万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

似て非なる商品市場と証券市場

2007年12月07日 21時41分39秒 | 国際経済
 先日、経済産業省と農林水産省が協力して、資本提携により証券市場と商品先物市場とを融合させるという、「総合取引所構想」が公表されました。しかしながら、投機マネーの流入により石油価格や穀物価格が急騰したことを考えますと、この構想、果たして、世界経済にとりましてプラスとなるか怪しいところなのです。

 何故ならば、証券市場と商品市場は、似て非なるものだからです。証券市場は、企業の経済活動に必要な資本を調達したり、企業がM&Aなどの戦略を追求する場としての機能があり、投機の対象となる側面を持ちながらも、経済成長のメカニズムにひとまずは組み込まれています。一方、商品市場は、それ自体が経済活動に貢献するわけではないのです。値上がりによる利ざやの獲得を目的とした商品市場への資金流入は、すなわち、投機マネーの流入、あるいは、バブル化を意味し、商品価格の上昇のみを招く結果となります。つまり、商品市場に資金が流入しても経済発展には繋がらず、むしろ、資源価格などの上昇が経済にマイナス影響をもたらすかもしれないのです(「商品市場投機のブーメラン」http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=20c6a0a3fbfdb749cf4c482ac74537a6)。

 欧米の金融市場では、証券と商品の融合が進み、日本国も国際競争力を高めるために総合取引所の設立を急いでいるようですが、両者の分離を維持し、商品市場への投機マネーの流入を抑える方が、経済にとりましては良策かもしれないと思うのです。

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