万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米中ロ三つ巴の顛末は?-南シナ海は中国の鬼門

2017年06月07日 15時06分01秒 | 国際政治
中国が南シナ海の人工島に戦闘機部隊収容施設 米が警戒
 アメリカは、軍事的圧力をかけ続ける姿勢を崩さないものの、北朝鮮に対する慎重な態度が目立ってきております。その背景として推測されるのはロシアによる対北支援であり、この推測を裏付けるように、北朝鮮外務省の実務代表団がモスクワを訪問し、両国間の交流計画に関する文書を交換したとも報じられています。

 ロシア側の積極的な対北アプローチからしますと、北朝鮮による核・ミサイル実験を陰から支えていたのはロシアであり、ロシア製兵器の代理実験であったとする見方も強ち否定はできないようです。アメリカも、北朝鮮の背後にロシアの存在を感知したからこそ、対北強硬姿勢がトーンダウンしたのかもしれません。真の脅威は、北朝鮮ではなくロシアにあると…。

 一方、一連の出来事を通して注目すべき点は、北朝鮮に対する共闘の構図において米中協力が実現したことです。しかしながら、その結果として、中国と北朝鮮との間の距離は開き、同国をロシア側へと押しやることとなりました。見方を変えれば、対米協調路線の代償として中国は北朝鮮に対する影響力を失いましたので、戦略の巧みさにおいてロシアが優っていたとも言えます。

 それでは、対北朝鮮で見せた米中の結束は、米中蜜月と言えるほど強固となるのでしょうか。対北朝鮮では利害が一致したものの、経済分野を含めて他の分野では、中国は、ロシア以上にアメリカにとりまして脅威となる存在です。特に南シナ海問題においては、問題の本質が国際法秩序に関わるだけに、アメリカもこの問題については安易な妥協が許されないはずです。中国は、朝鮮半島での失地の回復を南シナ海に求めようとするかもしれませんが、南シナ海問題では、米中協力が成立する余地はないのです。

 以上の諸点を踏まえますと、北朝鮮問題では対ロにおいて米中が結束し、南シナ海問題では、米中が対立する構図となります。そして、アメリカに対して既に”旧東側陣営”として中ロは結束を示してきましたので、ここで仮にロシアが南シナ海問題で中国と対立し、アメリカ側に与しますと、米中ロによる三つ巴の状況に至ります(アメリカにおいて、マスメディアがトランプ政権をロシア問題でバッシングしている背景には、米ロ接近を怖れる親中勢力の思惑が潜んでいるかもしれない…)。国際社会における三つ巴状態の出現は、陣営の組合せが流動的であった第二次世界大戦前夜を彷彿とさせます。

 果たして、今日、この米中ロによる三つ巴状態は、如何なる顛末を迎えるのでしょうか。三国が相互に牽制し合い、お互いに身動きがとれない状況となる可能性もありましょう。しかしながら、中国が南シナ海において覇権主義を追求し続けるとすれば、東南アジア諸国のみならず、全世界を敵に回す結果を招きますので、三つ巴の均衡は崩れるかもしれません。南シナ海は、中国は自らの立場を不利な方向に傾ける鬼門なのです。そしてこの均衡の崩壊は、ロシアが積極的にアメリカを支持することによるよりも、主として外部の加勢、即ち、法の支配を尊ぶ諸国の結束に起因するのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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