胃がん再発防止 北大病院など 発症3分の1に
ヘリコバクタ-・ピロリ菌に感染した早期胃がん患者がピロリ菌を除 菌すると、除菌しない場合に比べ再発率が三分の一に減ることか゛ 浅香正博・北大病院長らの臨床試験で分かった。患者を無作為に 除菌と非除菌に二分し、他の要因を排除した世界初の試み。ピロリ 菌を除菌すれば、胃がん発症率で予防できることは既に分かってい るが、再発予防にも効果があることが裏付けられた。英医学誌ラン セットに発表した。胃がんは再発率が5-20%と他のがんと比べ比 較的高く、ピロリ菌を除菌しても再発はゼロにはならないが、防止効 果があるとみられていた。ただ、どの程度の効果があるかを証明する 臨床デ-タはなかった。研究には、北大病院を含む国内51医療機 関が参加。2001年-03年に早期がんを内視鏡で切除した患者50 5人を対象に、本人の了解を得た上で255人は除菌、250人は除菌 せず、以降三年間、内視鏡で毎年再発の有無を確認した。この結果、 再発は除菌者が9例に対し非除菌者は24例で、再発率に約3倍の 開きが出た。除菌者が再発した9例のうち3例はは除菌失敗が原因と みられるため「実際は3倍以上の効果があるとみられる」(浅香院長) という。除菌効果が確認できたため、06年に非除菌者も除菌し臨床 試験を終えた。再発者はいずれも早期段階で治療された。従来の研 究では、各医療機関の独自基準による診断、治療の結果を事後にま とめたデ-タしかなく、除菌以外の要因が排除できなかった。今回は 参加医療機関が事前に診断基準や治療法を統一。患者を無作為に 除菌と非除菌に割り当て、両グル-プの性別や年齢、がん進行度な どの差をなくすことで、再発率の差に他の要因が入り込む余地をなくし た。国内の胃がん発症者は年21万人で年5万人が死亡している。
※ヘリコバクタ-・ピロリ菌 1982年に発見された、らせん状(ヘリコ) の細菌(バクタ-)のこと。胃の粘膜、特に胃の出口付近の幽門部(ピ ロリ)に生息する。かって、胃潰瘍(かいよう)や胃がんは、ストレスや生 活習慣が主因とみられていたが、ピロリ菌か゛胃の粘膜を破壊して引き 起こすことが分かってきた。主に上下水道の未整備など、不衛生な環 境で3歳までに感染する。国内では、60歳以上の80%が感染してい る一方、20代以下は5-10%と低い。