あしたはきっといい日

楽しかったこと、気になったことをつれづれに書いていきます。

消費

2009-07-28 19:11:13 | 本を読む
消費は持続的な社会のために必要だと思う。もちろん、それが浪費であってはならないのは当然だ。

歳がほぼ一回り下の仲間と消費について話をしていて噛み合わなかったのを思い出したが、彼はこの『シンプル族の反乱』に出てくるまさにその人だったのだろうか。

とはいえ、自分もユニクロや無印良品を好むし、乗っている車もシンプルなコンパクトカー…って、車を所有していることが、シンプルを極めるのとは反対側なのだろうが。

この本を読んだ後でも、いや、だからこそ、改めて消費の大切さを認識した。ただ、それは物欲を伴うものではなく、心を満たすものでありたい。

可処分所得が減った今だからこそ、そんな気持ちを大切にしたい。

きのうの神さま

2009-07-25 10:30:22 | 本を読む
映画『ディア・ドクター』を観ていて、幾つか気になるシーンがあった。違和感はなかったし、むしろそんなシーンが意味はわからなくてもスパイスになった気がする。

監督の西川美和さんが書かれた 『きのうの神さま』は、映画公開よりずいぶん前に購入していたが、映画を観てから読もうと、ずっと開かずにいた。

5章それぞれに異なる主人公が描かれている。1人を除き、彼らは映画の登場人物である。その1人も、登場人物と繋がりを持っているらしい。

映画の余韻が残っていたからか、眠りにつくまでに読み終えたというか、読み終えるまで眠れなかった。

読み進めるうちに、映画に散りばめられた何気ないシーンにエピソードが引っかかっていく。そのシーンだけでなく、彼らの台詞の裏側も透けてくるように感じた。

中でも、井川遥さんが演じたりつ子という女性の子供時代と、笑福亭鶴瓶さんが演じた主人公の伊野…らしい人物を弟の視点から描いた章は、僕の心にストンと落ちた。

結局、本を読んだ後に映画を観ても良かったと思えた。本だけでも、映画だけでもいいだろう。僕もまた観に行きたい。

ディア・伊野治さま
あなたのような人の居場所がこの世の中にあるといいですね。でも、多分あなたは、そこに居心地の悪さを感じるのでしょう。
でも、今の時代はあなたを必要としています。だから、「必要悪」の「悪」を取り除くのは僕らの役割だと思います。
でも、お父様はきっと喜んでくれるでしょう。互いに不器用で、うまく伝わらなかったとしても…

あの空の下で

2009-04-27 07:32:18 | 本を読む
長期連休くらい、海外にでも行けばとも思うが、オンシーズンの料金が心配だったりして踏ん切りがつかないまま、未だに国内専用である。いや、最近は旅行に行く機会そのものが減っている。そんな中、今年のゴールデンウイークもまとまった読書を計画した。

まずはじめに読んだのが、吉田修一さんの『あの空の下で』だ。
ANAの機内誌に掲載された、短編小説とエッセイをまとめた本で、そう言われれば、いずれの作品も国内線で落ち着いて読むにはちょうどいい長さの作品だ。そして、ちょうどよく読ませるリズムがある。

さて、いずれの作品でも人が移動している。機内誌だからと言って、すべてが飛行機に乗っているわけではない。

人の心は移ろいゆく。たとえ一つの場所にいても、あの時の自分と今の自分では全く違う。それは、福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』的な、生物学的アプローチではなく、あくまでも人の心として。でも、結局辿って行けば一緒なのかもしれない。

吉田さんが旅した場所から選ばれた4か所についてのエッセイを含め、家の中にいながらあちこち旅した気分になったりしたが、やはり、自分自身で行ってみたいと、改めて思った。

花笑鉄心

2009-04-10 07:39:28 | 本を読む
職場ではあまり笑うことがない。いや、それどころか話をすることもほとんどない。どちらが先か、笑顔もいつの間にか消えていた。本当は笑顔で話すのが好きなのに、これではどちらが素の自分なのだか自分でもわからなくなる。

先日書店で手にした浅田次郎さんのエッセイ本『ま、いっか』を読み終えだ。本を閉じると、そんな気持ちが無意識にこの本を選ばせたのだろうかと、不思議な気持ちになった。

女性誌に連載されたものを中心に、浅田さんの生い立ちや経験から導き出された文章が心の奥深くに届く。表紙にも記された「自分のために笑え。人のために笑え。」という言葉は、最後に掲載されたものの中にあったが、その一節に思わずハッとした。

