あしたはきっといい日

楽しかったこと、気になったことをつれづれに書いていきます。

ルフィの仲間力

2021-05-24 22:19:00 | 本を読む

今の職場に来て4年あまり。数年かけて引き継ぐ予定が1年余りで辞められてしまい、仕事に慣れないうちに次から次に予定外の出来事が発生する。職場の先輩(という言葉を使うことはないけど)も経験したことがないことを、自分なりに考えながら対応している。そんな日々を過ごすうち、どこか天狗になってしまっていたかもしれないと時々思う。それでも、自分一人ではすべての業務をこなせないことはわかっていて、その都度助けられている。頼りになる人とそうでない人を、いつしか自分の中で分けてしまっている。

数年前、あるきっかけで安田雪さんの『「つながり」を突き止めろ』を読んだ。「ネットワーク分析」という言葉も、また著書で取り上げられていた「つながり」それぞれの捉え方も、どこか新鮮に感じた。そして、他の著作も読んでみたいと思いながら、忙しさなどを理由にその思いを頭の片隅に追いやっていた。ところが、昨年来の新型感染症拡大を受け、改めて「人と人との繋がり」に対する関心が高まった。

さて、冒頭で職場のことを書いたけど、「協力して成果を上げる職場づくり」をしないとと思っている。それは、自分も含め個人プレーに走りがちな人が少なくなく、成果主義に偏りすぎ(と思う)な仕組みが問題なのだろうと、その見直しについて考えていた。そこでこの『ルフィの仲間力』を読んでみたいと思った。果たして、『ONE PIECE』を読んだことのない僕は付いていけるだろうかと思うものの、読みたいという思いが勝った。

読み始めるとその不安は杞憂に終わった。登場人物についてわからなくても、安田さんの筆はその輪郭を鮮やかに目の前に示してくれるように感じた。それと、船長として仲間を率いるルフィが取っている行動の、全てではないもののその一部を、僕も職場で心掛けている。そして、自分の思いからできなかったり避けていたこと、また、全く意識の外にあったことも。そんなことを考えながら、いつの間にかとは言いすぎだろうけど、そんな感じで読み終えた。

『ONE PIECE』を読んでいたらまた感じ方も違っていただろうか。そういえば、以前好きになった人が全巻持っていると言っていたのを思い出した。いつか借りて読ませてもらおうという約束とも言えないような約束はついに果たせなかったけど、あの時の僕は彼女のことをちゃんと考えていただろうか。取り返すことのできないあの日のことを思い出しながら、それを振り払う訳ではないものの、「協力して成果を上げる職場づくり」を進めていく自分の意志を再確認した。


すばらしき世界(2回目)

2021-05-09 09:51:46 | 映画を観る

映画『すばらしき世界』を再び観た。

2月に観てから、買い求めたパンフレットに収載されたシナリオを読み、また西川美和監督が原案とした佐木隆三さんの『身分帳』を読み、近いうちにまた観たいと思いつつなかなか時間が取れなかった。そうこうしているうちに上映館も上映時間も限られてきた中、下高井戸シネマで上映されることを知り、この日を選んだ。そう、4年前の1月にここで『永い言い訳』の上映と西川さんのティーチインが行われ、足を運んだ場所だ。

さて、ゴールデンウィークからここでの上映が始まり、多くの方が来られていると知り、早めに行って整理券を受け取った。今日はまだそれほどではないらしく、肩透かしにあった気もしないでもなかったけど、安氏んではある。そして、開場までの2時間余りを羽根木公園までの散歩に充てた。

映画館に戻ると、広くはないロビーに多くの人が集まっていた。コロナ禍で苦境に立つ映画館を少しでも応援できればと、トートバッグを購入した。そして、暑い中散歩してきたので「コーヒー牛乳もなか」も。館内は食事禁止とのことで、テラスに出て急いで口に入れた。かき氷ではないので頭痛には襲われなかったものの、急いで食べるものではない。

空席はあったもののそれなりに席が埋まり、この作品に対する関心の高さが窺われた。そして僕は、初見となる誰かの機会を奪わなくて済んだことに安堵した。近くの方が持っていたコロッケのにおいが途中まで気になったけど。

映画を観始めると、場面展開が速く感じられた。初見では次に何が起きるかとハラハラしながら観ていたけど、2回目なので流れは記憶に残っているからだろうか。だからと言って面白くなかった訳ではなく、初見の時には感じなかった、気付かなかったことがあって、西川さんの作品づくりの丁寧さを改めて感じた。

そのうちの2つだけ挙げさせてもらう。

風呂場で津乃田が三上の背中を洗うシーン。カメラはその背中に自分の思いを伝える津乃田の顔を捉えるものの、三上の表情は映されないし、彼の台詞もない。それを入れてしまうことで観る側の感じ方を固定しまうのを避けたかったのだろうか。背中を流す津乃田もまた三上の表情をその背中から感じるだけだ。初見の時もこのシーンで涙したけど、改めて観てこのシーンのすばらしさを感じた。

そして、職を得た三上を周囲の人たちが祝福するシーン。彼らは三上に対し、怒りを感じても我慢することを促す。我慢できなかった過去が三上を獄中に括り付けてきたことを知っていての「思いやり」の言葉だけど、続く職場でのシーンで、同僚に虐められれまた笑いものにされる仲間を思い怒りを感じる彼が取った行動は、自分の心を殺すものだったと感じた。そして、映画のラストはそれを象徴するように感じた。

確かに、周りに起こるすべての事象に首を突っ込んでいたら生き辛くて仕方ないだろう。けれどもそれが、誰かの命に係わる切迫した問題だったり、また世の中の理不尽さから来るものだったら、見過ごしてよいのだろうか。手を打つべき時に手を打つべき人が見過ごしていたからそれが起きているのではないか。

