これまでに、肝炎を引き起こすウイルスには、A、B、C、D、E、Gの計6種類があることが分かっています。しかし、これら既知のウイルスがないのに輸血などで肝炎になる患者がまだ数%いますし、また、肝硬変や肝ガン患者の5~10%、劇症肝炎患者の40%が、その発病原因が不明です。現在、その病原ウイルスが追求されていて、その有力候補に浮上しているのが「TTウイルス」です。 TTウイルスは、日本人の研究者によって1997年にその存在が明らかになりました。TTウイルスという名前は、このウイルスが発見された血液を採った肝炎患者のイニシャルを取ったものです。 このウイルスが発見されたあと、日本国内の研究者が調査したところ、劇症肝炎や慢性肝炎の患者の約半数、糖尿病透析患者の約4割、薬物乱用者の約3割がこのTTウイルスの感染者でした。また、日本赤十字社が、1977年来凍結保存しておいた非加熱製剤を調べたところ、それらの製剤からも発見され、このウイルスが20年も前から広まっていたことがわかりました。今では、日本人のほとんどがこのウイルスに感染していることがわかっています。最近、このウイルスのすべての遺伝子情報が解読され、遺伝子の型の種類が大変多くて、19種類もあることがわかりました。その中で、「遺伝型Ⅰ」という特別の遺伝子情報のTTウイルスを持った人だけが肝炎を発病し、他の遺伝型は肝炎の発症原因にならないということです。大人の遺伝型Ⅰの感染率は、日本で約10%、アフリカで約50%、欧米では低くてイギリスで2%、と推定されています。
- 肝炎には、A、B、C、D、E、Gの計6種類
- A型、E型は肝炎のウイルスが口から入ると感染し、B型、C型、D型、G型は血液を通じて感染します。
- B型肝炎は、ウイルスがいる状態(キャリア)でも、発病しないことが多いのですが、肝炎が慢性化したり、劇症肝炎を起したりする場合もあります。C型肝炎は慢性化すると、肝硬変となり、肝臓ガンになる場合があります。
- 肝臓は悪い部分があっても、なかなか症状があらわれないため、「沈黙の臓器」といわれます。