あしたはきっといい日

楽しかったこと、気になったことをつれづれに書いていきます。

植物の祭典

2023-11-05 11:14:09 | 旅する

三連休の初日、小石川植物園で開催の小石川植物祭を訪ねた。

動画はこちら

このイベントのことを知ったのは、6月に初めて小石川植物園を訪ねた時だった。さて、どんな祭なのだろう…と思うとともに、植物に対する興味が湧いたこともあって、さっそく予定を入れた。

植物園に向かう途中、紫色の美しい花を見かけた。

しばし眺めていると、蜜を吸う鳥?が。

これまでも何度か出会ったことがあるけど、いったいこの生き物は何なんだろうと調べてみると、蜂雀(ホウジャク)という蛾の仲間のようで、なるほど胴体のフサフサした感じがモスラ系というか、何となく納得した。

普段は開いていない入口から植物園に入ると、既に多くの人が集まっていた。皆さん、日頃から植物に関心を持った方々なんだろうなと思うとともに、俄かな自分に若干恥ずかしさを覚えながら。

園内各所にイベント出展ブースが設置され、それぞれ興味深い企画を提供されていた。

すべてを体験するには時間も…も足りないこともあり、いくつか絞り込んで体験した。中でも「旅する木々の物語」という園内ツアー企画は、ガイドを務めていただいた崎尾均さんのお話がとても興味深く、生命を繋いでいこうとする植物の意志のようなものを感じながら愉しんだ。

スズカケノキやプラタナスの、ラクウショウとメタセコイアの、など、植物の生い立ちや似て非なるものなどのお話を伺いながら園内を散策するのは、とても贅沢な時間の過ごし方だなって。

そして、ふだんは石彫をされている作家さんによる、園内で出た木材を用いた木彫も、その表情が魅力的で、作家さんに伺うお話も興味深かった。

そう、動画で紹介したけど、園内を散策中にカマキリを持った子に声を掛けられた。ほんの短い時間だったけど、なぜ僕に声を掛けてくれたのかとか、その様子ってどんな風に見えるのかな…とか、考えてみるとおもしろいけど、とても愉しいひとときだった。

それと、こちらは動画に残すことはなかったけど、植物園を出たところでベンチに腰掛け、近くにいた方に会釈をすると、そこから会話が始まり、なぜかその方のお知り合いが東大でシダの研究をされていたといったお話を伺った。研究では飯は食べていけないと最近民間企業に就職されたというところまで伺いながら、その方がプライベートなどで情報発信されたら面白いのではとお伝えした。SNSならすぐにでもできるだろうし、いずれ出版とか… せっかく得た知識をアウトプットしてより一層自分のものにする機会があればいいなって思う。シダってデザインのモチーフになることもあるから、そういうところに繋がっていくこともあるかもしれないし、広がりを愉しめたらいいな。

そんなこんなで、園内で5時間近く過ごしたけど、足には疲れがきたものの、充実した時間を過ごすことができた。

また来年も来てみたいし、植物園には季節ごとに訪ね、季節ごとの魅力を感じたい。

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気分転換

2022-05-01 13:00:01 | 旅する

日々、心と体に生じた歪のようなものが積み重なっていく。週末に仕事の遅れを挽回しようと思うものの気持ちが乗らず、歪は解消しないばかりか余計に大きくなっていく。最近はそんなことの繰り返しだ。気持ちだけでも切り替えられたらと遠出をしようにも、年老いた母を一人家に置くのが不安でそれも叶わない。

連休初日、午後から雨が降ると知りつつも思い切って出掛けた。

動画はこちら「前橋への日帰り旅

前橋には何度か訪れたことがあるけど、いずれもどこかに行ったついでに立ち寄るくらいだった。日帰りで行ける場所を選ぶ中で、何となく選択肢を絞り込む中で行先を選んだ。行く日を決めたのもそんな感じで、あれこれ考えると連休中の他の日では出掛けられないだろうと。そう思い込むのは僕の癖というか、ある種の病気のようなものなのかなと思ったりするけど、これからもその癖と上手く付き合っていくしかない。

上野から新幹線で高崎まで行き、バスに乗り換え前橋に向かう。JRでも行けるけど、バスの車窓を楽しんでみたかった。そして、一つ目の目的地近くまで直接行けるのがいいかなと。

群馬県庁近くでバスを降り、前橋公園の緑と鳥の囀りを心地よく感じながら臨江閣に向かった。

数年前に放送されたドラマに登場した臨江閣、いつか訪ねてみたいと思っていた。一昨年の秋に軽井沢を訪れた帰りに立ち寄った時には忘れていたのか時間がなかったのか、その機会を逃していた。

建築の専門家ではないけど、造りについてよりもそのスケールの大きさに興味を持った。そして、この建物を維持管理されている街の人たちに頭が下がる。そんな気持ちでボランティアの方(?)に会釈をして建物を後にした。

家からでも少し足を伸ばせば川沿いを散策することは出来るけど、たまには違う景色を眺めたい。訪れる前に地図で確認した川沿いの散策路に向かった。

水の流れる音、風に揺れる木々の騒めき。無心にはなれなかったけど、気持ちは歩く方向と同じく前へと向かっている、向かうことができていることを実感しながら。

少し変わった魅力的な橋を見られただけでも、来てよかったと思えた。

そんな気持ちとともに川沿いを歩き続け、前橋文学館に辿り着いた。

こういう施設があることは事前に確認していたけど、文学への興味が薄いこともあり立ち寄る予定をしていなかった。まあ、散歩のような気ままな旅に予定などあってないようなものだけど。で、中に入ってみた。