話は逸れるけど、今も続くコロナ禍についても、手を打つべき時に手を打つべき人が対応していたら、今とは違った…もちろんいい方向に…様相になっていただろう。誰かの気づきを抑え込んだりごまかしたりするのではなく、またその誰かの行動を傍観し失敗したら冷笑するのでもなく、より良い形で手を打っていくことこそ、上に立つ者の責任ではないかと。

こんな状況だからいつになるかはわからないけど、またこの作品を映画館で観たい。そしてその時は、西川美和さんのティーチインも合わせてと期待している。次の作品までにはとは思うけど、寡作な西川さんのことだからそこは大丈夫だろう。


福祉とは

2021-05-02 21:24:19 | 立ち止まる

昨夜放送されたNHKのドキュメンタリー『たどりついたバス停で〜ある女性ホームレスの死〜』を、今日になって視た。

昨年11月の深夜、バス停のベンチで体を休めていた女性が殺害された。数年前に家賃を払えなくなった住まいを出て、更にコロナ禍の影響で仕事を失い、路上生活を続けながら命を繋いできた。誰にも頼ることができなかったのか、頼ろうとしなかったのか、彼女は何とか自分自身で生活を立て直そうとしていたものの、ただでさえ弱い立場の人には情け容赦ない社会である上に、コロナ禍が追い打ちをかけた。食べることもままならずに命を奪われる人もいる。それも放置していい訳ではないけど、こんな時代だからこそ助け合う必要があると思うものの、彼女は「邪魔だった」という理由にもならない理由によって命を奪われた。

日本の福祉政策は、有権者の顔色を窺う政治家の都合によって決められている感がある。そしてそもそも、潤沢な資金は「グリーンピア」など役人たちが取った施策の失敗により毀損されたものの、そのツケは国民に回され、それに対し僕も含め大多数の人は異を唱える訳でもなかった。

また一方で、生活保護に関して言えば「不正受給」を理由に厳格さを超えた審査や、そもそも受理しないという考えが強いと聞く。困っている人自身も生活保護を受けることに負い目や引け目を感じ、頼れないという風潮もある。もしかしたら、それは誰かに作られたものなのかもしれない。

福祉の話題が出る度に、あるドキュメンタリー作品を思い出す。是枝裕和さんが作られた『しかし…福祉切り捨ての時代に…』 将来を嘱望された環境庁の官僚と荒川区に住む女性の、全く接点のない二人が自ら死を選んだことから、この国の福祉について、そして行政について問う作品だった。本は亡くなられた官僚の方の生い立ちから最後の選択までを、ご遺族はじめ関係者への取材をもとに丁寧に描かれていた。

担当者として、また責任者として、目の前に困っている人がいて条件反射的に救いの手を差し伸べようと思っても、それができない。それは、その組織の目的に叶うものであっても、実体としての組織からは許されない。本を読んだ頃は、こうしたことは役人の世界だけだと思っていたけど、今、管理職的な立場に立ってみると、そうしたことは民間でも同様にある。そして僕は、そこを上手く立ち回れずにいる。

さて、福祉に関しては「税と社会保障の一体化」が言われるけど、それは一向に進まない。シンプルなシステムにすればコストも抑えられ、その分社会保障に回す原資を厚くすることもできるだろうに。たぶん「お金が動くところ利権あり」と言われるように、利権をめぐる縄張り争いが邪魔をしているのだろう。

とはいえ、目の前には困っている人がいて、様々な愚策によりコロナ禍が続く中でさらに悪化していくだろうし、僕自身もいつ困窮するかわからない。長期的な視野に立ち今の仕組みに対し異議を唱えることも必要だし、一方でそれを言い訳に目の前の事象をただ眺めていればいいというものでもない。それもあり、先日ある取組に対する支援を申し出た。彼女を救うことはできなかったけど、誰かの命が繋ぎ止められ、少しでも笑顔でいてもらえたらと願う。いつまで続けられるかはわからないけど、続けていくことを目的にしたい。

話があちこち飛んでしまったけど、最後に、この番組を作り、放送してくれたことにお礼を言いたい。問題提起もあるけど、一人の女性が懸命に生きた証を残してくれたことに。亡くなられたことは悲しいけど、あの写真の笑顔が、そして、試食販売で楽しそうにお客さんに接客されていたことが、彼女を知る人たちの記憶に残っていってほしい。


気晴らし

2021-05-02 15:55:48 | 立ち止まる

5連休の2日目。あと3日あると思うのか、もう2日経ったと思うのかで、気分は変わる。やっておきたい、またやらなければならない仕事がそれなりにあるので、少しでも済ませておいた方がいいのはわかっているものの、昨日は疲れからか何もできず、また今日もそれが続いている。

気分を変えてみたらいいのではと、少し出掛けてみた。自転車を走らせると受ける風が心地よく、またいつもとは違う風景に触れると心の新陳代謝が進むようだ。

そして、出掛けるだけではなく、久しぶりに動画を撮ってみた。

映像を繋ぎ、言葉を乗せ、BGMを重ねる。そんな作業をしながら、自分の心と向き合っているのかもしれない。

ここ1ヵ月以上、気持ちに余裕がなかった。今も余裕があるわけではなく、思い出さないことで一時的に平静を保っている。そこが重石になっているけど、たまには「それでもいいじゃないか」と開き直ってしまおう。そして、辛くなったらまた心を休ませよう。

お時間があったらぜひ https://youtu.be/N-rNOgvPxrs