万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

英語教育モデル校は教育実験なのか?

2008年05月26日 18時16分25秒 | 日本政治
英語 小3から必修 教育再生懇 「抜本見直し」提言(産経新聞) - goo ニュース

 海外の情報を吸収し、また、日本国の情報を海外に発信するためにも、英語は有効な手段です。このため、英語教育には力を入れるべきなのでしょうが(もっとも、日本国には明治以来の翻訳文化があり、一般の人々が、自国語で外国の専門書まで読める稀有な国であった・・・)、英語教育の開始に最も適した時期は何時か、という問題については、誰もが納得する回答は未だ得られていないようです(もしかしたら、個人差がある可能性さえある・・・)。

 そこで、教育再生懇談会では、全国の5000校のモデル校を選んで、実験的に年35時間の英語授業を行ってみよう、ということになったのでしょう。しかしながら、このモデル校方式には、幾つかの考えるべき側面があるように思うのです。

 第一に、早期の英語教育に選ばれたモデル校には、他の公立の小学校とは異なる教育プログラムが組まれるわけですから、特別の教育が施されることになります。これは優遇と捉えることもできますので、他の学校への配慮を必要とするかもしれません。例えば、他の小学校に対しても、特色ある教育プログラムを許すとか(理数系強化校とか、教養強化校とか・・・)、あるいは、モデル校制度そのものをやめるとか、全ての子供たちにチャンスを与えるという文脈において、公教育としての公平性を保つ方法を考える必要がありましょう。

 第二に、第一の問題とは反対に、小学校3年生から英語教育を始めたことが、何らかのハンディになることも懸念されます。教師がネーティヴ・スピーカーではない場合には、不正確な発音が身につくかもしれませんし、母国語の学習過程にあって外国語を学ぶと、両言語の混乱が起きるとする指摘もあります。

 学習時間とは無限にあるわけでもなく、また、教育は、後からやり直しができるわけでもありません。ですから、学校を選んで、教育を実験的に行う場合には、国民が納得するように、最大限に議論を尽くすべきではないか、と思うのです。

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