当日は、詩人の岸田将幸さん、そして漫画家・イラストレーターの雨月衣さんの企画展が開催されていた。

お二人のことはここに来て初めて知った。知らないから立ち寄らないという選択肢もあったけど、気ままな旅だからこそ、立ち寄ってみよう。

岸田将幸さんは僕より一回りほど若い方だけど、彼のプロフィールを読み、そして彼が綴った言葉に触れ、より深くその言葉に触れ、噛み締めてみたいと思った。僕も随分と前、言葉で伝える仕事に携わったのをきっかけにその力や使い方を間違えた時の恐ろしさについて考え始めた。今もまだ言葉を駆使するところまでは行かないし、そんなところに辿り着くことは出来ないだろうと思うけど。

雨月衣さんは、かつて放送されていた『伊東家の食卓』でイラストを担当されていたという。その番組をかつて何度か視た程度の僕の記憶には残っていないのも当然だと開き直る訳ではないけど、そのキュートなイラストはどこかで見たことがあるような…と思えるものだった。

岸田将幸さんの企画展図録を購入し、館を後にする頃には小雨が降ってきた。

アーケードの商店街にあるお蕎麦屋さんで昼食を取り、中央前橋駅まで歩いて上毛電鉄線に乗った。

はじめは桐生まで乗って、再び前橋に戻るかまたは桐生から東武線で帰ろうかとも思っていたけど、帰りの時間を考えてほんの少し乗ってみることにした。そう思って地図で調べて「行ってみたい」と思える場所も見つけていたので。

二つ先の三俣駅から歩いて向かったのは、ハイノート前橋店。地方都市にこんな大きな文具店があるということに興味を持ち、訪ねてみたいと思った。雨は激しさを増していたけど、それでも興味の方が勝った。

店内に入ると、品数の豊富さに驚くとともに、各コーナーに添えられた店員さん手作りのPOPに興味をひかれた。どんな仕事でも本質的に楽しさを持ち合わせているものだと思うけど、これらのバナーを見ながら、店員さんたちの商品に対する愛情や、仕事をしている上での愉しみなどが感じられ、店内を歩いているだけでワクワクした。

もともと仕事で使うためのノートでも買っていこうかくらいは思っていたけど、こちらのディスプレイ・POPに惹かれて榛名山の方を購入した。どんなシチュエーションで使うか、今から楽しみだ。

お会計の時に店員さんに感想を伝えたら話が弾んだ。来てよかったなと思えたし、それこそ、充実した旅になった。

群馬に来たらいつか「朝鮮飯店」か「登利平」で食事をしたいと思っていて、「登利平」はお弁当を買って食べたことはあるものの、未だに、そして今回もそれは叶えられなかった。それはまた次の愉しみに取っておくとして、高崎駅で「鶏めし弁当」を購入した。売店のおばさんに「鶏めし弁当美味しいよねえ」と声を掛けられ、頷きながら急ぎ売店を後にして、高崎線のグリーン車に乗り込んだ。往きにほとんど読み進められなかった本をゆっくり読もうと思っていたけど、雨に濡れても窓の外が気になり結局往きと同じくらいしか読み進められなかった。もちろん、美味しい鶏めし弁当のせいもある(いい意味で)。

そんなに遠い場所でもないし、車でも来られるからと思っているとなかなか来られないものだけど、夏か秋にまた訪ねてみよう。次は雨ではなく晴れた日に。

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2021瀬戸内への旅 その4

2021-12-12 14:40:43 | 旅する

動画はこちら

4日間の旅もこの日が最終日。ホテルで洋朝食をいただき、チェックアウトした。2010年に初めて訪れて以降、高松市内での宿泊は毎回ホテル福屋さんにお世話になっている。繁華街からは離れているものの、それが静かさに繋がり、また規模もそこまで大きくはないからか、お気遣いと行き届いたサービスを受けられる。

キャリーケースを転がしながら、まずは栗林公園に向かった。実は、前日の夜にライトアップを観に来てみたものの、入場待ちが1時間と聞いて早々に退散してしまった。めったに来られる場所でもなく、更にライトアップとなればなかなか観る機会もないと思いつつ、寒さに負けてしまった…ということにしておこう。

そんな話を入口でスタッフの方にしたところ、その方から「朝の早い時間がおすすめですよ」と伺った。慰めでもなく、確かにそう思える景色を堪能した。次の予定があるのでそれほどゆっくりはできなかったけど、観たい場所を歩き、その景色を味わった。

さて、とりあえず高松駅までと思うものの、バスがなかなか来ない。そして、来たとしても途中瓦町を経由するので時間がかかることから、タクシーで駅に向かうことにした。そして、車内でドライバーさんにいろいろお話を伺う。一時よりはだいぶ落ち着いたとはいえ、まだまだコロナ禍が続く中、地域が生き続けていくための地道な取り組みが求められるし、そんな大所高所からの話よりもまず、自分にできることをしなければと思う。

電車の時間より少し前に駅に着きたかったのは、構内にある連絡船うどん店が11月末で閉店すると知ったから。以前2度ほど入ったことがあるが、味が特別という訳ではない。ただ、往時の宇高連絡船を知らない僕でもその名前に過ぎし日への憧れを感じる。

うどんをいただいてすぐにマリンライナーに乗り込み、岡山を目指した。この列車を全区間乗り通したことは今までなかったと思う。瀬戸大橋からの眺めも含め、1時間ほどの鉄道の旅はのんびりと楽しめた。

岡山に着くと人の多さに驚いた。その様子に心配になりつつも、手荷物預り所にキャリーケースを預けてからバス乗り場に向かった。まずは空港行きのバスを確認してから…と、この日は市内の電車バスが無料になるという掲示が券売機にされていた。そうこうしているうちに乗りたいバスが出て行ってしまい、次のバスまで30分あるというので、歩いて向かうことにした。

以前は「桃太郎アリーナ」と言ったその場所を訪ねるのは2回目、ちょうど贔屓チームの試合があるということで予定に加えた。ただ、あっさりと敗けてしまい、とりあえずバスで岡山駅に向かった。同じくファンの方と車中で言葉を交わしながら、推しの選手が去ってしまい観戦に気持ちが入らないことを吐露した。こうしてだんだんと心が離れていくかなと思う一方、近くで試合があれば観に行きたいという気持ちはある。