開き直る訳ではないが、この言葉をすぐに実践できるかは自信がない。だが、背筋を伸ばし、口角を上げて前へと進んでいこう。

求める

2009-03-30 09:18:27 | 本を読む
今朝、少し遅めに朝食をとり、パソコンからメールを一通打ち終えると、テレビのニュースで「草食系男子」と、「恋活」に励む女子が紹介されていた。NHKでもそんなことを紹介するんだなあと思ってみたが、同局で始まる新ドラマがそうしたテーマだったことを思い出した。

『戸村飯店青春100連発に』続き、瀬尾まいこさんの本を読んだ。
『卵の緒』は、彼女のデビュー作だそうだ。血のつながりのない親子の心の繋がり、愛情を描いた表題作と、やはり血のつながらない姉弟の、ともに過ごした四季を描いた『7's blood』のそれぞれに、彼女の優しい、それは表面的でない優しい気持ちが溢れていた。人は一人では生きていけない。誰かに支えられ、また誰かを支えて生きて行くもの。そしてそれは、そうしようと意気込んでではなく、むしろさらりと、自然になされるものなのだということを改めて考えてみた。

草食系でもなく肉食系でもなく、僕はただ誰かと繋がっていたい。

青春100連発!

2009-03-14 09:00:17 | 本を読む
一冊の本に、こんなに笑わされ、そして泣かされたのは久しぶりだった。
それより、「笑う」と「泣く」の同居の仕方がなんだかとても面白かった。

瀬尾まいこさんの『戸村飯店 青春100連発』を読んだ。
昨年春に出た当初から気にはなっていたものの、そのタイトルに何だかちょっぴり引いてしまっていた。結局今年に入りまとめ買いの中の一冊に入れたのだが、とんだ大当たりとなった。

さて、物語は大阪の下町(?)にある中華料理屋の、一つ違いの兄弟のある一年間を綴った内容だった。6つの章を、兄と弟の視点から交互に描いている。
兄の日常を描いていても、弟の思いを描いていても、それぞれ逆の視点からお互いの姿がうまく浮かび上がってくる。

終盤に思いもよらない展開となる。そこにぐっとくるものがあったが、これから読む人にもそこを味わってほしい。

今さら「青春」でもないが、それに似たようなことを今もやっているからだろうか、不思議と距離を感じなかった。だが、それははたしていいことなのか…

いずれにしても、最近読んだ本の中ではベスト3に入るだろうか。

まだまだ

2009-02-27 21:49:51 | 本を読む
最近、ふと自分より一回り以上若い仲間と一緒に何かをすることに、もうじき限界がくることを考えていた。今度はどんな引き際がいいだろうか。寂しさを感じつつ、そんなことを考えていたとき、この本を読み始めた。

石田衣良さんの本は初めて読んだが、テレビ番組のコメンテーターなどとして発せられるそのオピニオンには、共感できるところが多い。

主人公は、世間的には負け組に属するだろう40歳の男性。不器用な生き方をしているところが共感できる。そんな彼が、自分自身の意図とは違うところで何かを実現させていくストーリーは、そんなことはないだろうと思いつつ、単純にフィクションと片づけられない。それはきっと、僕が頭の片隅で描いていたことに近かったからだろうか…

その前に読んだ本の後味の悪さを消し去ってくれただけでなく、前に進む気持ちを後押ししてくれた。読み終えたのが谷根千の北の縁を走るバスの中だったのも、何か皮肉めいていた。

種の保存

2009-02-05 07:39:43 | 本を読む
先週、ある本を買い求めに行くと、大崎善生さんの新刊本が並んでいて、迷わす手にとった。

『ディスカスの飼い方』は、表紙を飾る熱帯魚の飼育法に関する本ではない。もっとも僕は、手がかかるとか、お金がかかるといった理由で、ペットは飼わないことにしている。その一番の理由は、他の生き物の生に責任を持ちたくないからだ。

『パイロットフィッシュ』では、細かな熱帯魚飼育の描写が、物語全体に染み渡る効果を持っていたが、この作品ではもっと深く、ディスカスという飼育が難しい、だからこそ人々の意欲を掻き立てる魚の飼育について丹念に描かれている。それは、「そんな魚がいるのか」という程度の僕にも図や写真がなくても何となくわかるくらいのものだった。が、飼育の解説書ではない。

