万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

本当は社会主義的な温暖化対策

2007年12月10日 20時28分25秒 | 国際政治
まず次の交渉の場を=温暖化対策、数値目標に慎重-経産次官 (時事通信) - goo ニュース

 地球温暖化対策は、排出権取引市場の設立が注目を集め、いかにも市場メカニズムが働く先端的な政策領域との印象を強く与えています。しかしながら、その最初のステージを観察してみますと、実は、とても社会主義的な政策であることが分かるのです。
 
 それは何故かと言いますと、バリ島で開催されているCOP13において各国政府がなかなか合意に達しないことからも窺えますように、この政策の根底には、政治的な”分配問題”があるのです。言い換えますと、削減目標が一たび設定されますと、誰がどれだけ負担するのか、という問題が全てとなるのです(ちなみに、日本国政府は、国別割当方式に反対しています。)。そうして、排出権取引という手法は、この分配なくして成り立ちません。しかも、もし、削減量が国別に割り当てられるとしますと、その国の産業活動のキャパシティとリンケージしますので、政治的ネゴシエーションが自国の経済レベルまでも決定してしまうのです。

 温暖化対策の本質が、”分配”や”割り当て”にあることは、この政策が、政府の配分によって経済活動がコントロールされる社会主義的な手法に近いことを示しています。負担というパイの分配をめぐって各国が争いを繰り返すよりも、パイそのものを小さくする努力の方が大切なのではないか、と思うのです。

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