3日目はまず、国内線飛行機で北京に移動することとした。日本で予約はしていたものの、わずかであるが不安を持っていた。前日、ホテルのフロントの人に「何時ぐらいに出ればいいか」と尋ね、そのアドバイスに従い6時30分少し前にホテルを出た。朝食を取らなかったのは味ではなく時間のせいだった。
ホテルを出て少しの時間月を眺めた後、ロータリーでタクシーを拾い乗り込んだ。優しそうなおじさんが運転するそのタクシーに安心したが、念のためシートベルトは締めた。タクシーはロシア風情街から団地らしき地域を抜け、広い道路に入った。まだ夜が明けぬ中、職場に向かうためにバス停に並ぶ人たちなどを目にした。
30分もしないうちに空港に着いた。何一つ心配することなく、また料金もガイドブックに載っていた額だった。優しそうではなく優しかったその運転手さんに領収書をいただいたが、それは料金を疑ったからではなく、単に旅の記念にもらいたかったからだったが、中国語でそこまで伝えることはできず、ここでも謝謝のひと言で済ませてしまった。
出発カウンターでも中国語が分からず、英語で話してくれる内容を断片的に掴みながら対応してもらった。手荷物のカバンは機内持ち込み制限の5kgをわずかに超えていた。持ち込んでしまおうかと思ったが、それが伝えられなかったためコンベアに飲み込まれていった…が、カバンの外ポケットにEチケットやいざという時のための戸籍抄本を入れていたことに気付いた。結果として問題は起きなかったが、荷物を受け取るまでハラハラし通しだった。
念のため出発ゲートをくぐる前にチョコパイを一つ食べておいたが、機内では軽い食事が供された。ロールパンにハムとレタスが挟んである、本当に軽い食事だった。その上、冷蔵庫から出したばかりのような冷たさだ。事前に見ておいたネットでは「不味い」と書かれていたが、確かに美味くはないものの、食事を出してくれることは嬉しい。
一時間余りのフライトを終え、北京首都国際空港に到着した。成田空港も大きい感じがしたが、この空港の大きさは半端でない。飛行機を降りてから地下鉄に乗るまでかなり歩いた。そう、手荷物を受け取るための待ち時間もあったし。ただ、非常にシンプルなレイアウトのようで、迷うことはなかった。
地下鉄機場(空港)線に乗り北京市内に向かう。第三ターミナルを出た電車は一旦第二ターミナルに向かい、進行方向を変え北京市内を目指す。スカイライナーほどではないが、市内に入り一駅に停車するだけの高速鉄道だ。車窓は木々の立ち並ぶ風景から郊外の住宅地へ、そして…地下に入り、その一駅に停車してすぐに終着駅の東直門に到着した。
すぐに地下鉄2号線に乗り換え、2駅先の朝陽門に降り立った。ここからホテルまではそれほど遠くはないが、もう11時を回っていたので少しお腹を満たしておきたいと思った。すると、駅を降りてすぐの売店でホットドックのような食べ物を売っていた。興味半分で食べてみたが、玉子焼きとソーセージを挟んだそれは案外美味しかった。
それにしても、近代的な建物が立ち並ぶ街だと思うとともに、その場所とガイドブックに出ていた胡同とがどうつながっているのかをイメージできなかった。とりあえず、そのガイドブックを頼りにホテルに向かい歩き出した。街並みはすぐ団地に変わり、商店の立ち並ぶ大通りを横切ると途端に下町のような街並みに変わり、目指すホテル、小院客桟に到着した。
チェックインを済ませ、部屋に荷物をを置いてから街に出た。とりあえず、中心地域を目指し西に進むと、王府井という地域に入った。ガイドブックによるとここは「北京の銀座」のようなところで、確かに道路を挟み大きな商業施設が立ち並んでいる。そう、王府井教会ではウェディングの撮影が行われていて、いい写真が撮れた。
しばらく進むと屋台の立ち並ぶ地域を見つけ、そこに足を踏み入れた。観光客が多く集まる賑やかな所である小龍包店に目をとめると、「美味しいよ」と声を掛けられつい気が緩んだ。1パックを出された時に「100元」と言われ、びっくりし断ろうとしたが、周りの店もグルになっているようで、ここで抵抗しても仕方ないと諦めた。大連で5元で食べたものと内容は変わらず、むしろ大連の方がおいしかったのもあり腹立たしかったが、授業料だと思うことにした。だが、ここで金銭感覚がちょっと狂ってしまった。
しばらく歩き、天安門東駅から地下鉄に乗り、途中乗り継いで北京動物園に向かった。時間が中途半端だったのでいいかなと思い向かったのだが、結論から言うと時間は足りなかった。さて、受付で入場券を買っていると物乞いのおばさんがやってきた。少ないかなと思いつつ1元を渡すと、「こっちの窓口が開いているよ」というように僕を案内してくれた。もう少し弾んでも良かったかなと思うものの、その時は金銭感覚が狂っている時だったので、勘弁してほしい。
入園してすぐに大熊猫…パンダを見に行った。やはり中国と言えばパンダだろう。昨年1月に神戸の王子動物園で見て以来だが、上野動物園ほど賑わっていないものの人気は高く、多くの親子連れが集まっていた。彼らに多少遠慮しつつ、カメラでパンダの様子を追った。
朱鷺もいた。写真や映像は見たことはあるが、実物は初めて見た。
そう、自分の写真を撮って下さいと頼むのが難しいため、記念写真を撮ってもらった。その後、女の子がお母さんに写真をねだっていた。
それから普通に動物を見るのを楽しんでいたが、17時の閉園間近にお土産屋さんで甥と姪にお土産を買っていこうと思っていたところ、既にそのお店は閉まっていて、慌ててサイとカバの館まで戻り息を切らせてお土産を買い求めた。焦ったが、買うことができて良かったと思うしかない…かな。
帰りは王府井までバスに乗った。初めて乗るトロリーバスは静かだったが、電気自動車の仲間だもんな。昔は東京都内にも走っていたが、僕の記憶にはなく、今は立山黒部アルペンルートに残るのみ…だったと思う。ガイドブックを頼りにどこら辺を走っているのかを確認するのも面白い。王府井に入ったところでバスを降り、ホテルに向かった。
途中、胡同にある地元のお店に入った。決してきれいな店ではないものの、温かい感じがしたので入ってみた。店の娘さんが友だちか店の仲間かわからないが同じ年代の子たちと戦隊ものだろうか、テレビドラマを見ていた。お客さんとのやりとりは何を話しているのかはわからないものの、その雰囲気が楽しく、そして温かかった。注文したのは炒めた刀削面…って、焼きそばみたいなもので、ソースを使った味付けが日本人にも好まれると思った。ビールを注文すると「燕京啤酒」というビールが出てきた。焼きそばはビールに合うが、地元の店に飛び込んでこんな味に出合えたことが嬉しかった。ちなみに、この際に調べてみると、燕京とは北京の別名だという。
ホテルに戻り、一休みしてからホテル内のバーに行った。中国語のテキストを見ながらスタッフの女の子と話をしてみた。こんな風に言葉を教えてもらうのも楽しいなと思いながら、ほどほどにして部屋に戻り眠りについた。