自律神経が休息モ-ド=若倉 雅登解説
「朝起きると、いつも結膜炎になっているんです」 そんな症状を訴えてBさん(35)が来院した。だが、診察しても結膜炎の所見はまったくない。 「症状は朝だけですか」 「ええ。顔を洗ったりしたあと、しばらくすると治ってきます」 これで察しはついた。 「眠くなると誰でもまぶたが下がって、目が充血して涙も出るでしょう。それと同じ現象です。朝起き立てはまだ休息用の自律神経が勝っているので、まるで結膜炎のように充血し、腫れぼったいのです」自律神経には活動用の「交感神経」と休息用の「副交感神経」があり、ちょうどシ-ソ-のような拮抗した関係になっている。活動中は交感神経の働きでまぶたが上がり、瞳も開いてやる気満々、目がぱっちりとして輝いている。ところが、眠くなるとまぶたが落ちて、瞳も小さくなる。「運転したり、授業を聞いたりしていて眠くなるのは休息用の神経が勝ってきいいるときで、活動用の神経に切り替えのために生じる生理現象なのです。しかも、『あくび』は自分の意志ではできませんから、そんなときはつねったりひっぱたいたりして、交換神経を起こすしかないのです」そんな私の雑談に興味深そうに耳を傾けていたBさんは、「おもしろいですね。帰って子供に教えてあげよう」と、早朝限定の結膜炎のことなど忘れて、勇んで帰って行った。(東京・井上眼科病院長)