ところで、岡山に来たらもっと『カムカムエヴリバディ』で溢れているのかと思っていたけど、ほとんど見かけず肩透かしにあったようだった。視聴率はともかく話題にはなっていて、実際僕も毎朝BSで視てから出勤している。

駅から先、バスに乗り続けていたら思っていたところとは違う方に進んでいて、慌てて降りた。そして、後楽園まで歩いて向かった。園内には晴れ着姿の方もいらしたりして、色づいた木々とともに華やいだ雰囲気を感じながら散策した。ただ、空港へのリムジンバスの出発時刻が気になり、そこまでゆっくりはできなかったかな。駅までのバスが大きく遅れてハラハラしたり、焦って路面電車に乗り換えたものの却って時間がかかってしまったりと散々ながら、何とか空港まで向かった。

空港内も多くの人が集まっていた。「満席となるため早めに空港へ」という知らせをもらっていたのでそれ自体は予想していた。ただ、空港内での待ち時間をどう過ごすかが問題で、とりあえずレストランに入ることにしたものの、混雑に加えスタッフの人数を減らしていることから、空席が出来ても次のお客さんをスムーズに案内できない様子だった。店員さんたちが頑張っている姿に、お勘定の際にチップをお渡ししようと思ったけど丁重にお断りされたので、気持ちだけ伝えた。

この4日間は、長いようで短かった。けっこう早くから予定を立てていて、仕事もこの時期なら大丈夫だろうと思っていたものの、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。それでも何とか旅立った。コロナがひと息ついたと思える状況になり、またこの間、天候にも恵まれた。そして何より、一期一会も含め人との出会いが楽しかった。次の旅もまたそんな楽しみ方をしたいし、そして、今回の出会いを大切にしたい。

その1はこちら

その2はこちら

その3はこちら

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2021瀬戸内への旅 その3

2021-12-12 14:37:32 | 旅する

動画はこちら

前の晩、寝たのは2時頃だった。寝不足ではないという気にもならないくらいだったけど、それよりも別の気持ちの方が勝っていて、だからしっかり起きられたのかもしれない。

ホテルで慌ただしく朝食をいただいてから、徒歩で高松港へ。乗りたい船は7時40分に出港する土庄行きの高速船。フェリーよりも定員は少ないものの、何とか乗ることができた。

その前に出るフェリーに乗ってゆっくりととも考えたけど、目的地へのバスの乗り継ぎができないことから、この船に乗ることにした。例年なら多くの観光客を乗せているだろうに、船内の空席に運航事業者のことと航路の維持について心配になった。

フェリーの半分近くの所要時間で、高速船は高松と土庄を結んでいる。で、土庄港に着くとすぐ、バスのフリー乗車券を購入し、何とか予定していたバスに乗り込んだ。小豆島には瀬戸内国際芸術祭の際に何度か訪れているけど、名前の割には広い。一昨年訪ねた時は初めて三都半島の先まで行ったけど、内海の島に半島があるということにそもそも驚く。それはこの島がどう形成されたかによるのだろうけど、そこまでの興味は今のところ持っていない。

草壁港でバスに乗り継ぐ。以前、ここから高松に戻ったことがあったけど、その航路は今年3月に休止されている。島には定期旅客航路を持つ港がいくつかあり、それぞれが役割を持っていたと思うけど、この状況下ではその維持にはかなりの負担がかかるのだろうし、先行きも見込めないことからそうせざるを得ないのだろうけど、一方で、船の燃料・動力源についてのブレイクスルーが求められているようにも思う。

そんなことを考えているうちに次のバスがやってきた。久しぶりに木の板張りのバスだった。それを笑い話にする気はなく、経年の長い車両を大事に使うことでコストを抑えている経営努力に頭が下がる。国や自治体は様々な補助金等の施策を行っているけど、公平性が求められるのか、それとも効果ありきなのか。後者の考えに近い僕から見るとちぐはぐ感は否めない。

話がだいぶ脱線してしまったが、以前から「寒霞渓」という文字と言葉の響きに憧れていた。けれども、瀬戸芸の時には作品鑑賞を優先するため、それとセットでない観光地へ足を伸ばすまでいはいかない。そこには小豆島の広さも起因しているけど。

ロープウェイに乗り展望台に向かう。快晴の中、眼下に広がる美しい景色を堪能した。雨だとか天気が悪かったりしたらきっと、別の場所に行っていたかな…などと一瞬思ったものの、すぐにまたその美しい景色に気持ちが向かった。

紅葉の季節が最も美しいと思うし、実際に複数の団体客が訪れていた。その楽しそうな様子を見ながら僕もまた楽しい気持ちになった。で「シャッターお押ししましょうか?」と、最近は遠慮していた声掛けをしてみた。そのタイミングでほんの少しの間マスクを外してもらったその表情にまた、楽しい気持ちが膨らむ。

だけど、強風のおかげであまりにも寒く、乗ってきたバスの折り返しに合わせて早々にロープウェイに乗り込んだ。次回訪ねる際はきっとカフェなども開いているだろうと願い、その時はゆっくりと時間を過ごしたい。

で、予定を早めたことから帰りに立ち寄ろうと思っていたオリーブ公園に向かった。オリーブ園から入り、なだらかな丘を登っていく。冬の服装で身を固めていたためか、暖かい日差しに汗ばむくらいだった。ただ、それもまた心地いい。ところどころに実を残したオリーブの木を見かけながら、オリーブ公園内の建物に入り、早めの昼食をいただいた。インスタ映えを狙って選んだメニューだったけど、インスタにアップするのを忘れてしまった。今からでは… ジュースは甘味が強かったものの、それも含めて美味しくいただいた。

