帚木 蓬生 著 「臓器農場」を読みました。
新任看護婦の規子が偶然、耳にした言葉は「無脳症児」―。
病院の「特別病棟」で密かに進行していた、恐るべき計画とは何か?
真相を追う規子の周囲に、忍び寄る魔の手…。
「無脳症児」の臓器利用をテーマにしています。
「無脳症」とはその名のとおり脳を欠いた状態で生まれることを言います。
2000件に1件くらいの割合で生まれてくる。
ほとんどが生まれる前に中絶される。
たとえ生まれてきても1週間ほどで死んでしまう。
そんな「無脳症児」の臓器を障害を持って生まれてきた子供に移植する。
ここまでは、亡くなった人が先天性の病で苦しんでいるのを助ける美しい行為である。
しかし、その「無脳症児」を何らかの方法で作為的に誕生させる事ができたら・・・
障害を持って生まれてきて、生きるには移植しかないという子供と親、
その子を救おうとする医者、
それを利用する病院と業者、
医者も倫理より自分の名声を優先しようとする人、
金目的だけの人、
色々な登場人物が出てきます。
サスペンス仕立でありながらヒューマニズムに富み、臓器移植をテーマにした社会的問題に取組んだ、かなり密度の濃い読み応えのある作品です。