山本 一力 著 「銭売り賽蔵」を読みました。
金貨や銀貨を、町民の間で使われる文銭に両替する銭売り。
深川でまっとうに商売をする賽蔵たちに対抗して、亀戸にあらたに銭座が開かれることになった。
権力を盾にあらゆる手を使い、深川に食い込もうとする亀戸…。
真摯に得意先に向き合う賽蔵、そしてその気概に応える大店の主人や仲間たち。
商売とは、人と人のつながりとは、思いやりの心とは…
金・銀・銭の「三貨制」であった江戸期には、三貨の間の交換比率が日々変動した。
それゆえ、「両替商」という商売が極めて重要な金融ビジネスとして重きをなした。
そんな江戸期独特の金融制度の中で主人公の賽蔵がのし上がっていく。
知恵を尽くし、誠意を尽くし、ライバルの攻勢をしのぎ、事業を拡大する。
「困っているときはお互いさま。」
この言葉が心地よく響く。
江戸の商売人を書かせたら当代随一の山本一力
相変わらず深川の粋と心意気を鮮やかに書き切っています。