東京理科大など マウス使い世界初 食物かめ、感覚も
食物をかめる硬さで、痛みなどの感覚もあるほぼ完全な歯をマウスで再生させることに、東京理科大と東北大、東京医科歯科大の研究チ-ムが3日までに世界で初めて成功した。将来、「人工多能性幹(ips)細胞」などの幹細胞を歯のもとに変え、失った歯の跡に移植して再生させられれば、入れ歯不要の生活が実現すると期待される。
この成果は、東京理科大の辻孝教授らが2007年2月に発表した「器官原基法」の応用。細胞を試験管内で培養し、立体的で機能する臓器の形成を目指す技術で、臓器置換再生医療の実現に一歩前進した。次は毛髪の再生にも取り組む。論文は米科学アカデミ-紀要電子版に掲載される。辻教授らは、マウス胎児から歯のもとの細胞を採取し、器官原基法で歯の原型(歯胚)にまで成長させた。次に、生体マウスの上あごの臼歯を抜いた跡にこの歯胚を移植すると、約50日間で反対側の歯とかみ合うように成長した。再生歯は通常より小さいが、エナメル質や象牙質の硬さは同等。根元を包む歯根膜も、歯の位置をずらす矯正治療実験の結果、周囲のあごの骨と連携して機能していることが分かった。さらに、神経が歯根膜や歯髄に入り込み、刺激を与えると脳に痛みとして伝達されることを、神経の染色やたんぱく質分析で確認した。この実験は今春までに60匹でおこない、34匹で成功。成功率は現在、8割に上がった。辻教授は、大塚化学か゛昨年設立したベンチャ-企業「オ-ガンテクノロジ-ズ」(東京都千代田区)の役員も務め、産業化にも取り組んでいる。