白石 一郎 著 「海狼伝」を読みました。

戦国時代も織田信長の登場で終わりを告げる頃。
対馬で育った笛太郎は、朝鮮で活躍している親戚で海賊の通称"将軍"が帰ってくるとの話を聞いた。
これまで見たこともない船に魅せられ、笛太郎は"将軍"に会い、その手下に加わる。
折しも、薩摩からの船に乗っていた雷三郎が捕まり、二人は揃って将軍の手下になるのだった。
海賊の一味となった二人は、対馬近海を航行する商船を襲い始めるが、翌年、瀬戸内海を根城とする村上水軍の海賊衆を襲撃して捕らえられ、瀬戸内に連行される。
しかし、笛太郎の父が、かつて村上水軍の船大将だったことが分かり、今度は村上水軍の手下となり、能島小金吾に預けられる。
商才はあるが、自分の船を持たない小金吾は、自分の船を持ち、明国との商売を行うことを夢見ていた。
やがて毛利家と織田信長の対決が決定的になったのを機に、小金吾はうまく立ち回り念願の船を手に入れる。
小金吾を頭として笛太郎、雷三郎はその船で再び"将軍"へ会いに行こうとするが・・・。
対馬で育った少年が史上名高い村上水軍の海賊集団に参加、"海のウルフ"に成長していく青春を描く歴史海洋冒険小説。
その中に九州の西北部を拠点にする松浦衆と瀬戸内海を拠点とする村上衆のそれぞれの海賊衆の生活や掟、船の構造や操船方法、合戦場面、武器の数々も微細に描かれている。
さらに、織田信長や小西行長ら実在の人物も登場させながら、当時の平戸や堺の商人たちの様子を織込み、笛太郎の恋などもあり、成る程を思わせながらも、読んでいてわくわくする小説です。
第97回直木賞受賞作品