その後、売店に立ち寄りお土産物を物色した。自宅や職場へのものは前日までにほぼ買い揃えていたけど、今晩行く予定にしている場所へ持っていくものを悩みながら選んだ。

次に乗るバスはこの建物のすぐ前に来てくれるので、オリーブソフトをいただいたりしながら待っていた。それなりに多くの人が乗っていたけど、何とか席を確保することができた。ここから先はまた長い。それでも、沿線の見所などをバスの運転手さんがアナウンスで紹介してくれたりして、その時間もまた楽しめた。

二十四の瞳映画村へ向かうバスの本数は限られていて、草壁港付近や醤の里付近で自転車を借りて行ってみようかなどども考えたけど、結局はバスの方が便利だし、それで正解だった。映画『二十四の瞳』はまだ視たことがないけど、子どもたちのその後を描いた作品を少し読んだ記憶がある。敷地内にある壷井栄さんの記念館に立ち寄り、ふとそのことを思い出すとともに、いつの時代も子どもたちを取り巻く環境は厳しく、だけど、それを理由に子どもを世に送り出さないというのも良くないのでは…と、結婚にも子育てにも縁がなかった僕が言うと現実味がないと感じつつも、そう思う。

もう少しゆっくりしたいと思いつつ、お腹の減り具合もそこまでではなかったこともあり、渡船に乗ってオリーブ公園近くまでワープすることにした。前を閉じられないライフベストにも助けられつつも、冷たい風を受けながらの船路は厳しい。で、対岸に着いたちょうどその時、映画村で見送ったバスが去って行ってしまったので、ワープ作戦は失敗に終わった。それでも、当初乗る予定だったバスで土庄港に向かい、今度はフェリーに乗って高松に戻った。

ホテルに荷物を預けてから、繁華街の方に向かう。途中、前日に通りかかり気になったお好み焼屋さんに立ち寄った。古めかしいお店がまた、美味しさへの期待を高める。自分で焼くこともできるようだけど、ここはお店の方にお願いした。頼んだのは「もつ焼」、鶏もつが入ったお好み焼で、初めて食べる。実は前日に行ったお店で教えてもらったんだけど、もつの苦味がアクセントになり食が進んだ。もう一つ行けるだろうと、今度はイカと牡蠣が入ったのをいただいた。こちらもまた、ビールが進む。心地良さとともに店を後にし、次に向かった。

前日連れて来ていただいたスナックを再訪した。すると、お店には数名の女の子がいらしてカラオケを楽しんでいた。お店の女の子にしては若いなと思ったら、ママさんの妹さんとその娘さんだった。期待していたのとは違う展開に一瞬戸惑うも、それもまた楽しいと思えた。小豆島で買い求めたオリーブオイルを彼女に渡すと、しばらくしてそれを使った一品を出してくれた。元々は料理人だそうで、喜んでくれたらと思ったけど、早速僕を喜ばせてくれて、ありがたい。

上の娘さんはいろんな歌を上手に歌っていた。で、僕のリクエストにも応えてくれた。慣れない曲は一緒に口ずさんだりしているうちに、お店に来たのか、大切な人の家族と過ごしているのか、よくわからない感じがして、それもまた心地良かった。僕の姪と同じ歳だそうで、姪も以前よりは口数が少なくなったものの会えばいろいろ話してくれる。そんなことを思い出しながら、そのひとときを楽しんだ。

ご常連さんが来店され、また妹さんたちが帰られ、しばらくしてからお店を後にした。次の晩はもう来られないけど、また近いうちに訪ねたいという気持ちとともに。

その4へ続く

その1はこちら

その2はこちら

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2021瀬戸内への旅 その2

2021-12-12 14:33:04 | 旅する

動画はこちら

二日目。早く起きたつもりがいつもよりも遅く目覚め、旅館の朝食をいただいた。普段はパン食だからということもあるだろうけど、和定食は食が進む。

旅館を後にして、渡辺さんに徳島の祖谷渓まで案内していただいた。途中から僕も運転を担当し、車はやがて吉野川沿いの道に出て、大歩危峡から山側に折れ峠を進んだ。2時間ほどのドライブの後、ようやくかずら橋近くの駐車場に到着した。橋まではそこからさらに歩くというところと、自然の中に巨大な駐車場があるというところに違和感を覚えつつ、橋を渡ってみた。2年前に四国村でミニチュアを渡ったけど、やはり本物は違う。ただ、そこまで怖さを感じなかったのは、高所恐怖症が治ったということだろうか。いや、そんなことはないだろう。

いつかは訪ねてみたかった場所だけど、こういうことがないと行かないままだったかも…と、急な斜面に立つ家々を見ながら思った。もしまた来る機会があれば、今度は列車に乗ってがいいかな。そして、看板を見かけた歩危マートにも立ち寄ってみたい。

その後、大歩危峡の展望台に立ち寄ったのちに高松市内に戻り、渡辺さんとは一旦ホテル近くで別れた。とりあえず下着だけ替えてホテルの方に呼んでいただいたタクシーに乗り高松港へ。で、前日貰った船の時刻表を車の中で見たら、目指した時刻に出発する船がないことに気付いた。こんなこともあるさと強がりながら、高松港のターミナルビルに入っている喫茶店でおにぎりとコーヒーをいただいた。以前も何度か寄っているけど、このお店は入りやすくていい。

16時発の船に乗り、女木島へ。2月に就航した新しいめおんに乗りたいと思っていた。写真や動画では見ていたけど、思ったよりも派手で、思った以上に違和感がなかった。出向前にすでに並んでいる人たちがいて、その後ろで順番を待つ。期間中ずっと冷たい風に吹かれていたけど、この日も例外ではなかった。

さて、船室内は質素ながらも、欄間が飾られていたりして、また清潔な印象を受ける。新しい船だから当然だと言えばそれまでだけど、男木島までの片道40分には必要にして十分な設備を整えている。

