酸素を作り出した生物 30億年前の姿、今も豪州に
46億年前に地球が生まれた当初は、まるで現在の太陽のように高温でとても生物が生きていられるような星ではありませんでした。10億年以上という長い時間をかけて地球の表面は冷え、やがて海ができ、その中に初めて生物が出てきたのです。非常に原始的な生物で藍藻の仲間と考えられています。この藍藻の仲間は、現在でも他の生物では生きられないような劣悪環境で生活をしています。この藍藻は地球に大きな変化をもたらしました。酸素を作りだしたのです。それまで空気中にほとんど酸素がありませんでしたが、小さなこの生物などの働きで徐々に酸素の量が増え、今のような大気中の21%も占めるようになったのです。この藍藻仲間は、ゆっくり酸素を出すとともに数を増やしました。その時、海中の砂などが一緒に塊になって、マッシュル-ムのような形を作り、1年間に0・3㍉という大変ゆっくりとした速さで成長を続けたのだろうということが化石などから分かっています。これをストロマトライトと呼んでいます。このストロマトライトは、現在でも西オ-ストラリアのハメリンプ-ルという場所で、まるで30億年前と同じような状態で生きたまま観察できます。地球上の他の場所では見ることのできないストロマトライトは深い入り江で他の生物が入りにくく、環境の変化が少なかったハメリンプ-ルでだけ、昔のままの姿で生き残ったと考えられています。現在の地球には酸素を放出する多くの植物がいますから、ハメリンプ-ルのストロマトライトが生成する酸素の量は微々たるものですが、30億年前の地球の姿を残しているこの場所は、この先もずっと今の状態を維持していけるようにと1991年に世界遺産に登録されました。(青野裕幸・江別市立大麻東中教諭)