万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ちぐはぐな日本政府の”防御”政策

2008年05月01日 18時13分01秒 | 日本経済
「要塞のような日本が復活」=外資に対し防御的傾向-米紙(時事通信) - goo ニュース

 政府は、イギリスの投資ファンドによるJパワー株の取得に対しては、安全保障を理由に”防御”政策を進める一方で、出入国管理については、日本語能力を基準に入国や滞在を優遇するという方針を打ち出しているようです。しかしながら、この二つの政策、明らかに”ちぐはぐ”=不整合であると思うのです。その理由は、一言で言いますと、”資本”の方が”人”よりも、安全保障上の危険性が低いからです。

 もし、安全保障上の理由で、エネルギー産業への外資導入を躊躇うならば、1.政府系ファンドではないこと、2.株式取得企業の国籍国との間に政治的な対立がないこと、並びに、3.自由主義国であること、4.相手国が同程度の開放を行っていること、5.有事に際しての日本国政府の緊急措置の受け入れること、といった条件を付けた上で、取得株式の%に上限を設けるか、否かを検討するほうが理に適っています。

 その一方で、外国人の入国や滞在については、長野の聖火リレーで明らかになったように、外国人が、本国政府からの指令で政治活動を行う可能性が高く、有事ともなれば、日本国の安全にとりまして極めて危険な状況となることが予測されます。また、経済活動に関しても、野村証券における不祥事や産業スパイの事例も見られ、必ずしも、自国経済にプラスになるとも限りません。日本語能力の基準は、日本国の安全を保障せず、この政策分野にこそ、より厳格な規制が必要なはずなのです。

 外資規制の本当の狙いが、終身雇用制の維持といった雇用問題であったとしても、外国人の入国を増やせば自国民の雇用も脅かされますので、これでも”ちぐはぐ”です。いったい、日本国政府は、どの国を”仮想敵国”と見なして政策を立案しているのでしょうか。資本市場と労働市場とで、こうしたダブル・スタンダードを見せるようでは、日本国政府は、国際社会を納得させることは到底できないと思うのです。

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