万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の植民政策は異民族支配の手段

2011年01月19日 16時04分40秒 | アジア
「中国の人権改善を」胡主席訪米に合わせ、亡命者ら集会(朝日新聞) - goo ニュース
 中国の歴代王朝が、周辺部に領域を拡大するに際して用いた方法に、屯田制というものがあります。屯田制は、軍事力で制圧した地域に移住民を送り込んで、辺境の防衛に当たらせると共に、農地を与えて定住させるというものです。

 古代ローマ帝国にも同様の制度がありましたが、チベットや東トルキスタンに対する現代中国の支配手段は、まさにこの屯田制の現代版です。中国では、国内における国民の自由移動さえ認められておらず、チベットや東トルキスタンへの漢人の移住は、いわば、”国策”による半ば強制的なものです(異郷に移住を強いられる漢人にとっても苦痛であるかもしれない…)。この政策の結果、現在では、チベットや東トルキスタンでも、漢人の人口が増加しており、人口比の逆転は、独立を求める両地域の住民にとりましては死活的な問題となります。また、中国政府による同化政策は、チベットやウイグルの人々に、長い歳月をかけて培ってきた独自の文化や伝統の放棄を迫る行為に他なりません。

 中国の人権問題は、実のところ、個人の自由や権利の侵害問題に留まらず、国家独立に際して正当な根拠となり得る民族の枠組みに対する侵害問題でもあります。いわば、ジェノサイドが問われる問題でもあるのです。アメリカ政府には、訪米している胡主席に対して、チベットや東トルキスタンには、自らの運命を決定する権利があることを、説得していただきたいと思うのです。

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コメント (2)
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