何かを極めていく中で、様々なことが見えてくる。主人公は、ディスカスに深く関わっていくことで失ったものを、ディスカスの飼育を究めていくことで強く認識した。

僕は何かを究めたという経験がない。いつも引き返す道を探し、それがあることで安心している。他の生物の生に責任を持ちたくないのも、そんな自分が選んだ立ち位置によるのだろう。好きな人の心を引き寄せたいという望みも、いや、好きな人が誰かすらも見えない気がする。まあ、それは大きな視点から見れば「種の保存」に適ったものなのかもしれない…

移ろいゆく季節

2008-07-03 23:04:45 | 本を読む
デパートに寄るのは楽しい。買うものは少ないが、何となく店内を歩くだけでも楽しい。
さて、どのデパートが好きかと聞かれたら、今は迷わず「西武」と答える。なぜだろうか。子供の頃から行き慣れているというのもあるが、ある時期、単に流通グループという枠組みを大きく超え、僕らの文化レベルを引っ張って行ったそのイメージが今も強く残っているからだろうか。

その、セゾングループを率いた堤清二氏こと、詩人の辻井喬氏と、東京大学大学院教授で、ジェンダー研究で知られる上野千鶴子氏との対談による『ポスト消費社会のゆくえ』という本を読んだ。

経営者が詩を紡いだのか、それとも、詩人が経営に向かっていったのか。僕も含め、多くの人は前者だと考えていたのだが、ご本人は後者を自覚していたようだ。
結局、自らが育て上げたグループの、その解体まで付き合った堤氏の生涯は、父親の急死により社長となり、結局はそこから離れて作家として活躍し、生涯を終えた星新一氏と対照的に見える。でも、堤氏は経営に携わることで、自らの感性をもって経営に向かい、そして我々に豊かな文化を提供する役割を担うことで、彼の持つ理想を具現化していったのだろう。

対談は、上野氏のつっ込みに辻井氏がやんわりと答えるというリズムで続いていく。いくつかの印象的なエピソードが続く中で、経営者としての喜びや苦しみが見えてくる。それだけではない、僕らの行く先についても、両氏は示唆に富んだ思考を広げている。

グループ会社のパルコはテナント業だったのだと、この本を読んで初めて認識した。まあ、流通業界の仕組みは僕には縁遠いものだった。
そう言えば中学の頃、意味のわからないことを「パルコ」と言っていた。

そんなことを思いながら見上げると、マツケンが走っていた。

いのちを受け取る

2008-04-27 22:30:29 | 本を読む
「自殺は伝染する」と、とあるホームページに書かれていた。
自殺を考えたことがないかと聞かれれば、正直に「あります」と答える。そのとき、その気持ちを思いとどまらせたのは何だったのだろう。残された家族に迷惑をかけたくないのと、生きることへの未練だろうか… 僕の命は、僕だけのものではない。ありきたりの言葉だが、ある本を読んでそれを実感した。

今年に入り、書店の店頭にいつも平積みされていた、小川糸さんの『食堂かたつむり』を買ったのは先々週になってからだった。そのタイトルと、ほのぼのとした感じのイラストに、映画『かもめ食堂』のイメージをダブらせたのは僕だけではないと思う。

ある出来事がきっかけで故郷に戻ってきた主人公が、自分の持つ唯一といえる能力である「料理づくり」によって独り立ちしようと歩き始める。けれども、それは決して独り立ちではなく、たくさんの人たちによって支えられていたということにやがて気付き、そしてそこからまた歩き始めるといた物語である。

僕も、一人で生きているという錯覚に陥ることがある。けれども、人は決して一人では生きていけない。無人島などでサバイバルのように生きている人もいるが、それは、生き物として生きているのであって、人として生きているのとは違う。僕らは、命をつないでいくリレー走者でしかない。そう、それは人の命だけではなく、他の動物や植物などの命を食することによって、さまざまな生命を受け継いでいる。

先週初めに、主に電車の中で読んでいたのだが、周囲にいる人々の視線を思いつつ、あふれる涙を堪えずに読み進めた。

先週末に参加したイベントや、ドラマ『ちりとてちん』に通じるものを感じたことが気持ちを共振させたのは事実であるが、それ抜きでも、心がホッと温まる作品だった。そして、誰かはわからないが、その誰かに対して腕をふるった料理を振舞いたいと思った。

自殺をするというのは、そうした命のバトンリレーを途切れさせてしまうものだ。確かに苦しいことはある。死んでしまったほうが楽だろうと思えるときもある。でも、違う道を歩くという選択もある。孤独に押しつぶされそうな夜もあるけれど、僕も、そしてあなたもきっと、一人ではない。だから…