しばらくデッキにいたけれど寒さに負けて船室に入った。後ろの方から賑やかな声が聞こえてきたのでそちらに近づいてみると、幼稚園帰りの女の子が何やら他のお客さんと話をしていた。当然ながら一人で通園している訳ではなく、近くでお母さんが様子を見ていたというか聞いていたけど、僕もその中に入り彼女が作るエアー菓子パンやエアーたこ焼きをいただいた。

20分ほどで女木港に到着し、港の近くをぶらぶらしてみた。ところが、夏でも休日でもなく、人とすれ違うことすら稀という感じで、港にあるおにの館で帰りの船を待つことにした。ところが、館内に入ろうとすると1匹の猫が近づいてきて僕の足元に身体を擦り付けてきた。飼いたいと思うほどではないけど猫は好きなので、僕もその状況をしばらく楽しんでいた。すると、館内から出てきた方が猫に餌を与え始めた。その瞬間に猫が何を思っていたのかがわかり、微笑ましくなる一方で少し寂しい感じもした。

高松に向かう船上で、デッキに立ち「せとしるべ」を撮ろうとしたものの、タイミングが合わなかったのか単に忘れたのか、動画は失敗してしまった。この時期にデッキに立つのは寒すぎる。

また一度ホテルに戻り、再び渡辺さんと合流し何度か連れて行っていただいた居酒屋へ。美味しい料理をお腹いっぱいにいただいた。毎度お世話になっているのでこちらは僕持ちで。

で、朝からのロングドライブで疲れていることもあり、ここで解散と思ったものの、この日もスナックに案内していただいた。以前連れて行っていただいたところかな…と思ったけど、初めてのお店だった。数曲カラオケを歌ったのちに渡辺さんはお疲れから運転代行をお願いして帰られた。その後僕はいったんお店に戻り、頃合いを見て帰ろうかと思ったものの、あれこれあって結局閉店まで残ってその後ホテルに帰った。当然ながら、この日も午前様になり、翌日の予定をどうしようかと考えているうちに眠ってしまった。

その3へ続く

その1はこちら

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2021瀬戸内への旅 その1

2021-12-12 14:30:11 | 旅する

動画はこちら

旅に出たいという気持ちは、かの松尾芭蕉にも負けないくらいだと思っている。それでも、時間とお金の両方が揃わないと旅に出るには難しい。いや、それはいい訳かもしれない。そして、理由。ただそれは、こじつけでもいいと思う。

さて、そんな旅に出たいという気持ちがなかなか叶えられないここ2年ほど。旅に出られない分、いつか出掛ける日のための資金が溜まっているかと言えば、そうでもない。いや、そうじゃない。一体どこにどう消えていくのか。大きなものは買っていないものの、細かな出費が増えているからだろう。

それでも、僅かずつ貯めておいた分を使って旅に出ようと思った。まだ先が見えない9月初めに航空券を予約した。そして、その前提として大まかな旅の計画を立てた。

海外へ行くのは難しいため、自ずと行先は国内に限られる。行きたいところはいくつもある。これまでに行ったことのない場所をまず選択肢として挙げる前に、頭の中で瀬戸内が行先としてセットされた。またその範囲内でも「どこを訪ねるか」思いを巡らせた。来年また瀬戸内国際芸術祭で様々な島を訪ねるつもりなんだけど、5年前に行った豊島美術館を再び訪ねることにした。

まずは、岡山へ。空の旅を楽しみたかったから、飛行機で行くことにした。

そう、ANAの機内安全ビデオが11月以降、それまでの歌舞伎バージョンから社員の方々が登場するものに変わっていた。「前の方がいい」などといった意見も見かけたけど、僕はこの新しい方が好きだ。安全についてはもとより、今伝えたい事がしっかり伝わってくる。

名古屋あたりまでは快晴で、おかげで雪帽子を被った富士山を上空から眺めることができた。岡山だと新幹線の方が便利なのはわかっているものの、この景色を見るとまた空路を選びたくなる。

やがて飛行機は降下をはじめ、岡山空港に到着した。実質1時間ほどのフライトだったけど、久しぶりの空旅を堪能した。

リムジンバスで岡山駅まで向かい、そこから電車で宇野駅に。2010年以降度々訪れているけれど、宇野を経由するのは初めてだ。つまり、宇高連絡船に乗った経験もない。若い人た日はその言葉を聞いたこともないだろう。

宇野港からフェリーに乗り、豊島に向かった。滞在可能な時間は限られ、また曜日の関係で閉じている施設も少なくなかったので、豊島美術館のほかは景色を愉しむくらいしかできなかった。それでも、そこに行くことこそ本来の目的だったので、充実度は高い。

実際に訪れて感じてほしいので詳細には触れないけど、その空間に包まれながら風の音や光の変化などを感じることで、日常からいったん離れることができる感覚がいい。許されるならもっとゆっくりしていたかったけど、そこは追っかけてくる日常から逃げきれなかったということだろうか。もと来た道を自転車で引き返す。

2010年に初めてこの地を訪ねた時も電動アシスト自転車を借りた。あの時は島を一周したんだけど、途中でバッテリーが切れてしまい重い自転車を押して歩いた記憶が強く残っている。今回は移動距離も短かったけど、一方でバッテリー技術の進化もあったのだろうか…

港近くで遅い昼食をいただいたのち、高速船に乗り高松港に向かった。強風の影響か内海にしては波が荒い中を船は速度を上げて進んでいく。時折激しく揺れるも、船酔いもせず高松港に辿り着いた。

2年前と同様、香川漆器職人の渡辺さんのお世話になり、塩江温泉の宿に向かう。宿に入る前に共同浴場に立ち寄り温泉に浸かり、その後宿で美味しい食事をいただいた。2年前にお箸をいただいたままになっていて、何か贈りたいと思っていた。そして、渡辺さんが作られた蕎麦猪口をお贈りした。冬になると雪も積もると聞いたけど、お客さんがご主人の打つ蕎麦をその蕎麦猪口で味わってくれたらと願う。

