万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

大阪市ヘイトスピーチ実名公表条例の意図とは?

2017年06月29日 15時22分22秒 | 日本政治
 2016年5月のヘイトスピーチ対策法成立から凡そ一年が経過しましたが、大阪市では、吉村洋文市長がヘイトスピーチと認定した投稿者の実名を公表する条例案を提出するようです。

 報道された記事を読みますと、条例制定の理由は、「違法なヘイトスピーチを不特定多数に知らしめる人の氏名を保護する必要はない」というものであり、言論の自由や通信の秘密の保護よりも、民族や人種差別反対を優先させるようです。言論弾圧という同法案成立時に懸念されていた方向に向かう気配も感じられますが、この条例に対する評価は慎重であるべきかもしれません。

 ヘイトスピーチ法案の成立背景には、在特会と在日韓国・朝鮮人団体との間の激しい抗争があり、いわば、両者の対立が法案成立の舞台装置の観さえありました。このため、当時より、在特会と”しばき隊”は裏では協力関係にあり、マッチポンプではないかとの疑いも提起されておりました。仮にこの推測が事実であれば、一般の日本人にとりましては、同法案の成立を後押しした在特会こそ、日本国の自由を売り渡す”裏切り者”ということになります。そもそも、在特会の過激な表現は、日本文化とは異質であり、どこか芝居じみてもいます。

 在特会の闘争手段は、明らかにヘイトスピーチ規制法案を誘発しています。何故ならば、在日韓国・朝鮮人が日本国内で特権を有し、優遇されていることに憤慨するならば、”日本人への差別反対”を叫べばよいからです。あるいは、”優遇措置の廃止”や”公務員に関する実態調査の要求”など、政策論としての提起も可能であったはずです。こうした手法の方が、刑法上の犯罪行為を連呼するよりも、遥かに一般の日本国民の賛同を得ることができるでしょうし、ヘイトスピーチ対策法制定の契機となることもなかったことでしょう。敢えて同法制定の”必要性”を作為的に作り出した点が、在特会に対する拭い去れない疑惑を生んでいるのです(法案通過後は、その活動も殆ど報じられていない…)。

 こうした在特会に対する疑いを踏まえて上記の条例を見てみますと、この条例には、全く正反対の2つの思惑が推測されてきます。その一つは、先述したように、対策法成立を根拠に、政治家が、条例の制定も以って一般の日本人の言論の自由を奪おうというものです。一般の日本人による在日韓国・朝鮮人に対する批判は一切許さないとする、恐るべき”日本人差別”がそこにはあります(大阪市民は反対しないのでしょうか?)。そして、もう一つの可能性があるとすれば、それは、在特会の正体の暴露です。本条例では、実名を公表するとしております。マッチ・ポンプ説の真偽は、在特会をはじめとする”日本側”のヘイトスピーチ団体の実名が条例によって公表され、日本人ではないことが明らかとなることによって判明する可能性があるのです。

 実のところ、実名が公表されれば、ヘイトスピーチをめぐる一連の騒動の真相は明らかとなることでしょう。何れにしても、これまでマスメディアや派手なパフォーマンスに流される一方であった一般の日本国民も、巧妙に仕組まれた政治の舞台装置を知るべき時が来ているのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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