動するメリットは大きい」。同ファ-ム開発担当の久留原昌彦さんが手応えを語る。ス-パ-が直接手がける農場なので、仕入れの際の市場手数料は不要。店から出た食品廃棄物を堆肥にして使い、通常なら規格外の野菜も店と連携して格安価格で売りさばくため、無駄がない。コストが安く、環境にも優しい「循環型農業」の理想へ踏み出した。同社は将来、道内などでも農場開設を検討、自社生産の野菜の扱いを増やす考えだ。

法改正が後押し

担い手不足が深刻化し、耕作放棄が埼玉県の面積とほぼ同じ約39万㌶にも達する日本の農業。一方でイト-ヨ-カ堂のように、企業の資本力とノウハウを投入し、農業ビジネスの可能性を切り開く事例も増えてきた。年内にも予定される改正農地法の施行は、このような企業の動きを後押しし、農業を再生に導くことに狙いがある。昨年の中国製ギョ-ザ中毒事件や輸入穀物高騰で、食糧自給の重要性が再確認された時期の法改正だけに、流通・外食企業の参入はさらに加速しそうだ。檜山管内せたな町などに農場を持つ居酒屋チェ-ンのワタミ(東京)は、国内の自社農場を2013年までに現在の1・3倍の600㌶に広げる計画。生協ひろしま(広島県廿日市市)は10年度に農業生産法人を設立、住友商事(東京)も農業参入を検討し始めた。

付加価値を模索

こうした企業側の動きにJA(農協)グル-プの危機感は強い。セブンファ-ム富里のケ-スでは、地元JAも出資し、応分の配当を得る形になってはいる。ただ、企業参入が加速すれば、競争力のない既存農家の作物をJAが集荷して企業へ-という農産物流通の仕組みも形骸化し、JAの存在意義まで失いかねない。全国農業共同組合中央会(JA全中)は組合員間の農地賃借の仲介業務を強化し、企業への農地流出を食い止める一方、「組合員の農産物の付加価値を高める流通体系の確立が必要」としてグル-プの加工、レストラン事業を拡充し、新時代に備えようとしている。JAの危機意識が企業参入の妨げではなく、企業との健全な「流通競争」につながれば、日本の農業の足腰もより強くなるはずだ。

    ◇

改正農地法と同関係法が6月に成立し、企業による農業参入の門戸が大きく広がることになった。農業にビジネスチャンスを求める企業の戦略とともに、農業外からの参入を機に変わりゆく農業の姿をリポ-トする。

メモ企業の参入条件  企業やNPO法人が農業参入する方法は主に①農業生産法人を設立②市町村が区域指定した農地を賃借して直接参入-の2種類あり、道内でしているは①で129社、②で12社が参入している(昨年9月現在)。改正農地法などは①について、企業の農業生産法人への出資制限を現行「10%以下」から「25%以下」に緩和。②についても、条件の悪い農地が割り当てられやすい区域指定を廃し、賃借期間も現行「最長20年」から「同50年」に延長した。

コメント