食事の後は少し歩いた先のカラオケスナックに。ママさんから地元の名士というか迷士というか、そんな人の話を伺っていたらその方が来られ、和気藹々とした時間を過ごすことができた。というか、僕は途中で寝てしまっていた。まあ、4時起きで移動しっぱなしだったから。ということで、旅の初日を終えた。

その2へ続く

 

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緩みつつ

2021-10-27 21:17:16 | 旅する

先週末、久しぶりに泊りがけで出掛けた。

緊急事態宣言が明けて気が緩んだ面はあるだろうけど、そもそもは贔屓のバレーボールチームのホームゲームを観に行くため、緊急事態宣言が明けるか否かに関係なく予定していた。だからいいとか悪いということを言うつもりはないけど。

電車の予約を入れた時は大半が空席だったのでそのつもりで乗り込んだら、かなりの混雑に不安を覚えた。コロナ以前だったら普通の光景だったものが、この間で意識が大きく変わったのもあるだろう。その気持ちを抱きながら、窓の外に広がる景色に気持ちを支えながらその時間を過ごした。

電車からバスに乗り継ぎ試合会場に到着すると、ここでは逆に人の少なさが気になった。我ながら「何とも身勝手な…」と思いながら、他の方との一定の距離が保たれた状態で安心して観戦することができた…けど、残念ながら試合は贔屓チームの勝利とはならなかった。

残念な気持ちと共に、帰りは歩いてホテルへと向かった。すると、そのホテルでもチェックインを待つ人が溢れていた。正直イライラしてしまったけど、それをフロントの人にぶつけるのは違うなと思ったのと、体温測定などそのオペレーション負担が増えていることも理解しなければいけない。

荷物を置き身軽になったところで、夕食の場所を探しに少し早めに部屋を出た。距離も近く、また開店まで時間があったけど、「もしかしたら行列が…」という不安が過ったので。

行きたかったお店は、オモウマい店で紹介されていた「騒ぐんじゃねえ!」のママさんがいる中華料理店。日立市にあるということで、観戦ついでに来てみようとその時から思っていた。同じように考えている人が体育館にいたかも…と思い、入れなかったらと思っていたけど、僕がお店を後にするまではそのような方は入ってこられなかった。

店に着くと2組のご家族が開店を待っていた。紹介されてから半年経ち落ち着いたのだろうか。それでも、楽しみに来られている人たちの様子を見ているだけで気分が高まる。

料理を待つ間、ママさんはお子さん連れには絵本を、そして、僕にはスポーツ新聞を持ってきてくれた。本当はそれほど読みたい訳ではなかったけど、お子さんのために絵本を読む親御さんの声をBGMにスポーツ新聞を眺める時間に温かみを感じた。その後、餃子をアテに遠慮なくビールと、ママさんおすすめの鶏入り焼きそばをいただいた。

お勘定の際に少し躊躇すると、例の「騒ぐんじゃねえ!」の一言をいただき、言われた通りに財布からお札だけを出した。その自分の躊躇いに後ろめたさを感じなくはなかったものの、ママさんの優しさを受け取りお店を後にした。

さて、翌日の試合は勝利し帰りの電車は気分よく…と行きたいところだったけど、途中から隣席に座った男性が感じ悪く、所要時間以上に長く感じられた。

マスクは外せないだろうけど、そして、元通りにはならないだろうけど、以前のような日常に少しでも近づいたらと願うばかりだ。

 

お時間がありましたら動画もご覧下さい:https://youtu.be/iINKrZmP8B0

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ふた跨ぎ、み跨ぎ

2021-08-08 10:27:51 | 旅する

先月末、栃木に出掛けた。(動画はこちら

あまり遠くには行けないけど、ほんの少し日常から離れてみたいと思っていた。いや、そんな時間が必要だった。そしてふと「カクテルの街」というフレーズを思い出した。

宇都宮はむしろ「餃子の街」として知られている。駅前には餃子の像もある。もちろん「餃子を食べに行く」というのも理由にはなるだろうけど、それは日帰りでもいいし、それよりもまず、僕がそれを望んでいない。餃子が嫌いという訳ではないものの、ぎょうざの満州で満足しているから…でもないか。まあ、それを食べに行くにしても買いに行くにしても、ちょっと距離はあるけど…と、餃子の話で引っ張るつもりもない。

金曜日、午後少しまで勤務をしてから職場を後にし、一旦家に帰り身支度を整えてから上野駅に向かった。17時少し前に出発する列車を選んだので余裕はあったけど、上野駅に着くとまっすぐ地下ホームに急いだほうがいいというタイミングだった。

各駅電車のグリーン席でも良かったけど、割引きっぷならほぼ同じくらいの金額でかつ所要時間が半分くらいならと、新幹線を選んだ。その割引きっぷ(トクだ値)は以前はチケットを発券して乗車するタイプだったけど、最近になりSuicaを利用するタイプに変わり、僕は今回それを初めて利用した。Webで購入後にSuicaと紐づけをして、それがされたことをメールで知らせてくれるんだけど、ANAのアプリ(他の航空会社も同様だと思う)のように、予約情報を確認することができればいいんだけど、モバイルSuicaアプリを立ち上げてもその情報を確認することができなかった。もしかしたらできたのかもしれないけど… で、新幹線改札を通過したらその旨メールで案内が届き、ようやくその仕組みを理解した。

上野から40分余りで宇都宮に着いた。各駅停車に乗っていたら、おそらく小山で途中下車し改札を出ずに駅そばを食べていただろうと、ほんの少し妄想し、ホテルまでの道を歩くことにした。ところが、思ったよりも距離があり、湿度も高く、マスク着用が暑さに追い打ちをかけた。「夕食抜きでカクテル」という漠然としたプランを持っていたものの、オリオン通りの居酒屋さんに入ることにした。

数件のお店が同居し、どのお店に席を取っても他のお店の品を注文することができるという。暑さで喉がカラカラだったこともあり、漠然としたプランを置いておき「飲み放題付けて!」と頼んだ。元が取れるなどとは思わないものの、注文の都度財布と相談する必要がないのはいいのかもしれない。

