万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”共謀罪”は運用を見てから評価しては?

2017年06月20日 17時15分30秒 | 日本政治
政権逆風、自民は組織固め躍起=民共、追及継続―都議選
 所謂”共謀罪”については、野党をはじめ左派勢力等が激しく反対し、全国的な反対キャンペーンを張ってておりました。ネット上の政治ブログ等でも、改正組織犯罪処罰法が成立すれば、”政府による国民監視体制が敷かれ、戦前の体制に回帰する”として、徒に危機感を煽る意見も散見されました。

 野党による反対の大合唱の中、与党主導で改正組織犯罪処罰法を成立させたわけですが、同法の成立が内閣支持率低下の要因の一つであるとする指摘もあります。委員会採決を省略するという異例の手続きを経て成立しましたので、強行な手法に対する批判は頷けます。しかしながら、同法に対する評価は、実際の運用面を見てから判断すべきではないかと思うのです。本法案が国会に提出された背景には、国際的なテロ活動の活発化があり、諸外国においても対テロ対策の観点から”共謀罪”が設けられている国も少なくありません。現実には、世界各地でテロが頻発しているように、テロを完全に封じ込めることができないまでも、”共謀罪”に基づく捜査当局の活動はネットワーク型のテロ・犯罪活動には有効であり、未然に防止した事例も存在しています。また、”共謀罪”が設けられている国において、同罪の設置により国民監視体制が強化された、とする報告もそれ程には見られないのです。

 野党側は、一般の国民の日常生活までもが監視され、政府による国民統制が強まるとして同法の成立に反対しましたが、実際に、こうした懸念される事態が発生するか、否かは、同法がどのように運用されるかにかかっています。組織に属していない一般の国民が監視され、罪無くして逮捕・収監される、あるいは、左翼団体や宗教法人等の組織が根拠なくして”弾圧”を受けるといった事態が起きてから、同法に基づく具体的な公権力の行使に対して批判を展開すればよいのではないでしょうか。今日では、行政訴訟の手続きも整備されておりますので、法の目的からの逸脱や権力の濫用があれば、司法の場に訴えることもできます。

 共謀罪には、テロや組織犯罪を防止するというメリットがある反面、国民監視体制の強化に繋がるリスクもあります。長短両面を持つのですから、今後、どちらの面が出現するのかは、現時点では国民の誰もが分かりません。実際に、テロや組織犯罪が減少すれば、国民の多くは法案成立を高く評価するでしょうし、反対に、野党の懸念通りの事態となれば、同法の改廃を求めることとなりましょう。このように考えますと、法案成立の時点での批判は、時期尚早なのではないかと思うのです。

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