ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

源氏物語 <はじめに>

2008-08-15 | 源氏物語覚書

    『源氏物語 巻一』
     円地 文子 訳


源氏物語千年紀を機に、再び『源氏物語』(円地文子訳)を読み直しました。
学生時代に与謝野晶子訳で読んだとき、
あるいは独身時代にこの円地文子訳で読んだときは、
正直言って誰が誰だか、この文章の主語は誰?みたいな読み方で、
だいたいのあらすじを追うだけで精一杯。
(一応、現代語訳なんですけどね

とても、男女の心の機微だとか、訳語の美しさだとか、
そういうものを感じる余裕がありませんでした。

ところが、今この年になって読んでみると意外や意外、
するすると頭に入ってくるんですね。
ああ、ムダに年をとったわけではなかったなー、と
へんなところで自分自身に感心してしまいました(笑)

実は、せっかく読み直したのだから、覚書のつもりで
各巻ごとにレビューを書けないものだろうか、と
無謀だと思いつつ、この思いを捨てきれずにいました。
国文学を勉強したこともない、全く素人のおばさんが読んだ源氏。
読み間違いや、カン違いをしているかもしれないし・・・。

それでも書いてみようと思ったのは、
せっかく日本人に生まれていながら、
こんなおもしろい作品を「難しそうだから」と
敬遠してしまう人が多いのはもったいない、と思ったからです。
今から一千年前に、こんな長編小説を書いた女性がいる、
ということを日本人はもっと誇りに思っていいと思うんですよ。

学問的なことはわかりませんが、
根本的には今とたいして変わらない女性の感情や、
男性の身勝手さはひしひしと感じます(笑)
そう、人の心なんて、千年前も今もたいして変わってないのです。

変わってしまったのは、生活習慣や風習。
だから現代の私たちが読んで、???と感じることも多々あります。
そのあたりさえ押さえておけば、古典の時間に頭を悩ました
源氏物語が、もっと身近なものに感じられると思います。


といっても、「桐壷」から「夢浮橋」まで五十四帖もある『源氏物語』。
週一でアップしても、一年はかかることになるのですが・・・

ということで、これからぼちぼち更新していきますので、
興味のある方はどうぞおつきあい下さいませ。


 

     *  *  *




では、まず簡単に『源氏物語』についておさらいです。

作者はご存知のように紫式部。
これは、本名ではありません。
当時の女性は名前が記録されておらず、
便宜上(?)役職名や、誰それの女(むすめ)という名で呼ばれてるわけです。

紫式部の場合、「紫」は『源氏物語』の登場人物「紫の上」から、
「式部」は父藤原為時の官職「式部丞」に由来していると言われています。

紫式部は、親子ほど年の違う藤原宣考と結婚しますが、早くに死別し、
一条天皇の中宮彰子(藤原道長の娘)の女房として仕えました。
漢文などと読みこなし、かなりの才女であったことは間違いがないようです。

また、紫式部ひとりではなく、複数の人間が書いたのではないか、
と唱えている学者もいるそうです。
先日新たに写本が見つかったことがニュースになっていましたが、
現在、紫式部の直筆は残っていないのですね。
つまり、今読めるのは写本でしかないわけで、
それらが微妙に違っているようです。

どういった人が、どんなふうに写したのかわかりませんが、
ここはこうしたほうがいいだろう、なーんて勝手に手直ししながら
写すこともあったのでしょうか。

その原作ですが、源氏を原作で読むのはかなり大変。
はっきり言って、私なんかちんぷんかんぷんです。
で、頼りになるのが現代語訳。
有名なのは谷崎潤一郎訳、与謝野晶子訳、円地文子訳、
そして最近のブームの火付け役となった瀬戸内寂聴訳などがあります。
訳といってもれぞれに訳者の個性が出ていて、
いろいろ読んで違いを見つけるのもおもしろそうですね。

谷崎訳は原文に忠実で、これを読みこなすのも大変そう。
与謝野晶子訳は簡潔で読みやすく、
瀬戸内寂聴訳は読みやすくてしかも情感がこもっており、
円地文子訳はあえて大胆な解釈をしているとのことです。
※5月4日毎日新聞『源氏物語』特集より

今回、私は円地文子訳で読みましたが、訳語も美しく、
登場する女性の思いが現代の小説を読んでいるのと変わらないくらい、
しみじみと伝わってきました。
しかし、やはりこの文章の主語は誰だろう、と悩むこともあったし、
国文学を専攻している長女も、わかりにくいと言っていました。
(人生経験が少ないせいでしょう・笑)

他に、原作にそった現代語訳ではありませんが、
田辺聖子さん、橋本治さんなども独自の源氏物語を書かれています。
漫画では大和和紀さんの『あさきゆめみし』が有名ですね。
漫画でだいたいの登場人物とストーリーを把握してから、
現代語訳で読んでみる、というのもいいかもしれません。

これだけいろいろ選択肢があるので、
自分の好みにぴったりくる訳を見つけるといいですね。



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すくすく

2008-08-08 | 日々のこと。
この暑さのせいか、最近花たちの元気がありません。
(というか、暑さで私が手抜きしているせいかも・・・)