僕は、静岡おでんのお店に案内されたんだけど、考えてみれば、静岡に行った時もおでん屋さんに入った記憶はない。それが栃木県の県都である宇都宮でというのは、それはそれで面白いし、せっかくだからと静岡おでんを愉しんだ。

ちょっとした荷物に加え、「仕事の疲れ」、「暑さ」、「飲み過ぎ・食べ過ぎ」を背負い込んでホテルにチェックインしたのは20時過ぎ。ちょっと休んでから出掛けようとベッドに横になり、目覚めたのは22時をかなり過ぎた頃だった。「夕食抜き」は消えたものの「カクテル」を目指しホテルを出た。

事前に2件のお店に目星を付けていて、まずはホテルに近い果実酒が魅力的なお店に向かった。

エレベーターに乗り込んだら…今日から休業? 新型コロナウイルス感染再拡大の影響がもう出ていた。残念に思いながらもう1件を目指した。幸いなことに、こちらのお店は開いていて、先にいらしていたお客さんの楽しい語らいが聞こえてきた。

日頃バーに寄ることもなく、そういった嗜みを持っていたら…なんて頭で考えるより、メニューを開いて「これっ!」と思ったものを頼めばいい。お店の雰囲気もあり、一人静かにグラスを傾けていた。

ふと、横にいらした男性氏が席を外された際に、お連れの女性に会話を振られた。黒板に書かれたヴィンテージウイスキーが気になっているという。「しれっと頼んじゃったら?」と茶化すように返したのは、彼女がそんなことをする筈はないと思っていたから。実際、男性氏が席に戻られてからそのウイスキーを注文されていた。そして、男性氏が値切ることを忘れていなかったことに、そういうお客さんに支えられているお店だということを再認識させられた。

さすがに僕はそこまでの勇気はなく、それでも半分見栄を張りちょっとお高めのウイスキーを注文した。鹿児島と埼玉・秩父のウイスキーをブレンドしたそのウイスキーが放つアルコールに「これがウイスキーだった」と一瞬噎せ返り、舌を潤すような意識で口に含み、その香りを楽しんだ。時間とコストを考えるのは貧乏症の悪い癖だけど、このウイスキーは価格以上に楽しめるなと思った。

バーテンダーさんから、週明けには栃木でも蔓延防止措置が適用され、営業をどうされるかといったお話を伺った。感染が拡大する度にお酒を提供するお店がやり玉に挙げられる。確かに、大声で騒ぐようなお店はリスクが高いのだろう。ただ「独り酒、手酌酒」程度であればいいのでは…と、言い出したら切りがないのかもしれない。今は我慢の時、でも、我慢を強いるだけではなく、息継ぎのための確実な支援がないと、こういう憩いの場所がなくなってしまうのではと不安に思う。

落ち着いたらまた訪ねたいと思いながら、日付を跨いでホテルに戻った。

 

翌朝、まだ前夜の疲れが残っている中、宇都宮の街を散歩した。緑も多く、暮らしやすい街なのかなと思いながら。今までも行く先々で同じように思うんだけど、実際には思ったのとは違うのだろうというのもわかる。たまに訪ねるくらいがいいし、それを忘れないうちにまた訪ねたい。

ホテルの朝食バイキングには、千本松牧場のソフトクリームが並んでいて、迷わず食事の後にいただいた。「もう1回」と思ったけど、僕が最後のお客さんだったようで、早めに引き上げることにした。エレベーターに乗り込む際に入口の看板を下ろされていたのを見かけ、その判断は間違えてはいなかったと思えた。

前日の反省(?)を踏まえ、ホテルから駅まではバスに乗った。途中、前日通りかかった玩具店を車窓から眺めた。「黄ぶな」は無病息災を願うものだそうで、今だからこそ買っておくべきだったという後悔は先に立たず。これも旅あるあるだな。

宇都宮からローカル電車に乗り、黒磯に向かった。途中から蜻蛉が1匹迷い込んできてどうしたものかと思案していた。次の駅についても降りる様子が見られず、重い腰を上げて車外へと逃がしてあげようと思ったのだけど、換気口に吸い寄せられたりとなかなか簡単にはいかず、他のお客さんの手をお借りしようやく逃がしてあげられた。もしかしたら別の駅で降りたかったのかもしれないけど、自己満足かもしれないけど、あれで良かったと思う。

黒磯駅というと、各駅停車で東北線を北上する旅人が必ず足を止めなければならない場所だ。僕も8年ほど前にこの駅で乗り換えたけど、改札を出るのは初めてだ。で、駅を出てすぐ近くにきれいな建物があり、一旦は街に脚を踏み出したものの、暑さもありその建物に入った。

その建物は図書館で、中にはカフェも入っていてゆっくりと時間を過ごせる場所だった。乗り継ぐバスまで時間があったので、僕もジュースを1杯いただいた。

 

黒磯駅からバスに乗り、1時間ほどで板室温泉に到着した。で、この日の目的地はこちらの旅館。宿泊ではなく、アーティスト・久保田沙耶さんの作品展が開かれているのを知り、ついでと言ったら失礼だけど、せっかくだからと訪ねてみた。

宿泊のお客さんもおられる中、足早に作品を鑑賞した後に玄関先の小屋で休んでいたら、久保田さんご本人から声を掛けられた。お宿の方が気にかけてくれて彼女に伝えてくれたのだろう。

香川・粟島の『漂流郵便局』で出会って以来注目させてもらっていることなどを話しながら、彼女から今後の予定を伺った。「貧乏暇なし…」と謙遜されていたけど、今回の旅館での作品展もそうだけど、それだけ彼女の作品が注目されているということだと思う。で、紹介された展示会(曙橋・SYP Gallery、茨城県つくば市)にも足を運んでみたい。そして、いつかこちらの宿に泊まりに伺いたい。