毎年実をつけるど根性ぶどうも、今年は虫にやられてほとんど実がつかず、
ブルーベリーは花も咲きませんでした。

昨年買ったハイビスカスは、ふたつほど花をつけたものの、
そのあとはさっぱり。葉ばかり、わさわさ

そんな中、元気にすくすく育ってくれているのが綿です。




これは、ネットでオリジナルのTシャツを販売されているブログ友達が、
Tシャツと一緒に送ってくださった種を蒔いて育ったものです。
綿は種を蒔く時期がむずかしいと聞いていたので、
芽が出るか心配だったのですが、こんなにすくすく育ってくれました。

植木鉢が小さくて少し窮屈そう。
芽が大きくなったとき、間引きをするのがかわいそうで、
そのままにしていたから花が小さいのもしれません。
この花が、無事、綿になってくれるでしょうか。どきどき。

以前、何もわからずに綿の種を蒔いたときは、
台風のせいだったか枝が折れてしまったり、
蒔く時期がわるくて芽が出なかったりしたのです。
今度こそ、綿になってくれるといいなあ。



こちらがオリジナルTシャツを作っておられるBOOTS&STICKSさんのTシャツ。





青いインクの色が気に入ってこれに決めました。
他にも素敵なのがたくさんありますよ~

主人には昨年購入したので、今年の夏のお出かけにはお揃いで・・・
と思っていたのに、今年はまだ海へも行かず、
ふたりで出かけるのは(この暑いのに)お仕事ばかり・・・

明日は京都から長女が帰ってきます。
次女もお盆は部活も休み。
(ということは、朝練もなし!でも、休み明けはまた合宿とか)
お盆は久しぶりに家族が揃って賑やかになるかな~


コメント (6)
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The Road

2008-08-05 | 読むこと。
この週末、またまた暑さがぶり返しました。
とにかくこの暑さから逃がれようと、手当たりしだい本を読んでいます。
そして、この暑さを一番忘れさせてくれた作品がこれ。




         『The Road』
       コーマック・マッカーシー


jesterさんのレビュー(*)を読んで興味を持ち、
図書館で検索したらあったので、さっそくリクエスト。

読み始めると・・・、実はなかなか読み続けることができませんでした。
近未来の(たぶん、そう遠くない)話ですが、
とても絵空事とは思えず、人類はいつかこうなってしまうのではないか、
そう思うと、読むのさえつらくなるような、そんな作品だったのです。



今、まさに日常的に感じている地球温暖化、異常気象。
世界を脅かす食料の高騰、土地の砂漠化、水不足。
いつか人類は争いを始めるでしょう。
食料や水、少しでも豊かな土地を求めて。
そして、その争いの果てにあるのは ─ 核戦争。

この作品は、(おそらく)核戦争で世界が破滅し、
すべてが灰に覆われ死の世界となった地球上で、
ひたすら南へと向かう父と息子の物語です。

荒涼とした色彩のない世界。
動物も植物も死に絶え、大地は凍てつき、街は廃墟と化し灰色の雪が舞う。
店も農家もすでに略奪され、食べ物などどこにも見当たらない。
生きながらえたわずかな人々は飢え、人の肉さえ喰らう。
そんなおぞましい世界で、善き者であろうとする少年と
命を懸けて彼を守り通そうとする父親。

彼らはどこへ向かっていくのか。
南へ行けばそこに少しでも希望があるのか。
読みながら、ふたりの結末を案じずにはいられませんでした。

絶望の中で生きるより、死を選んだ少年の母。
彼女のとってはもはや息子も希望となりえなかったのでしょうか。
いつかは自分や息子もレイプされ、殺され、
食べられてしまうかもしれないという恐怖。
日々そんな恐怖の中で、正気で生き続けるほうが難しいのかもしれません。

妻を失い、それでも少年とひたすら南へと向かう父親。
彼にとっては少年が希望であり、神であり、生きるすべてだったのでしょう。

絶望の世界に生まれながら純真無垢な心を持つ少年と、
何度も絶望しながら、「火を運ぶ者」として
息子に生きる希望を与えようとする父。
父親は(そして息子も)確実に訪れる死を予感しているだけに、
淡々と語られるふたりの会話は心を打ちます。

読点がなく、延々と続く文章は読みやすくはありません。
まるで、彼らの果てしない旅を暗示しているようです。
一方で、ふたりの会話は余分なものが削ぎ落とされ、
簡潔で核心をついていて胸に響きます。
(特に、少年の何気ないひとことが・・・)

案じていたラストは、衝撃的であり、感動的でした。
父から息子へと受け継がれる「火」。
人類は、その「火」─ひと筋の希望─があれば、
いつの日か再生できるのかもしれません。
けれど、失われた木々の緑は、青々とした海原は
再び地上に蘇ることがあるのでしょうか。

猛暑や局地的な大雨が襲うこの夏に、
人類の未来についていろんなことを考えさせられる作品でした。


作者コーマック・マッカーシーは、アカデミー賞の作品賞を受賞した映画
「ノーカントリー」の原作『血と暴力の国』の作者です。
この作品も映画化され、父親役をヴィゴ・モーテンセンが演じるとか。
こちらも楽しみですね~



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