 

 

ほんの少しとはいえ、ご禁制の県跨ぎを二つ、いや三つしての旅となった。最近は行く場所を詰め込まないようにしているけど、帰りのバスまでの時間をのんびり過ごせたのも良かったな。そう、久保田さんと「ここを訪ねるためのバスが少ない」ということから、「瀬戸内を巡る船旅に似ているかも」という話になった。

「いつになったらそんな旅を楽しめるようになるのか」と思うか、それとも「いつか楽しめるようになったらあそこに行きたいな」と思うか。もちろん二者択一ではないけど、今は後者を楽しめたらいいかな。

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空の冒険

2021-03-27 10:48:51 | 旅する

その知らせは突然目の前に現れた。

https://twitter.com/yoshidashuichi/status/1366726324253954051

ANAの機内誌『翼の王国』に掲載されている、吉田修一さんの『空の冒険』が今月で連載終了とのこと。急いで旅支度をしようにも、行きたい場所はあるものの、年度末にその時間は取れない。引用したツイートに添付の画像から読むことができ、旅の高揚感を思い出し、また結びの一文に涙を誘われた。

飛行機を利用するのは年に1~2回。生まれも育ちも東京ということもあり帰省に利用することもなく、またビジネスで利用することもない。ましてやこのような状況の中で、一昨年の夏に旅行で利用して以降、空の旅とは疎遠になっている。だからなのか、冬の空気に微かに響くエンジン音に空を見上げてはその機影を追い、機首の向きから目的地を想像してみたりする。いや、それはこの状況以前から変わらないか…

さて、この機内誌の連載を楽しみの一つとして、空の旅ではほぼ毎回青い飛行機を選んでいる。3年ほど前だったか、『国宝』発刊時のサイン会でそのことを直接吉田修一さんにお伝えする機会があった。それくらい、このエッセイを読むのが楽しみだった。

旅情をそそるイラストが添えられた4ページの文章に、時に笑わされ、また、涙を溢れさせた。最近文庫化されたものを読み、その感覚が蘇ったけど、手元に置いてあった機内誌のバックナンバーに文庫本に収載されたものが掲載されていて、何となく覚えているような、覚えていないようなという感じだった。もしかしたら、それも機内で読むには適していたのかもしれない。

葉加瀬太郎さんの『Another Sky』に誘われ機内へと足を進める。出迎えてくれたCAさんに会釈する。爪先立ちながら荷物棚に荷物を収めたりする人たちの間をすり抜け、自分の座席を見つける。忘れないうちにシートベルトを緩みのないよう締める。窓の外に視線を向け、前の座席ポケットから機内誌を取り出してパラパラとページを捲る。乗客が揃いドアクローズの知らせとともに機内安全ビデオが流れる。機体がゆっくりと動き出すとモニターに向けた視線を窓の外に逸らす。手を振る地上スタッフの方に、少し照れながら手を振り返す(見えないだろうけど…)。誘導路をゆっくりと進みながら「今日もD滑走路か」と思い、機内誌の路線図ページを開く。離陸の順番待ちにどれくらいかかるか考えてみる。機首を進路に向け、出力を上げるエンジンの音に気分が高揚する。フワリの機体が地面を離れるのを感じる。制空権の関係でエンジン全開で上昇を続ける中、時に真下に見える東京の街をぼんやりと眺める。

離陸までの流れを思い出すだけでも、空の旅に出かけたくなる。

何度考えてみても、日帰りですら空の旅に出かけることは無理そうだし、日帰りなんて僕の気持ちが無理だ。ということで、機内で読みたい気持ちを抑えつつ、通信販売でこの号を取り寄せた。そう、この機内誌は4月以降はスマートフォンやタブレットで読むことを前提に、希望者には一回り小さくなる冊子をお渡しするとのことだ。様々な状況を考えると致し方ない。

届いてすぐに、『空の冒険』のページを開き、読む。吉田さんが綴る言葉の温かさに触れ、そして、締めくくりの言葉を何度も読み返しては涙する。でもそれは、悲しみによるものではない。

次にこの青い飛行機に乗り旅する時には、機内誌のページを捲り、吉田さんの『空の冒険』を楽しんだことを懐かしく思うだろう。でも、それもまた旅の始まりなのだろうし、そうであっても、僕はその旅を心待ちにしている。

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はんなり

2015-03-07 23:53:00 | 旅する


今日、明日と京都に来ている。一番の目的はバレーボール観戦だけど、ついでだからと少しだけど観光も楽しんでいる。

京都を訪れるのはかなり久しぶりだ。たぶん、高校の修学旅行以来じゃないかと思うんだけど、はっきりと記憶がないということはそれで間違いないのだろう。
ただ、京都駅には4年前の3月12日に来ている。忘れられない思い出だけど、このことについてはまた改めて書こうと思う。

京都に来ようと思ったのは3週間ほど前だっただろうか。来週は東京の大田区でも開催されるのでそれまで待ってもよかったのだろうけど、それはそれとして、明日の試合を観戦することにした。

応援するチームは明日の日曜日だけの試合ということで、日帰りという手も無くはなかったものの、宿泊した方が楽だと思った。そして、それは正しかった。

大河ドラマ『平清盛』を観て以来、一度は訪れたかった六波羅蜜寺に行った。更に、こちらも清盛ゆかりの蓮華王院(三十三間堂)にも行ってみた。幼稚園児の頃に家族で訪れたんだけど、あの千手観音がたくらん並んでいるのはかなりインパクトがあり、以降トラウマになっていたけど、今改めて訪れると有り難さを感じる。

試合を観戦し終え、清水に向かった。あいにくの雨のなか、「東山花灯路」と清水寺の夜間特別拝観を楽しんだ。京都の街を一人で歩くのも初めてだったなあと思いながら、初日を楽しんだ。

明日はバレーボール観戦がメインだけど、朝からどこか歩いてみようと思う。そう、せっかくだから!
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